民主党政権で不動産仲介大手に逆風が

ここにきて民主党政権誕生の実現性が高まったことで民主党マニフェストへの注目が高まっており、政権実現で影響を受ける業界の株価が変動している。

民主党が7月27日に発表した民主党政策集「INDEX2009」の41ページ、「安心取引で中古・リフォーム・賃貸市場を活性化」に記載された「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とします。」が不動産仲介業界で波紋を呼び、不動産仲介大手の東急リバブルや住友不動産販売の株価が急落した。東急リバブルや住友不動産販売のような全国展開の不動産仲介大手は、売主と直接媒介契約を結んだ売主直物件が比較的多い。自社のWEBサイトへの掲載とかチラシで直接、買主を見つけ、売主&買主からダブルで手数料をゲットできる「両手」の美味しいビジネスが可能なのである。民主党の政策集「INDEX2009」が実行されると、両手ビジネスモデルが崩壊し、手数料収入が激減するため、株式市場で嫌気され株価が急落したという訳である。

不動産仲介大手に限らず地元密着で営業展開をする業者は売主と直接媒介契約を結ぶ元付業者になる機会が多く、INDEXが実行されても売主からの手数料である「片手」は少なくとも確保できる。しかし、買主を探すことを主体として営業展開している買付業者は、買主とバイヤーズエージェント契約でもしなければ手数料収入機会を遮断されてしまうケースが増えることになる。

メルリンチ証券の見方(NSJ日本証券新聞記事)のように最悪シナリオは実現しないだろうという見通しもある。宅地建物取引業法改正をすると施行まで2年以上先となるし、中古住宅取引の活性化策も並行して具体化されるだろうから、影響は限定的となるという理由からだ。とはいえ、民主党のINDEXで両手禁止を明言された不動産仲介業界の不安はなかなか氷解しそうにない。

両手は双方代理、利益相反から問題があるという見解もある。さらに民主党は「生活者支援」をマニフェストに滲ませており、この件でも業者サイドより売買当事者である個人(=生活者)目線を重視して業界や企業寄りといわれる自民党との差別化をしたのだろうか。

しかしながら不動産仲介業界は零細から大手まで幅広く構成された業界だが、その多くは零細規模である。さらに1件当たりの手数料収入は大きいが成功報酬で「千三つ」といわれるほど成功確率が低いため、一時期のような高収益が達成できる業界ではない。加えて折からの不動産不況である。業界が猛反対するのは当然の成り行きで容易に予測できたはずだ。

当該INDEXにはホームインスペクター育成とか賃貸居住者に対する家賃補助や所得控除などの税制支援が含まれており、不透明で情報開示が不十分、なおかつ賃貸住宅居住者に対し支援が薄い不動産流通市場を巡る現状の諸課題を解決しようとする姿勢は見えるのだが…市場の中核となる担い手の不動産仲介業者を敵に回してどのような中古住宅市場構築を目指しているのだろうか。

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