米国の商業用不動産デフォルトで再び悪夢が
サブプライムローン問題、それに端を発したリーマンショックと世界同時不況の元凶となった米国住宅価格の動向に関心が向きがちだが、米国の商業用不動産の依然として続く価格下落は当面、改善しそうになく不気味だ。米政府もその辺は気にしているようでFRBは、ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)の担保対象拡大を行い、2009年1月1日より前に発行されたトリプルA格付けのレガシー商業用不動産ローン担保証券(CMBS)を7月から担保として受け入れるなど商業用不動産市場の支援策を打ち出している。
しかしながら市場回復の足取りは極めて重い。市場関係者の商業用不動産価格の見方もネガティブなものが多いようだ。
「米国の商業用不動産を買いに動くのはまだ早い」米国不動産投資会社、ブランバーグバーグ・キャピタルパートナーズのフイリップ・ブランバーグCEOは日経ヴェリタスとのインタビューで米不動産市場の底入れはなお遠いとの見方を示した。同CEOはさらに値下がり余地が残っているので買いに動くのは時期尚早、あと1年は様子を見たい。今後数年間で巨額の商業用不動産ローンが借り換え時期を迎えることに対する懸念を表示している。(日経ヴェリタス 2009年7月19日号)
ロイター記事でも、「ドイツ銀証券のアナリストは、米国の商業用不動産価格は2007年のピーク時から50%以上下落すると予想。ニューヨークでは借り手に提示される賃貸料は28%下落しているが、賃貸料の無料期間などの特典を加味した場合、下落率は約50%になると指摘。その上で米都市部の商業用不動産市場は2017年まで回復が見込めず」との見方を示した。
商業用不動産価格が軟調なのは不況でオフィスやショッピングセンターなどの需要が低調なこと、借り手の需要低迷と連動して空室率が高まり、需給バランスの崩れから賃料が低下するという負のスパイラルから抜け出せないからだ。
一方、株式市場では、このところ軟調だったNY株式市場で、ノンバンク大手CITグループが民間主導の支援で破綻を回避するとの観測が強まったことに加え、ゴールドマン・サックスの四半期決算も好決算で株価が続伸した。大手銀行のストレステストも無難に通過しており、ここまでの流れで見ると金融不安も鎮静化したかに見える。しかし景気回復の確証をマーケットが現状で持ててないのと同様に金融不安も全て火種が消えたわけではない。
もし価格ロットが大きい商業用不動産にデフォルトが起きると、金融機関への影響は甚大でいくつかの地方銀行の破綻も予想される。「雇用不安の深化と銀行破綻の再燃で米景気は2番底へ」という最悪のシナリオだけは避けたいものだ。
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