不動産不況が勝機!オフィス移転支援サービス
日銀が発表した日銀3月短観では大企業製造業の景況感を表す業況判断指数(DI)がマイナス58と、第一次オイルショック後の1975年5月のDIマイナス57を下回り、74年5月の統計開始以来、過去最悪となった。まさに国内の不況は日本海溝の最深部まで沈み、陽光が見える海面まで浮かび上がるのは一体何時のことかわからない状況となってしまった。
実体経済が悪くなると企業業績も悪くなり、オフィスビルを借りている企業にとっては賃料にシビアになってくるのは当然の成り行きだが、ここにきてオフィスビルの空室が増えるのに比例して賃料低下も目立ってきた。
オフィスビルに入居中の企業の立場になると、好況時に入居したものの、コスト削減から少しでも賃料が安いビルに移転したいという潜在需要が膨らんでいると思われる。しかし、移転するに当たっては、立ち退き・移転のための諸費用ならびに移転先が自社の社員の通勤費を増加させることにならないかなど慎重に検討しなければならない。これらの数値次第では、賃料面が安くて好条件のビルでもトータルでは割が合わないことになるからだ。
このような企業の移転ニーズに目をつけ、移転を支援するサービスが出てきた。テナント企業が移転する際の原状回復コストを削減するための支援サービスと移転候補地域での社員の通勤コストや顧客訪問の交通費の算出支援サービスがそれだ。
日経産業新聞の記事を参考に要約すると、不動産管理の企画ビルディング社はテナント向けに原状回復費用の削減助言サービスを展開。工事コストを削減するためコンストラクション・マネジメント(CM)手法を使い助言する。コンストラクション・マネジメントとはゼネコンなど建設業者を中間省略して、各専門業者に直接発注する手法で中間マージンを中抜きして工事コストを低減する仕組みである。欧米では一般的な発注形式だが、日本では現状であまり普及していない。しかし、合理的なコストダウンが可能になる手法であるため近年になって注目されてきている。
例えば壁紙や床材の工事面積など業者は材料に余裕を持たせるため、広めに見積もりがちだが、正確に計測してコストダウンする。また工事単価も取引事例から適正価格を割り出す。コンストラクション・マネジメントで専門業者に直接発注するとコストの透明性が高くなるので、このようなメリットが出やすいのだ。その結果、20~30%のコストダウンを目指す。サービス対象は300㎡以上のオフィスである。
またオフィス仲介のシービー・リチャードエリスは、オフィス移転を検討する顧客向けに交通費試算サービスを提供している。当社のソフトを使えば、社員や顧客企業の住所、郵便番号を入力すれば、交通費が算出されるので、これを基に移動時間やコスト面で最適エリアのビルを探すことができる。同社の仲介業務の強力なツールにもなるわけである。
不動産不況の底打ちは、一般的な実体経済の底打ちよりも遅れるのが通例だ。企業業績の回復に遅れてオフィスの稼働率や賃料の底打ちが始まるからだ。日本経済が日本海溝から海面に浮かびあがって、陽光が見え出してから、オフィス市況が動くのだが、海底に沈んだままのいま、工夫次第では深海漁もできるのである。
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