三井不動産・三菱地所の株は歴史的買い場か

株式投資のプロである証券アナリストの銘柄選択で有望とされた銘柄が、後から振り返れば「当たり銘柄でなかった」ということは少なくはない。しかし、結果も大事だが、その銘柄を選択したアナリストの分析根拠を参考にすることは、株式投資のスキルを高める上で有益で銘柄選びの参考にしている投資家も多い。筆者のような不動産価格をウォッチすることが仕事の身としては不動産・住宅セクター銘柄の今後の株価動向は、不動産価格の先読み能力を高める上で大変参考になるのである。

日経ヴェリタス(2009年3月22日号)は日経リサーチの協力で「第21回人気アナリスト調査」を実施。各アナリストによる高評価銘柄に共通するキーワードは

  • 不況抵抗力
  • 悲観論の修正
  • 新興国の需要

である。それぞれのキーワードごとに高評価銘柄がリストアップされているが、詳細は日経ヴェリタス(2009年3月22日号)を見ていただくとして、悲観論の修正として、銀行株と並んで不動産株がリストアップされている。

「住宅・不動産」部門で1位 沖野登史彦(UBS証券)、2位 大谷洋司(クレディ・スイス証券)が選ばれたが、両氏が今後有望と推奨する銘柄は、三井不動産、三菱地所などの大手不動産株だ。

沖野登史彦氏は、日経ヴェリタス誌で「世界的信用収縮が続いていることや、都心のオフィス市況も不透明感が高まっているなど懸念材料があるものの、三菱地所など大手不動産株に割安感がある。」と指摘する。

大谷洋司は、経済専門チャンネル日経CNBCで、不動産セクターの底入れは近く、大手不動産株は歴史的な買い場がきているとの認識を示した。大谷氏の分析のポイントはこうだ。不動産株が下落しているのは外国人投資家の売りが多いからで、米国は2000年以降、レバレッジが拡大しており、レバレッジ縮小に向けた政策や努力がFRBを中心に行われているが、日本においてはこの間でレバレッジの拡大が見られなかった。米国のデレバレッジ(借金返済などレバレッジ縮小)の動きで見ても、2000年当時の水準に戻すには300兆円も負の圧力がかかるが、日本の場合、このようなマイナス要因が比較的少ない。外国人投資家は意外に日本のこのような国内事情を評価していないと大谷氏は指摘する。さらに株式指標が割安水準であり、企業体質が強靭になっている点が注目だ。下表を見てもらうと、両社とも今期の賃貸利益は03年3月期の営業収益とほぼ同額で、言い換えると株価は03年レベルまで下落しているが賃貸収益だけで03年3月期の営業利益レベルをカバーできる。またPBRも2社ともに1を割れており、大谷氏のこれまでの経験から見てこのような水準まで両社のPBRが低下したことはなかったとしている。

営業利益2003/03 今期 PER PBR
(会社計画) 賃貸
三井不動産 1033 1700 1000 11.3 0.8
三菱地所 960 1410 1200 19.6 1.0

※単位億円

大谷氏の不動産セクターの今後の見通しだが、マンションの在庫整理が進んでおり、流動性もかなり回復してきているので底入れ間近であるとする。例えば、3月のパシフィックHDの破綻で不動産株やJREITが売られると思われたが、株価が逆に上がった。悪材料織込みで株価が下がらないのは相場の地合いが底堅くなっているからとの認識を示した。

金融危機収束の行方を見定められないこの時期、そして賃貸不動産のキャッシュフロー悪化などと今後も紆余曲折が予想される不動産株を買うというのはかなりの勇気がいるが、デレバレッジへの負の圧力が少ないので、資金調達力が高く、底入れから市況の局面転換時を狙い優良物件を買える大手不動産の株は、現状の株価水準から見ると中長期では狙い目なのかもしれない。

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