日米住宅市場に底打ちの兆し

ブルームバーグTVで大和証券チーフエコノミスト永井氏が「米住宅市場は足元では非常に厳しいが、09年の年央には反転の兆しも出てくるのでは」と語った。全米リアルター協会(NAR)が発表した1月の米中古住宅販売は、年率449万戸で前月比5.3%減少した。1997年以来11年半ぶりの水準に落ち込み、エコノミスト予測値479万戸を30万戸下回った。また12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年比-18.5%と前年比で過去最大の落ち込みになった。

このように米国内の最近の住宅市場指標は、何年ぶりのとか過去最大とかのコメントを付されることが多く、相変わらずの急勾配の右肩下がりで好転の兆しが全く見えないように思える。永井氏によると、米住宅市場は、足元では非常に厳しいが中長期的に見ると明るい展望も見えてきたとする。その理由は、住宅の値段が下がり、金利も下がっているので米国民が住宅を買いやすい環境が次第に醸成されているからだ。

例えば買いやすさの指標である「住宅購入余裕度指数」は昨年12月から好転している。また不動産屋等に物件を求めて買い手がどれぐらい足を運んでいるかを示す全米ホームビルダー協会(NAHB)の「住宅客足指数」のグラフは、直近でジグザグしているものの底打ちが見られるようになった。新築・中古住宅の販売も西部を中心に賃貸と比較した割安感から回復感が高まり、新築、中古とも直近で減少傾向が見られる。外国人投資家の動きも明るい兆しが見えてきた。日経ヴェリタスによると外国投資家不動産協会(AFIRE)の調べでは、世界の約200の機関投資家が今年、米不動産に投資を計画している資金の総額は昨年を73%上回る。競争が減って価格が割安になったと見ているからだ。

オバマ政権が打ち出した住宅対策は、住宅金融公社(ファニーメイ、フレディマック)や民間金融機関への資金供給を行う。米政府主導で借り手救済と貸し手支援を両輪で行うため、前政権の住宅対策が貸し手へのインセンティブがなく不発に終わったのに比べ、実効性が高いと評価されている。借り換えや返済条件の緩和、さらには差し押さえ防止に向けた破産法の改正で、住宅の投売り減少→住宅在庫減少→住宅市場の好転といった期待もできる。永井氏のいう09年年央での市場回復は現状の米住宅市場の落ち込みの深さからみてポジティブな見解だが、10年以降の米住宅市場回復を予測する見方が多いようだ。10年回復説は、S&Pケース・シラー住宅価格指数先物などが論拠になっているが、NYロイターで同指数の共同開発者カール・ケース氏は「住宅価格は2010年にかけて下落を継続すると見込まれる」と指摘している。

一方、日本の住宅市場であるが、08年は、未曾有のマンション市場の崩壊と相次ぐ中堅マンションデベロッパーの破綻などが相次ぎ、業界にとって悪夢のような1年となった。しかし、09年に入り、価格の値ごろ感と金利低下から市場好転の兆しを予見させるような明るい話題もでてきた。大手マンションデベ大京が東京・江東で販売している「亀戸レジデンス(700戸)」は2月に入って100戸契約した。モデルルームの毎週の来場者は200組、週末は客で満杯。同社の全国約60ヶ所のモデルルームへの来場者数は昨年10月から今年1月末までに前年同期比1.4倍と急増。1月に入り契約率100%の物件も出始めた(日経産業09.02.26)。」同紙によると大京の田代社長は「マンション用地取得を通常モードに戻せ」と正月明けに現場に指令したそうだ。そろそろ買い時の土地が出始めたと判断し、買いの目安は04年の水準に設定。さらに同紙は、野村不動産でも09年年明け以降、モデルルームへの来場者が急増し、特に1月は前年同月の1.3倍に達したと報じている。

話は変わるが、自動車の販売が世界規模で急激に落ち込むなか、ホンダが2月に店頭販売を開始したハイブリット車「インサイト」は予想の3倍の売れ行きを示し話題を集めている。ハイブリット車で180万円台と200万円を切る思い切った価格設定にしたことが販売戦場を快走している主因だが、東京圏のマンションも、現状価格より約30%安い04年水準の4,000万円付近に戻せば、かなりの需要を取り戻せると業界は判断しているようだ。

最近の土地価格や鋼材価格の下落が今後、新規に供給されるマンション価格を「新価格」=「買える価格」まで押し下げる追い風になれば、ユーザーの購入マインドの回復も期待できそうだ。

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