グーグルのストリートビューが不動産ビジネスを革新する

不動産は、机上のデータだけではその実像や価値を掴めない。必ず現地を見る。そして現地を包含するエリアである近隣地域を見なければならない。そのエリアの街並みや家並みの状態、自然環境の良否や居住している人の属性などは、人間の五感が現実に捉えた実像として脳内にインプットされ、調査主体の知識や経験により検証・価値評価されるのである。高価な不動産を現地をみずに販売パンフレットや物件広告だけで買うような無鉄砲な人はまずいないだろう。

不動産調査や評価の鉄則は、このように必ず現地やそのエリアを詳細に観察することなのだが、PC上で現地や周辺のエリアの状況を360度シームレスでリアルな写真としてみることが可能なサービスが誕生した。グーグルのインターネット地図サービス「ストリートビュー」がそれだ。

ストリートビューは、道路に立って歩く歩行者の視線で風景を360度表示できる機能である。Googleマップ上のポイントをクリックするとストリートビューに対応している道路が青色で表示される。風景写真の道路上に表示された矢印アイコンをクリックすると道路を進むことができる。回転・拡大表示にも対応し、道路を進むことを止めて興味のある建物を見ることも可能だ。

この技術が画期的なのは、歩行者の視線でウォークスルーしながら、ビルや店舗、住宅などが建ち並ぶ風景画像を見れることと、自分の意思で進みたい道路を選択できることである。この機能は、物件を下見し、その周辺の状況を見て歩くという不動産業者や不動産鑑定士が日常的に行う体験をネット上で可能にしてくれる。とはいえ「ストリートビュー」が、物件実査や周囲の状況観察の全てを網羅できるわけでは勿論ない。現地に足を運び、実際に観察することで得られる情報は、先に書いたように人間の五感すべてを駆使することで取得可能だからだ。例えば騒音、臭気は、聴覚、嗅覚が必要で風景画像を見る視覚だけではカバーできない。勾配のある坂道を歩く「しんどさ」は、実際にその場所を歩くという体験をしないと解らない。ストリートビューから得られる疑似体験は、現時点では、あくまでも事前の下見といった位置づけだが、現地などに足を運び調査した後、見落としていた現地や周囲の状況などを後から確認するといった使いみちは考えられる。例えば、上空に高圧送電線が走ってなかったかとか…。

不動産の買主の視点に立つと、これまでのネット上の物件広告からは、考えられないほどの情報量が、ストリートビューを導入した不動産業者のサイトから提供される。例えば、ストリートビューを使って周辺の環境をチェックしたり、当該物件から最寄駅までの風景を見たいという顧客の要望が叶えられる。このような広告効果に目をつけた不動産業者による「ストリートビュー」を使った不動産物件紹介サイトが増えている。不動産会社サイドからも「ストリートビューを見て来店するお客さんの成約率は格段に高い」という評価が多い。賃貸物件を扱う「オレンジルーム」やカカクコムが運営する新築マンション検索サイト「マンションDB」などがいち早くストリートビューに対応しているが、今後は、顧客の要望が後押しする形で不動産各社のサイトへの導入が急速に進むと予測される。

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