いまどき行列ができる分譲住宅団地
ここにきてマンション、戸建分譲の販売は不振を極めているが、購入者の行列ができる住宅団地が東京都東村山市と福岡県新宮町で出現した。東村山市の「むさしのiタウン四季の街」と新宮町の「ウェリスパーク新宮杜の宮」がそれだ。どちらも周辺住宅価格より下げた価格設定と付加価値を高めた街づくりで高人気を呼んだ。
まず東村山市の「むさしのiタウン四季の街」であるが、立地は西武新宿線の東村山駅から徒歩10分弱。約1,900戸の低層都営住宅がもともとあったが老朽化したため中高層へ建て替えをするのと並行して都有地に「日本の住まいを安くする」をモットーとした低価格住宅を供給する実験的試みをスタートさせた。
2005年に特別目的会社の東京工務店が事業者となり、東京都から70年間の定期借地で利用権取得。280戸の戸建住宅を建築する予定だ。このち100戸は4つの企業グループが部材の共通化、木材流通合理化、インターネットを使った施行管理の合理化などを行い、互いに競って低価格住宅を供給する。この結果、「建物本体工事費を東京都の戸建平均単価である3.3平方メートル当たり75万円前後から3割引き下げることが目標。実際、敷地165平米、延べ面積約130平米の広さを確保した上で3.3平米当たり価格は約50万円以下に抑えた(日経産業08.5.30)。」定期借地であるため、周辺の戸建住宅の相場が6,000万円を越えるなか、初期費用だけ比べるとその半分程度の物件もあるため、高人気を呼び、これまで5回の発売で、抽選平均倍率は約7倍になった。次世代まで快適に暮らせる「ふるさと」を住民のふれあいで作り上げていくというコンセプトのもと、街づくりでも道路に接面した部分は植栽された生垣にするとか、道路を湾曲させて外部からの車の進入を防ぐといった工夫がなされている。旧態依然とした住宅建設に市場競争原理を導入して価格引き下げを実現する試みはまずは成功したと評価できよう。
次は福岡県新宮町の21万㎡495区画からなる大型住宅団地「ウェリスパーク新宮杜の宮」を紹介する。昨年の10月に街びらきをし、1期販売をしたが、人気物件には約5倍の申し込み倍率がついた。「杜の宮」の高人気の理由は、周りの恵まれた自然環境と付加価値の高い街づくりだ。国定公園に指定された新宮海岸に近く、団地内にもNTT時代の松などがそのまま残されている。団地内の緑化率を高め、高木や下草を植栽したデザイン性の高い団地内道路と植栽を生かした各画地の統一外構の微妙なバランスは、これまでの画一的で無個性な住宅団地から一線を画す。テニスコート、グラウンドに洒落たクラブハウスまである。団地内の主な出入り口や公園に10台の監視カメラを配置してタウンセキュリティ機能を高め、NTT西日本のフレッツ光プレミアムも実現した。西鉄新宮駅に近いが、平成22年にはJR新駅も開業する。新駅を中心に新宮町の中心市街地形成の区画整理事業が進んでおり、駅周辺は大型商業施設をはじめ共同住宅ゾーンなどが配置される予定だ。
杜の宮を含む福岡東部JR沿線は、大型住宅団地が販売中も含め目白押しで戸建住宅販売の激戦地になっている。隣接の古賀市では830区画の「美明団地」、福津市では300区画の「あけぼの団地」と福間駅東土地区画整理事業で3,120区画の住宅地が出現する。すでに販売がスタートしている分のこれらの住宅団地と比較しても住環境と販売価格で「杜の宮」の人気は高い。
以上、いま高人気の戸建住宅団地を紹介したが、冬の時代といわれる戸建住宅の販売環境にあっても価格と住環境の魅力というシンプルな購入者の原理は生きているようだ。
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