次世代型実験集合住宅~NEXT21~
NEXT21は、大阪ガスの社宅で、同社の社員や家族が居住しながら、近未来型実験集合住宅としてデータを収集しているスケルトン・インフィル(SI)住宅だ。その詳細は、「日経アーキテクチュア」並びに「建築設計資料 SI住宅」に紹介されている。
NEXT21は、大量生産、消費、廃棄といった従来型のスクラップ&ビルドから住宅の長寿命化をコンセプトとして誕生した。地上6階地下1階、建築面積896㎡、延床面積4,577㎡のSI仕様の建築には5年ごとに違う同社の社員16家族が16通りのライフスタイルを割り当てられて居住している。その仕様を書くと、「ラーメン構造でスラブ厚は240mm、階高は1・2階が4.2m、3階以上が3.6m。全体を7.2m角の住戸スペースと、その外周に附属する3.6m幅、あるいは1.8m幅の共用廊下ゾーンに分けて、フレームを構成している。ここで注目したいのは、共用廊下の床スラブを住宅部分より下げている点だ。この段差を各住戸へ供給する配管や配線のスペースとして利用し、それらが2本のたてシャフトに集約される。住戸内にたて配管を通さないので、共用スペース側から設備を維持管理できるのだ。」(日経アーキテクチュア)
NEXT21の実験は、省エネや環境保全面から建物緑化して鳥類飛来や植物生育を招来して気温低下を実現したり、燃料電池を設置するなど多岐にわたるのだが、SI住宅という視点から見ると最近のSIマンションに見るスケルトンとインフィルの分離や2重床、2重天井スペースを活用した配管と竪排水管の専用部分分離などの基本的な設計思想がNEXT21に忠実に実現されている。通常のSIマンションより進化しているのは、インフィルだけでなく柱と梁に囲まれた外壁などスケルトンとインフィルの中間部のクラディング部分まで可変化している点だ。住戸の外壁などを規格・部品化することで、その移設・取替えを容易に行うことができ、「街路に面するファサードとインナーガーデンに面するコミュニティの内向きの外壁は特に自由度を高く設定している。」(建築設計資料 SI住宅)
住戸の水周りの大幅な位置変更も可能なのだが、この点もSIマンションでは、水周り下の階の住戸の寝室などのミスマッチが起きたとき騒音苦情がでるので、事実上は住戸内の水周り可能なゾーンを限定しているケースが多いのだが…NEXT21では床の遮音性を高めて解決しているのだろう。
SIマンションのコンセプトは、次世代住宅のあり方として支持されるべきものだが、いままでその普及がイマイチ進展しなかったのは、高仕様なためコスト高になるのを購入者がSIのメリットの理解が不十分で費用対効果の評価が低かったなどが主な原因だった。しかし将来の設備メンテナンス・更新など長期スパンで見たライフサイクルコストの低減やライフスタイルに合わせた可変性などの住宅としての革新性は、循環型社会に相応しい多くのメリットを有しており、その理解が進んでいくのはそう遠い日ではないだろう。
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