日本不動産への投資意欲が依然強い独ファンド

日経BP社が発行する「日経不動産マーケット情報」が2007年12月、2008年3月に把握した情報によるとドイツ系ファンドの投資が、サブプライム以後、冷え込んだ外資勢のなかで強い投資意欲を持続し、日本国内の優良不動産を買っているようだ(日経産業08.05.02)。サブプライムローン問題で外資が日本国内の投資を手仕舞い、資金を引き揚げているといわれているこの時期にである。

同紙による独ファンドの購入事例を紹介すると、独SEBグループの不動産ファンド運用会社は、07年12月、多摩市にある複合ビルを約200億円で取得した。SEBは取得した物件をミューチュアルファンド(投資信託)のSEBイモインベストに組み入れた。ドイツ銀行グループのファンドが昨年、港区六本木にあったディスコ・ベルファーレの跡地1,200㎡を取得していることがわかった。同グループはデベロッパーのモリモトなどと共同で、物販・飲食を含む店舗ビルを09年完成予定。独ユニオンインベストメントは、東京都内にある潮見コヤマビルを200億円強で取得、ファンドに組み入れた。独デカ・イモビリエンも大阪心斎橋にあるアーバンBLD心斎橋を190億円で取得した。

といった具合に活発に買っている。なかでも筆者が少なからず驚いたのは、筆者の地元である福岡の博多区東光寺にある商業施設「コマーシャルモール博多」を07年7月にドイツコメルツ銀行の不動産投資会社コメルツ・リアルが約91億円で購入していた事だ。「コマーシャルモール博多」は、JR博多駅から徒歩で約30分、車で5分、筑紫通り沿いに位置し、都心と郊外の中間的なロケーションにある。工場跡地がS造3Fの商業施設に生まれ変わり、ユニクロをはじめアミューズメント施設、レンタルビデオ店などがテナントとして入り、地元福岡ではかなりの注目を集めている商業施設だ。

サブプライムローン問題で一挙に冷え込んだ不動産投資環境であるが、その主な要因は、外資系金融機関などデッドの貸し手が資金供給を抑制し、投資家サイドもリスクに敏感になったのでキャップレートのリスクプレミアムが上昇するなど、投資向け不動産価格を抑制するマグマが不動産市場に充満したからである。不動産価格が仮に下がり相場になってもいずれ調整が終われば上昇相場がくる、日本の不動産は、長期金利とのスプレッドや世界的スケールで比較した場合の市場規模から見て「買い」に値すると独ファンドが注目しているのだろうが、「ドイツのファンドは全額自己資金か、融資を受けるにしても低い融資割合のことが多い(日経産業08.05.02)。」といったデッドの手当てが難しいこの時期に潤沢な資金力が買い意欲を支え、その優位性をポジティブに捉えている側面もあるようだ。

反面、昨年まで積極的に日本国内不動産に投資していたオーストラリアのREITは、本国の株価の低迷や円高影響で日本への投資が減少しているように、プレイヤーの顔ぶれも今年に入り変化している。

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