塩漬けリゾート地の再生 積水ハウス「リフレ岬望海坂」の実験

「リフレ岬望海坂」。海の水平線と潮の香がイメージされるようなネーミングの分譲住宅地は、大阪府南端の岬町にある。今日では希少価値となった自然海岸が残る長松海岸から明石海峡大橋、淡路島が望め、「日本の夕陽百選」に選ばれる夕陽が美しい地である。

岬町自体は、大阪府の基準地価で住宅地の下落率上位10地点の5地点を占める寂れた港町で、大型宅地分譲など無縁な町だ。積水ハウスは一度は減損処理した土地を様々な付加価値を加えて再生した。その壮大で実験的試みは、街の再生という今日的なテーマに多くの示唆を与えるものとなっている。

かつてのバブル期は、リゾート地のような風光明媚な地に大都市近郊であれば、景観や自然環境を売りに宅地分譲が行われたり、遠方の辺鄙な土地にも別荘地分譲が数多く事業展開された。それらの殆どは、バブル崩壊後、ゴーストタウンのように荒れ果てて、市場価値が大きく毀損した残骸を晒している。その間に時代は大きく変わり、少子高齢化や人口減少のカウントダウンが始まっていた。住宅の都心回帰が加速し、郊外をはじめ、過疎の市町村は、取り残されていくことになった。

まさにこのような時代の流れのなかで、1994年の関西国際空港開港で、航路が相次ぎ廃止され、寂れてしまった人口2万人の港町に2千人近い人口を擁す大規模ニュータウンを誕生させる試みが進んでいる。そのロケーションや事業採算から無謀とも見える「リフレ岬望海坂」だが、2002年の販売開始以降、330区画を順調に販売している。

かつてのバブル期と同じコンセプトでの街づくりであれば、今日のライフスタイルや価値観と離反し失敗していたと思われる。積水ハウスは、恵まれたリゾート資源にタウンセキュリティとe-TOWN構想という付加価値を新たに付与した。

南欧風にパステルカラーの家並みを演出し、庭や外壁の意匠を微妙に変化させ、画一的な住宅団地のイメージを超えた個性的な街並みを実現した(日経産業紙の「人口的な印象」という指摘もあるが…)。さらに24時間体制の常駐警備員を配置し、タウン内を巡回。ホームセキュリティから通報が入れば速やかに出動、必要な連絡は自動化されている。NTT西日本システム導入で監視カメラ映像が各家庭のPC画面で見ることができる。街路にネットワークした最大100Mbpsの高速・大容量インターネットが可能な「光プレミアム」を各家庭に引き込みが可能となっており、今後は、タウンセキュリティと連動したe-TOWN構想を進めていく構想だ。

リゾート資源という自然回帰を充たしながら安全と先端の通信環境をアピールすることで、中心市街地からの接近性や利便性のハンディを補完し、今日的な街づくりにまずは弾みをつけたといえよう。

余談だが、「リフレ岬望海坂」を一望に収めたWebサイトの遠景写真はなかなか良い。天空の雲の切れ目から1条の神光のように陽光が射し込む海と岬の丘陵の風景は、なにやら啓示めいていてユーザの心を捉えるのではないだろうか。

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