サブリース契約の賃料減額請求(最高裁判決)
サブリース契約とは、不動産会社が家賃保証や将来の値上げをオーナーに約束して、不動産会社のために収益物件を建築させ、不動産会社が賃借する。不動産会社は、これをビルのテナントに転貸することを前提とした契約となっている。
不動産会社が支払う賃料は、オーナーが負担する建築費や金利を基礎として算出されており、一方不動産会社は転借人であるビルテナントから受け取る賃料でサヤを抜き、ビル建築やプロパティマネジメント、アセットマネジメントなどを総合して企画し、フィービジネスなどのビジネスチャンスを拡大できるメリットがある。
不動産価格が右肩上がりで、賃料も上昇していた時代は、問題が発生しなかったが、バブルが崩壊し、地価や賃料の下落が続く時代になるとギクシャクした深刻な状況が関係者に生まれる。店子は周辺の賃料が下落してくると当然であるが賃料減額の要求を不動産会社に要求してくる。賃料は下がらなくても空室が増えビルの稼働率が下がると不動産会社の収益は低下する。その結果、不動産会社は逆ザヤとなり、オーナーに賃料減額を求めるということになる。しかし、オーナーにしてみれば不動産会社の資金力・リスク負担能力や営業力を信じて多額の建築資金を投下している。賃料減額を要求されると「何をいまさら…」というのがオーナー正直な感情であり、銀行借入金や敷金の返済など死活問題にもなりかねないという具合に当事者間に負の連鎖が始まるわけである。
サブリースをめぐる最高裁の判決が平成15年10月21日と同月23日に相次いで下された。10月21日判決は「サブリース契約は、不動産賃貸借契約ではなく、事業委託契約であるから、借地借家法32条1項による、賃料減額請求を否定する。」という見解を斥け、 サブリース契約は賃貸借契約に該当すると認定し、借地借家法32条に基づく賃料減額請求権を認めた。しかしサブリースの場合、本件は、大手である不動産業者が一括で借り、賃料保証や自動増額特約がなされていることが、オーナーの当該事業に多額の資金を投下する強い動機となっていると述べ、減額請求にあたっては契約の経緯・内容、近傍同種の建物の賃料など諸事情を考慮すべきとして、減額幅をシビアに判断することを示唆し、具体的な賃料の算定は東京高裁に差し戻した。10月23日判決も同様の判断を下し、大手不動産会社の賃料減額請求権を認め、審理を東京高裁に差し戻した。
これらの判決で明確になったことは
- サブリース契約は、不動産賃貸借契約ではなく、事業委託契約である。借地借家法32条1項による、賃料減額請求ができないという見解があったが、不動産賃貸借契約に該当し、賃料減額請求ができるとした。
- 賃料減額請求はできるが、大手不動産が賃借人になるサブリース契約は、借地借家法の弱者保護には当たらず、オーナーは相手が大手不動産会社であり賃料保証や自動増額があればこそ多額の事業費を投下しており、大手不動産会社は転貸賃料での差益を期待していたのであるから相応のリスク負担をすべきだという世間一般の感情に近い判断で賃料減額の幅をシビア判断すべきと示唆した。
の諸点であるが、この判決を踏まえ不動産鑑定士が継続賃料を鑑定する場合に、継続賃料の決定について経済価値的側面だけでなく、当事者間の契約内容、経緯といった司法ジャンルにどこまで踏み込んでどのように考えるか、賃料保証や自動増額特約などの絡みなどいくつかの重要な問題を提起した。次回は継続賃料をめぐる鑑定評価の今日的な諸問題を取り上げる。
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