民主党政権誕生で有望視される銘柄群

12日の都議選の結果、政権交代実現、民主党政権の誕生という可能性がより高まった感がある。民主党政権になったら国民の暮らしは具体的にどう変わるのか、このような疑問を持ったら政党のマニフェストを読むのが1番だが、一般に文体が固く、無味乾燥で読むのを敬遠してしまいがちだ。そこで「民主党政権誕生でどのような銘柄の株が有望になるのか」という観点から民主党のマニフェストを研究してみよう。無味乾燥な箇条文から暮らしの具体的なイメージが膨らみ、ストーリーが描け、上手くいけば調整色の強まるここにきての株式市場環境にあって値幅取りのチャンスが期待できるかも知れないからだ。

今回の都議選前から名古屋市長選、静岡県知事選など地方選挙での勝利や各社の世論調査の結果の推移で民主党政権の実現性が高まるにつれマーケットではすでに銘柄物色が始まっていた。本日、麻生総理もいよいよ決断して7月21日解散、8月30日投開票で総選挙の日程が一応は決まったので、マーケットでは選挙の材料株として本格的な物色が始まると思われる。

民主党は、政権公約(マニフェスト)の柱を3つの約束・7つの提言から構成する。このうち注目したいのが1人月額2万6,000円の「子ども手当」と農業の「戸別所得補償制度」だ。子供手当は、子ども1人当たり月額2万6,000円の「子ども手当」を創設し、中学校卒業まで支給するというものだ。子供2人の家庭では年間約62万4,000円支給されることになる。

ある外資系証券のストラテジストによると年収が600万円で可処分所得が1割増える計算で、子供に関するビジネスを手がける企業への恩恵が大きい。さらに小売・外食といったセクターにも狙い目が出てくるという。(ロイター)

助成が子持ち家庭の余裕を生み、やがて消費に回る。藤井秀敏氏(ダイアモンドZAI記事)ではベビー用品、子供服、学習塾などが直接の恩恵を受け、育児用品のピジョン、子供服・ベビー用品の西松屋、子供写真館のスタジオアリスをはじめ、「進研ゼミ」を展開する通信教育最大手通信のベネッセコーポレーションなどが物色される。

農業の「戸別所得補償制度」は、農林水産業を未来に向けた新産業と位置づけ、食料自給率向上や食料の安全保障上重要な穀物について、生産価格と市場価格の差額を基本とする交付金を交付するという制度である。食料自給率向上という観点から農業に注目が集まり、生産性向上に必要となる農機具や農薬の需要が高まると期待されている。その結果、農業機械セクターで代表的なクボタ、井関農機や農薬セクターの日本農薬、住友化学、クミアイ化学工業が有望視されるだろう。

さらに同党が掲げる政策に高速道路の無料化があるが、運送コストの低減で注目が集まるのは、メリルリンチ証券レポート(MSJ日本証券新聞記事)ではトラック業界など陸運業関連銘柄を挙げる。日本通運、ヤマトホールディングスなどがそれだ。

税制面から民主党政権誕生で恩恵を受ける銘柄を探るには、同党が掲げる「グッド減税・バッド課税」が注目だ。日経ヴェリタス(2009年6月28日号)によると、

「グッド減税・バッド課税」とは、財・サービスが環境や健康などに影響を与えるとき、それが好影響なら税負担を軽くし、悪影響なら重くするという考え方である。この観点からいくとタバコのJT株などは逆風が吹く。酒税については、「アルコール度数に応じた」税率にすることが望ましいとしているのでビールの税率は下がる可能性がある。ビールは大瓶1本345円のうち、45%が税金でアルコール分1度1リットル当りの酒税はビール44円に対し、ワインは7円になっておりビールの酒税は突出して高くなっているので、減税されるとビール業界への恩恵は大きい。

政党のマニフェストはその実現を可能にする財源の裏付けが求められる。実現できなければ「絵にかいた餅」に終わるからだ。マーケットがある段階でそれを見破るとテーマ株の値幅取り期待も取らぬ狸の…で終わる。選挙期間中に政党間のマニフェストを巡る質の高い論戦がメディアで展開するとこの辺を検証できるので期待したい。

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