米リートが回復基調、高利回りに魅力が増す!

日経ヴェリタス(2009年7月5日号)によると海外REIT投信の人気が高まり資金が流入している。不動産価格が下落したので、分配金利回りが上昇し、魅力的な水準になったからだ。6月の分配金を年換算し規準価格で割った利回りが15~20%に上るファンドが続出している。

各海外リート投信の状況をトムソン・ロイターの記事から紹介すると、

REITファンドの中で5月の純流入額が最大だったのは、日興アセットマネジメントの「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」で約217億円。相場上昇による恩恵もあり、同ファンドの純資産残高は1,000億円を超えた。2位も前月同様にDIAMアセットマネジメントの「DIAMワールド・リート・インカム・オープン(毎月決算コース)」で約92億円の流入超。3位は国際投信投資顧問の「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」で約40億円の流入超だった。他の残高上位ファンドも軒並み資金フローは流入超となった。(トムソン・ロイター06.08)

海外REIT投信に資金流入が急増し始めたのは4月頃からで後述するが米リート株価が反騰を開始した時期と重なる。

海外REIT投信は米、豪、欧州などREIT50~150銘柄に国際分散投資しているが、米リートに注目してみると米国リート市場は、5月、6月とレンジ相場になっているが3月の安値を底に4月に急上昇し回復基調にある。USREITでは財務体質強化のため増資による資本調達が続いており、業界全体で157億ドル強の資本調達を実現した。資本調達により債務返済が進み、市場の信頼回復に寄与している。セクター別総収益率では下落率が大きかったホテルREITが回復し最も高く、地方ショッピングモールREIT、オフィスリートが続く。注目されているセクターは住宅市場の悪化と借り入れが困難になっているため代替需要が高まっている賃貸住宅や賃貸借契約期間が長く景気変動の影響を比較的受けないヘルスケアなどである。

日本国内のJREITも市場支援策として昨年来、さまざまな政策が打ち出されたが、米リート市場においても2009年末までの期間限定であるが、分配金を一部株式で配当することが認められ、リファイナンスリスク対策が取られた。また資産価格の急落で商業ローン市場が機能不全に陥いり借り手の不動産管理会社の資金繰りが悪化したことから不動産市場でFRBが証券化商品の流動性を回復する目的でスタートしたTALF(ターム物資産担保証券貸出制度)において、2009年以前に発行された既発のCMBSを担保適格に加えると発表したため商業用不動産向けローンの機能回復が期待されている。現に不動産に関連した債券の信用スプレッドが縮小化して市場に好感された。

以上、市場に明るさが増してきている米リート市場であるが、不動産市場が力強く回復したわけでなく基準価格の下落から高利回りが実現し、投資家に魅力が増したためで、オフィスビル、商業用不動産の空室は依然として上昇しており、収益環境に不透明感が残るのは日本と同根の課題となっている。

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