郊外ロードサイドビジネスに異変が
原油高騰によるガソリン価格の青天井の高騰が、来店を車に依存してきたロードサイドビジネスを直撃している。特にロードサイドを主体に展開してきた外食チェーンやSCなどの売り上げが昨年来のガソリン価格の高騰が始まって減少した。給料は上がらないのに、食料品やガソリン代が上がるのをTVやスーパーの折込チラシで毎日のように見せられれば、体温計が平熱を超えて日々上昇していく有り様をウォッチしているようで、健全な家計が病魔に侵される不安が増幅され、生活防衛モードに走ってしまおうというものだ。
庶民は、まず日常生活で不要不急のものを切り詰める。そのせいか百貨店の衣料品や高級ブランドの売り上げが落ち込んでいるという。次はガソリン代の高騰で車での外出を控え支出を抑制する。食料品価格が上がっても食事の回数を減らすことは難しいが、車を使う頻度を減らすことはなんとか可能だ。おかげで朝夕の交通渋滞が各地でかなり改善。結果、電車やバスなど公共交通機関の利用が増えた。
悩ましいのは車での来客が主体のロードサイドビジネスだ。リンガーハットやロイヤルホストのような外食産業をはじめ、「しまむら」など郊外衣料品店舗では郊外ロードサイドに立地するものほどガソリン高の逆風を受けている。今後のガソリン価格高の行方によっては店舗戦略を転換して都心部の駅前や駅中などへ進出せざるを得ない。
郊外ロードサイドビジネスは、実はガソリン高騰前からこれまでの成長から成熟期を経て縮小フェーズへ入っていたという指摘がなされていた。2000年以降、規制緩和、大店立地法で郊外SCが全国各地で続々と登場し、出店競争がオーバーヒート。これらの商圏の間隙を縫うようにドラッグストアや食品スーパーも大量出店。外食系もファミレス、ファーストフードなどロードサイドの陣取り合戦を展開した。この結果、ロードサイドでは、オーバーストアとなり、店舗間の競合激化で収益構造が悪化した。さらに少子高齢化によるマーケット規模縮小のカウントダウンや郊外拡散からコンパクトシティへ都市政策の大転換がその成長神話に影を落している。
サブプライム問題、ガソリン高で個人消費不振が顕著な米国に目を転じると、日経紙8月10日記事で、米国のショッピングセンターの空室率は、2005年を底にして上昇に転じ、賃料水準も低下している。コーヒーチェーン最大手スターバックスが600店の閉鎖を決めるなどテナントの中核だった外食や小売などの大型チェーンがガソリン高などで経営が低迷していることに起因している。SCや外食産業のビジネスモデルの輸入元の米国でもガソリン高などに起因する消費不振で日本以上に苦悩が深いことが解る。
ロードサイドビジネスを直撃するガソリン高の行方だが、7月11日1バレル147ドルの最高値をつけて以来、ここにきて原油価格が3ヶ月ぶりに安値をつけるなど一服感が出ている。米国での商品先物市場への監視強化や株式市場の空売り規制が一応功を奏したようだが、新興国の需要が原油価格を下支えしており、産油国が資源ナショナリズムから油田を国営化するなど供給弾力性が小さいいうえに、投機筋はヘッジファンドだけでなく年金資金のリスクヘッジ目的のインデックス買いも入っているなど市場が複層化しているので、原油価格が今後、大きく値下がりする可能性は低いと見られている。ガソリン高基調は当面は続くと考えるべきだろう。
近年、日本国内で投資ファンドによるSC開発が盛んに行われているが、東洋経済のレポートによると「これらのSCの多くはテナントが埋まらず、虫食いのままの営業を余儀なくされている。」らしい。SCのテナントは、どこでも似たような店舗になってしまい、金太郎飴的で没個性、差別化ができにくく、SC間の熾烈な客の奪い合いで売り上げが思うように伸びずにテナント店舗の出店意欲が低下しているからだ。なかには堅調な経営を続けているSCも勿論あるのだが、今後の出店では建築費の高騰がSCの出店コストを上昇させるため、これまでのような店舗の拡大戦略は転換するだろう。
オーバーストア、客足の落ち込み、さらには今後のガソリン高懸念などで、SCをはじめロードサイド業種は、郊外ロードサイドへの出店を抑制へと舵を切ったようだ。
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