付加価値住宅 / 狭小敷地や家事動線に工夫
ハウスメーカー各社が技術力にプラスアルファーの付加価値をつけて他社との差別化を図っている。住宅本来の性能に加え、購入者のニーズを細かく分析し、購入者納得の気配りをした住宅が登場しているのだ。本コラムでは3社の商品を紹介しよう。
まず大和ハウス工業が昨年9月に発売した戸建住宅「xevo」。この商品は、壁の中に断熱材を充填する従来の「充填断熱」に加え、柱など構造体の外側に断熱材を施す「外張り断熱」を採用したことで話題となっている。同社は「xevo」で25年ぶりに基幹工法を見直し、柱や梁の強度を1.3倍に向上させ、構造上の制約を減少させ、設計の自由度を上げた。この結果、2階の出っ張りが広く取れるようになり、都市部の狭い敷地での空間利用が向上した。つまり1階の庭部分が大きく中に引き込ませられるため、2階のバルコニーの下の軒下空間が最大で高さ2m40cm、幅4m55cm確保できるようになった。リビングと同じレベルにしてデッキを敷くと、リビングから庭までが連続した柱や壁がない開放感溢れる空間が生まれる。大和ハウスは、この空間を「エアリビング」と名づけた。「四季と、もっともっと仲良くなれる青空に続くリビング」というキャッチフレーズが、購入者に心地よく響くという訳だ。
バルコニー下の活用といえば、狭い敷地でも設置できるように工夫したガーデンテラスがある。東洋エクステリアが2006年4月に発売した「cocoma」だ。東洋エクステリアは、ハウスメーカーというより建材メーカーであるが、居間とインテリアを調和をさせるため、ネジ止め部分をカバー材で隠したり、屋根や柱のアルミ材に木調のラッピングをするなど気配りをしている。注目すべきは、狭い敷地でも設置できるように「cocoma」の出入り口を正面でなく側面につけたことだ。ガーデンテラスは、配置上、隣家との境界や道路が正面にくることが多いため、側面を出入り口にすることで使用に支障がないようにし、多目的スペースの追加設置を可能にした。
最後に紹介するのは、パナホームが2007年12月発売の「ソラーナ・ユールキア」。女性の声を生かした「家事楽スタイル」が同商品のウリで、女性に行ったアンケートやモニター調査を商品に反映させた。家事効率を高めるため、女性が家事をするとき家電の間を行き来する動線と移動距離を短縮することに注力した。ユニークなのは移動距離を「家事楽指数」として数値化したことだ。「ソラーナ・ユールキア」に住むと現在、住んでいる家に比べ何メートル短縮できると解りやすく説明することでユーザーの購買意欲を高めることができる。
近年、住宅市場は成熟し、各ハウスメーカーの性能差がユーザーにとって解りにくくなってきており、中長期的には少子高齢化など逆風下にもある。熾烈な販売競争を生き抜くために購入者のニーズを的確にマーケティングし、自社商品を選んでもらえる付加価値にまで高める工夫が各社の商品開発現場で進んでいる。
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