(社)不動産証券化協会認定マスター養成講座体験記
3月7日、ARES(社団法人不動産証券化協会)のWebサイトで不動産証券化のプロを養成する(社)不動産証券化協会認定マスター資格養成講座修了者になっていることを確認しました。
振り返ってみると昨年の4月末からWeb上でのeラーニングと配布テキストによる受講を開始したのですが、不動産証券化協会認定マスター養成講座の受講を開始してみて、その学習領域の広範さ、ボリュームには驚きました。Web講習と同時併行で自習するコース1の所定テキストだけでも
- 101 不動産証券化とファイナンスの基礎 283ページ
- 102 不動産の投資分析 339ページ
- 103 不動産証券化商品の組成と運用 上・下 726ページ
- 104 不動産証券化商品の投資分析 257ページ
- 105 不動産投資運用と倫理行動 77ページ
の5巻で、総ページ数は約1,700ページに及び、これに内容の濃いWeb講義が加わります。Web講義は、web上のARES CAMPUSにID、パスワードでログインし、配信動画で学習します。講師がスライド操作をしながら講義が進むのでリアルの教室に近い臨場感があります。スライドされた資料は、講義後にARES CAMPUS内でまとめて閲覧、印刷が可能になっており、またARESから受講者への連絡事項もARES CAMPUSに配信されます。
筆者の場合、九州の地方都市(福岡)在住なので、東京会場で行われるコース1の修了試験、2回のスクーリーングのために上京する費用を受講料に加えるとかなりの出費になりましたが、「大枚はたいたので絶対に養成講座を修了し、不動産証券化協会認定マスター資格を取得して投資の回収をしなければ!」という悲壮な決意?が、ともすれば挫けそうな気持ちを後押ししてくれたようです。「地方都市での不動産証券化のプロ」が目標の筆者としては、もともと強い関心がある領域(というより不動産証券化協会認定マスター資格は必要不可欠)なので仕事の合間を縫ってのWeb受講やテキスト自習は苦になりませんでした。不動産証券化を幹線として、ストラクチュアリング、税務・会計、信託や法務、ファイナンス理論、デューデリ、PM…と多岐・複雑に支線が絡んで構成された比較的新しい分野を、まるごと体系的に学べることにワクワク感すらありました。しかも講師の先生方は、各界の研究、実務の第一人者ばかりです。
10月には上京してコース1修了試験を受験、11月の合否発表では、正解率81%で合格率45%のなかに生き残りました。コース1の修了試験で痛感したのは、電卓の早打ち特訓です。とにかく計算問題は時間が足りませんでした。マークシートの択一も正・誤を1つ選ぶという通常のスタイルではなく、「正解はいくつあるか」といった問い方なので、各肢ごとに正誤を丹念に見抜かなければならず、かなりの時間負荷となりました。
問題の内容とレベルですが、例えば、
いま、A会社の株式期待収益率が8%、株式ベータが2であり、無リスク金利(リスクフリーレート)が3%であり、CAPM(資本資産価格決定モデル)が成立しているとしよう。CAPMが意味する市場リスクプレミアム(λ)はいくらになるか?
といった各分野の基本的な問題が出題されます。試験全般について感じたことは、歯が立たないような難問はないのですが、不動産から金融、ファイナンス理論と試験範囲が広範なので自分が日頃やっている業務外では、かなりのとこまでWeb講義とテキストをやってないと合格基準点65~70に達しないということです。
コース1修了試験の合格発表後、間もなくコース2のWeb講義とテキスト自習が再び始まり、「不動産投資分析」、「不動産ファイナンス」、「不動産証券化商品分析」の3科目について、コース1と同じくWeb講義とテキスト学習が始まりました。予想外に内容とボリューム満載のレポート課題をエクセル、ワードファイルにまとめ、ARESのサイトから相次ぎ送信しました。例年、正月明けから国交省の地価公示鑑定評価書の作成にかかるのですが、おかげで年末、正月はレポート作成で完全に潰れ、元旦もPCの前から離れられませんでした。
コース2の総仕上げは、会場となっている東京の新霞ヶ関ビルでスクーリングです。スクーリング後、修了試験が行われました。コース2は、課題レポートと修了試験の審査で数パーセントの人が落されるのですが、自分がその数パーセントの中に入ると、試験、スクーリングと3回の上京を経て、ここまで辿りついただけに立ち直れないほど落ち込むだろうと思い、正直、かなりなプレッシャーでした。コース1の過去問は、早い時期に冊子で頂けるのですが、コース2の修了試験過去問は、情報が入らず、問題のレベルや内容は藪のなかだったので余計に不安だったこともあります。
最後に不動産証券化認定マスター養成講座の感想をまとめると、Web講義、スクーリングと、それぞれの分野の最前線の選りすぐりの講師の方々から証券化の基礎から実践にわたり体系的に学べる素晴らしいものでした。We講義のeラーニングもよく構成されていて、なによりも忙しい仕事の合間に時間と場所を自分で選び、マイペースで学習できるというメリツトは、今後のこの種の研修の方向性を示唆するものといえます。
eラーニング戦略研究所の調査レポートによるとARESは、システム開発、保守、運営は外部委託し、導入実積が多い市販のパッケージシステムをカスタマイズしているそうですが、(社)日本不動産鑑定協会も会員研修に是非検討して欲しいものです。独学では、これだけ充実した内容を1年足らずの期間で修得するのは、至難の業と思いました。
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