道交法改正の思惑はずれたコインパーキング業界

究極の立地ビジネスというべきコインパーキングのビジネスモデルにもそろそろ北風が吹き始めた。

2006年道路交通法改正でコインパーキング業界には神風が吹いた。駐車違反取締りの民間委託、みなし公務員が巡回する駐車監視員制度の導入、駐車違反がビシビシ取り締まられる…コインパーキングに駐車する車輌が増える…と業界が期待した。

しかし、改正法が施行されると、予想外に需要が伸びなかった。運転者は、監視員の巡回頻度をエリアごとに学習し、巡回が少ない、殆どないエリアでは、従来の駐車スタイルに戻ってしまったからだ。ガソリン代の高騰や、飲酒運転の罰則強化もコインパーキングの需要者を減少させた。飲み屋の傍のコインパーキングが以前に比べガラガラという話を聞くようになった。コインパーキングを利用するドライバーが、思うように伸びないのに、法律改正効果を当て込んで新規参入業者は増加したため、需給バランスが崩れ、競争激化で地権者に払う賃料が上昇し、業者の収益が圧迫され始めた。

業界大手のパーク24が2月28日に発表した2007年11月-2008年1月期連結業績は、経常利益が25億円と前年同期比23%減、営業利益は22億円で22%減となった。道路交通法による取締り強化の影響が薄れ、競争激化で地権者に払う賃料が上昇、特に昨年開業した駐車場の賃料負担が重く、人員採用の拡大で、販管費も拡大した(日経08.2.29)。

コインパーキングに限らず駐車場ビジネスで売り上げ、稼働率に影響するのが、「時間貸し」が成り立つ立地と駐車場のレイアウトだ。周辺に店舗やオフィスなどが集積する中心市街地もしくはその周辺で、表通りというより裏通りに多いのが特徴だ。ビルや店舗用地には不向きな虫食い地、狭小地や俗に言う「うなぎの寝床」のような間口狭小・奥行長大地など、本来は不動産の経済価値が低いとされている土地が有効活用されているケースもある。その多くは運営企業が地権者から一括借り上げをしているが、オーナーの自己運営を支援する形態を採っているケースもある。業者は、1台当たりの駐車所要スペース縦5m、横2.5mとスペース内への入庫・出庫が可能な限り1台でも多く駐車させるようにレイアウトする。ビルでいえば、有効率を上げるため共用スペースを削る工夫するのに似ている。しかし、稼働率を上げることを重視する余り、駐車が容易でないレイアウトも数多く見かける。駐車場を探すときドライバーは、一瞬のうちに入・出庫の容易性を識別し、コインパーキングを選別している。同一料金の隣リ合わせ地でも駐車が多いコインパーキングと空きが多いパーキングの差が出るのは、ここに起因しているそうだ。

いずれにせよ単に立地頼りのビジネスモデルでは、競争激化で成り立たなくなってきているので、さまざまな付加価値をつけた差別化の試みが業界で行われている。例えば、パーク24は、東京電力と共同で電気自動車向け充電サービスの実証実験を始めた。その狙いは、「電気自動車への関心が高まってきたきたためだ。当社の駐車場には既に電気が通っており、充電のための設備投資はそれほどかからない。駐車場は電気自動車の充電拠点として非常に適していると思う(日経産業08.2.1)。」というものだ。ほかには、全国賃貸住宅新聞(08.2.4)で紹介されたトモパーキングサービスのようにプリペードカードを利用者に発行し、一定期間自由に使える「フリーパーク」と呼ばれる時間貸しと月極の中間を狙う業者も出ている。

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