21世紀型バブルへの暴走と崩壊 / サブプライムローン問題

サブプライムローン問題を発端として世界中に株安の激震が走ったが、米FRBが公定歩合を引き下げたことを契機に日米の株式市場の下落は一応鎮静化したかに見える。しかし、この問題の複雑な実相が明らかになるにつけ今後の展開について楽観的になれないという見方が多い。

8月23日の日経紙「経済教室」に掲載された行動ファイナンス経済学者小幡績氏の論文は、なかなか面白かったので紹介する。

「金融技術が高度に進化して、リスク分散できるようになったことにより、リスクマネーは増殖し、バブルの発生と崩壊は恒常化する。サブプライム問題はその契機の1つに過ぎず、今回起きたことは古典的なバブルの生成と崩壊が本質である。」

というのが小幡氏の見解である。

もう少し具体的に書くと、サブプライムローンは、住宅価格が上昇し続けることを前提にしないと維持できない仕組みであり、一方、住宅価格もサブプライムローンが拡大すると上昇する。そこにあるものはまさに自己増殖メカニズムである。住宅業者やローンレンダー、証券化されたモーゲージの投資家は、生成されたバブルで参加者全員が潤い、そして業界と市場は発展していくので底流にあるのはバブルの生成願望である。

証券化に見られる金融技術の進化は、リスク資産をプールして、定量化し、それを分散するため、投資家のリスクは低減し、低減される部分は、金融商品の価値に転化されて商品価格が上昇する。こうしてリスクマネーが利益を上げて増殖していくと、これまでリスクを回避していたマネーも有利な運用先を求めて参入してくる。しかし投資先は有限で自己増殖しないため、投資先の奪い合いが起こり投資収益率は低下する。そこでレバレッジを利かせて投資収益率を高めようとする。先端的金融技術でリスク分散されているので金融商品は合理的で破綻しないという過信が、高レバレッジのリスクマネーをさらに膨張させ、バブルが生成されていく。そして一定規模の投資家がリスクが高いと認識を変えた瞬間からバブルは崩壊する。投資家が一斉にリスク回避に向かいリスクマネーの自己増殖メカニズムは逆回転をはじめて冨が急速に消失する。

以上のプロセスは、いまや金融商品の一部となった今日の投資向け不動産を巡る状況にもあてはまるのではないだろうか。証券化によるリスク分散が溢れるリスクマネーを参入し、挙句の果てに投資適格地の物件枯渇と市場過熱に起因する投資収益率の低下が起きる。体温計ともいうべき長期金利とのスプレッド差が縮小。収益価格への過信等々…。そして有価証券化された金融商品JREITも地下では実物不動産投資と同根で絡み合っている。

金融技術が進化し、収益価格で物件価格が評価されているからバブルは発生しないという人たちもいるが、筆者には、「金融市場が発展して資本が増大し、金融技術が進歩するほど、逆説的に、バブル発生と崩壊は恒常化し、金融市場の本質となる。」という小幡氏の言葉は、不動産投資市場に置き換えてみても見事に符合するのだが…

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