都市間格差と地価
人口が減少している地域と地価下落には、高い相関性があることを今年の地価公示価格は証明している。リートが組み入れた不動産が存在しない県は、日本経済新聞によると昨年末で全国に14県あり、青森、岩手、山形などの東北や長崎、宮崎など九州に多い。これらの地域は、不動産の収益力が低いと判断されているわけだが、共通しているのは、旧来型の公共工事に依存する産業構造が依然として支配的で、人口減少が大きい地域だ。
都市の人口や経済規模の動態に「ある法則」が当てはまる。東京のような”世界都市”、名古屋・福岡・仙台・札幌などの”政令都市”・”地方中枢都市”、これらを除く”県庁所在都市”そして”その他地方都市”という都市規模、機能からみたランクがあり、下部から上部へ人口が移動し、経済規模の伸び率も上部都市ほど高いという法則だ。
人口が減少し、域内経済が衰退している地方都市は、地域の製造業が国際分業の流れで海外へ工場移転し、空洞化しているケースが多い。一方、国際競争力が高い知識集約型産業など産業の高度化が進んでいるのは、都市魅力が高く、人口が流入し、人材が多様な大都市に偏る。
都市間競争だけでなく、近年になって大都市圏の中でも地域の盛衰が見られる。「都心と郊外」がそうだ。都心に近いほど人口増加傾向が見られ、地価の増減の変動率も比例している。この原因は、中心部の地価が90年代の下落により、値ごろ感が増し、都心の持つ利便性と多様性が吸引力となって都心に居住者が回帰している、いわゆる都心回帰現象に起因している。この傾向は、まちづくり3法による「コンパクトシティ」でさらに加速するだろう。
コンパクトシティは郊外に拡散した都市機能を中心市街地に集約させようという都市思想で、高齢者は車で広範囲に移動しないという高齢化社会を視野に入れた政策である。中心商店街に多く見られるようになったシャッター商店街への危機感も背景にあった。財政難を抱える自冶体が、民間企業の経営戦略である「選択と集中」をまちづくりに取り入れたといえる。
人口移動による都市間競争と都心回帰、大都市には死角がないように見える。かつて団塊の世代が高度成長期に企業戦士として大量に流入したのは、世界都市である東京など大都市であるため、大都市ほど高齢化率が急速に高まり、高齢化するまでの速度が下部の地方都市より速いというアキレス腱がある。
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