市街化調整区域の地区計画
「市街化調整区域における地区計画」というまちづくり手法が注目されている。本来は市街化を抑制すべき地区として市街化調整区域(以下「調区」と呼ぶ)があるわけだが、調区内には既存宅地、既存建築物建て替え、農家住宅の建て替え、既存権利届出による建築、農家の分家、調区内の日用品店舗で開発許可を取ったコンビニなど様々な都市計画法上の新築や再建築ルートを使っての建築物が無秩序に建っている。
一方、地方都市の郊外にある調区内エリアは人口流出や少子高齢化のトレンドのなかで地域活性化もままならず、地域住民のための必要な公共整備をしようにもできない地域が多い。
このような状況のなか地区計画を定めることにより秩序ある土地利用を進めようとする市町村が近年になって増加している。調区内では昭和62年に制定された集落地域整備法の区域について、集落地区計画に基づく土地利用規制が行われていたが、集落地域以外でも調区の特性を踏まえながら、開発行為、建築行為を都市計画上支障がないように誘導するため、平成4年の法改正で地区計画を定めることができるようになった。さらに平成10年の都市計画法改正で地区計画策定対象区域の要件が緩和された結果、平成11年以降になって全国の市町で地区計画を指定するケースが増加した。「都市計画法34条1項8号の2」で地区計画に適合する開発行為が開発許可の対象になることになったので個別の小規模な開発も可能となった。
調区内の地区計画区域は、近隣地域およびその周辺部に限定されて指定されるケースが多い。地区計画の決定プロセスは、市町が地域の住民の意見や意思を反映し、県と協議調整をして都市計画決定するのだが、その効力は告示日より発効することになる。
地区内での建築制限は、用途制限、建蔽率・容積率の最高限度、建築物の敷地の最低限度、高さの最高限度、壁面の位置制限、建築物の形態、色彩その他の意匠制限等々に及んでいる。地区内道路の整備計画がなされ、所定幅員を実現すべくセットバックが義務付けられる場合もある。地区計画の決定に併行して建築基準法68条の2に基づく建築条例が市町により制定されると地区計画の制限内容の主要なものが建築基準法の制限に移行し、建築確認や計画通知の確認の対象となるほか、違反建築に対する是正措置も取ることができるようになる。
このように地区計画がなされた地区内の土地においては、制限の内容に適合すれば、宅地だけでなく農地でも制限範囲の建築が可能になったりするので市街化区域に近い地価形成が地区内で行われるケースもある。いままでは調区内の土地の価格というと属人性に関係がない一般サラリーマンの購入を想定して再建築可能か?を個別の物件単位で判断することに終始しがちだった。地区計画区域内の対象地の価格は、隣接、さらに面的に拡大したスケールでの検討が求められる。
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