国交省が欠陥住宅補償を具体化へ
耐震強度偽装で、ヒューザー社のマンションを購入した住民は品確法による瑕疵担保10年保証はあってもこの仕組みがいかに無力かを思い知らされた。売った会社が倒産、破産すれば仮に裁判で瑕疵が認められたとしても売主に弁済原資がなければ被害住民にはローンだけが残り、いかに悲惨な目にあうかを世間に知らしめた。この事件を契機に、売主が経営破綻したときに補償する制度の早期の創設が求められていた。
近年、耐震偽装に限らず欠陥住宅を巡る紛争は増加し、被害者は売主の瑕疵担保責任や民法の不法行為責任で損害賠償、修復等を求めるのだが、判事や弁護士も建築の専門知識に疎い人が多いらしくその裁判は素人がやるのは並大抵の苦労ではない。そのうえ売主の経営状況まで心配しなければならないとすれば精神的にも経済的にも2重苦、3重苦を被害者に強いることになっていた。
国土交通省も耐震強度偽装事件等を受けて、欠陥住宅の第三者補償制度や売主の供託などを検討していた。そしてこの度、すべての新築住宅の販売業者に対し欠陥補償の資力を確保するよう義務づける新法案の概要が固まった。
▼(日本経済新聞07.02.28引用)
国土交通省は耐震強度偽装の再発防止策の一環として、欠陥住宅の被害を補償する新制度をまとめた。2009年度半ばをめどに、一戸建てやマンションなどすべての新築住宅の売り主に「欠陥住宅保険」への加入か、補償に充てる資金の供託を義務付ける。売り主が経営破綻しても欠陥住宅補償を確実に受けられる仕組みを整え、被害者が保険金や供託金で補修や建て替えをできるようにする。
国土交通省は新制度を盛り込んだ「特定住宅瑕疵担保責任履行確保法案」を3月6日にも閣議決定し、今国会に提出する。
現在でも新築住宅の売り主は十年以内に欠陥が見つかった場合、買い主に補償する責任を負う。しかし05年11月に発覚した耐震強度偽装問題では売り主が経営破綻して責任を果たせず、被害者が二重ローンを負う事態が発生。補償資金を確保する仕組みづくりが課題となっていた。 欠陥住宅保険は売り主が保険を引き受ける法人(保険法人)に保険料を払い、欠陥があった場合に保険金を受け取り、買い主への補償に充てる。保険金は補修に必要な額の八割程度にする方針。残りは売り主が負担する。売り主が経営破綻した際は買い主が保険金を直接、請求できるようにして、全額を補償する。住宅の欠陥の有無を検査できる機関を国が保険法人に指定し、検査を通った新築住宅が保険に入れるようにする。合格しない住宅は保険に入れず、売買もできない。住宅の売り主が支払う保険料は一戸当たり数万円の見込み。過去の欠陥住宅の発生率に応じて、保険料率に差をつける「可変料率」という制度を導入。良質な売り主ほど保険料を安くする。具体的な保険料は保険法人が決める。住宅の長期保証などを提供している財団法人「住宅保証機構」などの保証機関が保険法人になる見通しだ。現在でも売り主が経営破綻した際に補償金を支払う保険はあるが、任意加入のため加入率は約一割と低迷している。 本来、耐震偽装のように故意や重大な過失があった場合は保険金の支払い対象外になる。だが、新制度は保険料の一部を積み立てる基金を創設。故意や重大な過失による欠陥も補償する。
売り主が欠陥住宅保険の代わりに補償資金を法務局に供託することも認める。供託金は売り主の住宅供給戸数に応じて決める。供託と保険のどちらを利用するかは売り主の判断に委ねる。大手住宅メーカーは供託を選ぶ可能性があるが、大半の売り主は掛け捨ての保険を選ぶ見通しだ。 売り主が払う保険料や供託金は住宅価格に上乗せされて、消費者の負担になる可能性が大きい。良質な売り主ほど保険料が安くなるため、国交省は欠陥住宅を防ぐ技術競争も進むとみている。
さらに2月28日日経紙は
欠陥の住宅を補償するため新築住宅の売主に義務付ける供託金を年間1,000戸供給する大手で1戸当たり4万4千円程度とする案をまとめた。供給戸数が多いほど1戸あたりの額が安くなる仕組みとする。年間100戸程度の中小の売主で1戸18万円の負担になる。一方、供託以外の手段として新たに導入される掛け捨ての保険は1戸当たり8万円程度の見通しで多くの企業は保険を利用すると見られている。
と報じている。
いずれにせよこれらのコストはエンドのユーザーの購入価格に加算される可能性が高い。半ばブラックボックス化されてきた住宅の構造や安全面に保険会社など補償機関のチェックが入る機会が増えるのは建築業界の健全な発展のためには良いのではなかろうか。補償件数に応じて保険料率などが加算される仕組みが作られると安全でクレームが少ない住宅つくりのインセンティブになると思われるからだ。
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