土地を組み合わせて地価UP↑その配分は?

複数の隣接土地を組み合わせて併合し、経済価値の上昇、地価アップを実現させ、その価格上昇分を参加地権者に合理的に配分する論理について書いてみる。専門的に言うと「限定価格」という概念だが、その仕組みはそれほど難しくない。知っておけば、不動産取引や、土地の有効活用などで何かと役に立つロジックである。

最もシンプルな例で説明しよう(下図参照)。

A地の接面道路が拡幅され、25m幹線道路になり、車の交通量が増え、道路沿いにはドライブインや郊外書店など沿路サービス業施設が建ち並んできた。A地の所有者A氏は、いまは駐車場になっている当該地の売却や有効利用を考えたが、奥行きが10mと浅く、この形状では、来客用の駐車スペースをとり、さらに店舗を配置することは難しい。売却から事業用借地や建設協力金方式店舗などを模索しても、地形のマイナスを反映して売値も家賃等も希望額を下げなければいけない。そこで空き地同然の裏地のB地を買い取るか、買取できないときは、共同して事業用借地などを検討してみることにした。

B地を買い取るとして、B地が裏地で無道路地であるというマイナス面だけを考慮した買取価格では、B地の所有者B氏は納得しないであろう。なぜならB氏は、A氏がB地を購入することで、A地の経済価値が上昇し、メリットがあることを十分に予測できるからだ。このようなケースでは、B地の買取価格をいくらにすれば双方が納得する合理性を有するのであろうか。言いかえると、A+Bのように土地を併合し、一体利用することにより、AとB地が単独のときより、利用効率が上昇し、地価が上昇するとき地価上昇分をいかに配分するかという問題になる。

以下でB地の合理的な買取価格を算定してみる。

○A、B単独地としての価格

前面道路沿いの標準的な形状、規模の土地価格を㎡当たり300千円とすると、A、Bがいまの単独地としての価格は、マイナス面を反映して

A地価格:300千円×0.85(奥行短小減価率)×300㎡=76,500千円
B地価格:300千円×0.50(無道路地減価率)×600㎡=90,000千円

併合し、一体利用することで間口30m、奥行30m、規模900㎡の整形地となり、駐車スペースを十分に確保できる沿路サービス業施設用土地となり、その結果、標準的画地並みの価格である300千円までUPする。

併合後一体使用地価格(A+B)=300千円×900㎡=270,000千円

したがって併合後と単独地のままを比較すると地価上昇が

270,000千円-(76,500千円+90,000千円)=103,500千円となる。

この上昇分をAとBにどのように配分するかとなるが、配分基準の代表的なものに総額比配分と購入限度比配分がある。このケースでは、総額比配分で計算してみよう。

総額比配分の考えは、AとB単独地のときの総額の比率で上昇分を配分しようということだ。つまりAとBは、それぞれの総額分を出資したのであるから地価上昇分は、その出資分に応じて配分するのが合理的という論理だ。したがってB地への配分率は、

90,000/(76,500+90,000)=0.54

この配分率で地価上昇分を配分すると

103,500千円×0.54=55,890千円

以上からB地の買い取り価格は

90,000千円+55,890千円=145,890千円(㎡当たり243千円)

以上、シンプルケースで限定価格の仕組みを解っていただけたと思うので、不動産鑑定評価基準の限定価格の定義を引用し、その意味を簡単に説明する。

「限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。」

一読しただけでは、「何のことやら」となるが、難解な言い回しもシンプルケースに当てはめて考えると意外と簡単明瞭だ。

「正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、」

この部分は、単独地でみたA、B土地価格をA+Bの併合一体使用にすることで103,500千円の地価上昇が起きたことを指す。

「市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。」

地価上昇部分を配分した価格でB地を買い取ることができるのは、併合メリツトがあるA地所有者に限定され(市場限定)、併合後の地価上昇分が合理的に配分されたB地の価格145,890千円は、当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格になるという意味。

次回は、もう少し複雑なケースであるいま流行の「共同ビル」の持分比を決めるときの複数参加地の敷地価格決定に応用してみる。

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