不動産仲介業者のインターネット広告を考える
仲介業者さんに聞くと「最近のお客は、ネットで物件を検索し、これはと思うものを予めセレクトして業者の店を訪れる。」らしい。まずは不動産のポータルサイトなり業者のHPを見て物件を選ぶので、ここで勝負がついてしまう。そのためか比較的遅れているといわれた不動産仲介業界もインターネットを媒介とした営業戦略が急速に進んできている。
これまで業者のWebサイトは、見栄えやコンテンツ、洗練度で大手と中小業者でかなりの差があったが、最近は中小業者のサイトの水準が上がってきた。仲介業者をターゲットとしたWebサイト作成業者も出現しており、サイトのデザインや希望の物件情報に辿りつくまでをいかに短縮できるかの導線も工夫されている。しかしWEBサイトをいくら充実させてもサイトを訪れる人がいなければ、努力は水泡に帰してしまう。そこでSEOと呼ばれる検索エンジン最適化対策があれこれと練られることになる。SEOは、グーグルやヤフーなどの検索エンジンの検索結果のページの表示順位で自サイトが少しでも上に表示されるように工夫する技術である。例えば「アパート 福岡市」と検索して表示1ページ目で「○○不動産」がでてくるのと2ページ以降で表示されるのとでは、クリックしてサイトを訪れる入居希望者の数は格段に違う。SEO対策の専門業者もいまでは数多く存在し、なかには表示順位を成功報酬で請け負う業者もいる。
物件を探す側から見れば、物件情報を大量に集め、希望条件を細かく絞り込んで検索できるポータルサイトを便利に感じてしまう。この点では、中小業者のサイトはデータベースの物件量で集客に不利だ。しかし、大手ポータルサイトにない特色を鮮明に打ち出し、ネットでの集客に成功しているサイトがある。「東京R不動産」がそれだ。そして福岡に同社の系列の「福岡R不動産」も登場した。
R不動産のサイトを訪れると、物件選別のカテゴリーが他サイトとと全く違うことに気づく。駅距離、設備などで括れない、住まいへのこだわりが見出しやコラムから読み取れるのだ。同社のスタッフは、現地へ足を運び、物件を確認し、物件の魅力をコラムで伝える。
筆者も思わず見入った福岡R不動産の「海に向き合うタフさも欲しい」と書かれた志摩町芥屋330㎡の物件紹介コラムを一部紹介しよう。
~前段省略~
前面道路から一本入った程よい奥まり感、そしてその向こうは低い木立の海を隔てて、玄界灘が広がり、2階建てを建てれば間違いなく最高のオーシャンビューが手に入りそうな、文句なしの立地条件。
~中断省略~
こんな素晴らしい条件で、この価格。もちろんワケがあります。この土地、私道に面しているため、建物は建てられますが、インフラ関係をすべて自前で用意する必要があります。なので、海を愛すタフな方に、そんな苦難も乗り越えながら、眺望と秘密の道を持ち合わせた隠れ家を作っていただきたいのです。
ポータルサイトのカテゴリー分けでは、駅近、利便施設のいずれも??思いつく検索キーワードの組み合わせのなかでは拾われそうにない物件だが、伝え手の感性で、瑞々しく物件の魅力が読み手に伝わってくるではないか
物量や資力だけで支配できないネットの奥深さが仲介業者のビジネスチャンスを限りなく広げてくれるのだが、ネットの持つ負の部分も忘れてはならない。今日の日経紙によると関西のある住宅関連会社で3人の社員が毎日、10件のブログを更新している。社員はブログに自社名と「悪徳商法」という言葉を文脈とは関係なく忍ばせ、頻繁に更新している。このため、この2つの言葉で絞込み検索をすると、結果の上位を社員ブログが占めるようになる。ブログは中傷情報を探そうと検索した利用者に対するダミーサイトの役割を果たす。秋葉原の事件で匿名の掲示板が持つ攻撃性や犯罪性が取り上げられたが、クレイマーや偏執狂による根拠なき中傷が企業が知らない間に思わぬ世間の誤解をネット空間で膨らませているかも知れない。そのための対策を秘かにネットで行う企業…ネット社会の怖い一面でもある。
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