暫定税率復活、在宅勤務とネットスーパー

租税特別措置法改正案が30日、衆院で再可決された。失効からわずか1ヶ月で、ガソリン税などの暫定税率が復活した。5月1日以降、店頭のガソリン価格はリッター30円程度上昇する。この国の我慢強く慎ましい庶民は、値上げ前のガソリンで車を満タンにするべくGSに長蛇の列を作った。混乱を招いた政治のドタバタとGSの前に並んだ車の列、諦めにも似たドライバーの表情等々、TVで放映された映像は後世に永く伝えられることになるであろう。

次々と明らかになる道路特定財源の役人たちによる数々の無駄遣い、さらにブラックユーモアのセンス溢れる「後期高齢者」と型枠された医療制度の告知で、国民の怒りは沸騰し、伝統的に強固な保守地盤の山口での補選の選挙結果がでることになった。

ガソリン代の値上げは、今後、車での移動を抑制するほうに作用するであろう。そこで筆者の脳裏に浮かんだのが、在宅勤務とネットスーパーである。両者の共通点は、「IT」、「移動をしない」、「自宅居ながら」である。そして在宅勤務は生産・労働活動でネットスーパーは消費活動であることが相違点といえる。

まず在宅勤務であるが、都心にあるオフィスへの通勤の交通手段は、車だけでなく鉄道など公共交通機関があるので必ずしもガソリン代上昇が在宅勤務を後押しをするわけではないが、「通勤を伴わない生産・労働形態」という資源価格高騰下の省資源に適った勤務スタイル=在宅勤務が促進されると筆者は見ている。政府のテレワーク(在宅勤務)実態調査によると2005年6月時点で674万人。欧米に比べるとイマイチ普及が遅れているが、今後のわが国の少子高齢化社会の到来と労働力不足、例えば自宅で育児に追われる主婦や定年後の多くの時間を自宅で過ごす高齢者を企業が労働力として再編成し易いという点でも在宅勤務の導入が進むという方向性が見えてくる。

次にネットスーパーである。ネットスーパーという業態は、生鮮食品や加工食品、日用品などスーパーが取り扱う商品をパソコン、携帯電話から注文し、数時間で自宅まで届けてもらうサービスである。国内で西友が2000年はじめにサービスを開始し、ここ数年で新規参入が進み、2007年にはイトーヨーカ堂も事業展開を開始している。スーパーの売り上げが低迷するなか、ネットスーパーは利用者も着実に増えている。ネットスーパーは会員登録で詳細な属性情報を記入させるので、コンビニのPOS以上のマーケッティングを可能にしている。ガソリン代が高くなったから車で買いにいかないという、今の時勢の消費者のニーズにフイットしてしまった。自宅から出られない高齢者、重いものを買って運べない女性や高齢者にとっても有難いサービスとなっている。いまのところ宅配のメリツトと配達料、ネット購入の手軽さと現品を見て買えないという不安などが利用者の心のなかで綱引きをしているが、今後、このような課題は次第に改善されていくだろう。

店舗やオフィスに移動しないで、仕事をしたり買い物ができるのは、自宅とオフィスや店舗を繋ぎネットワークするIT技術のインフラが支えているのだが、これまでの歴史がそうであったようにガソリン代の高騰のような障壁が新しい制度やシステムを作る契機となるのかもしれない。

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