消えゆく福岡の屋台
福岡の夜といえば夜の街を彩るネオンと屋台、移動式店舗の地べたで繰り広げられる食文化と歓楽街の極彩色のネオンが何ともいえない情緒を醸し出し、テレビをはじめメディアで紹介されているところだが、このところ福岡の屋台は減少の一途を辿っているらしい。なんとも寂しいことである。
最盛期には400軒以上あった福岡市の屋台は、4割ほど減り、今では160軒ほどになってしまった。その原因といえば屋台営業者の高齢化と行政の規制である。屋台営業主の高齢化が進んでおり、子供はその大半が別の仕事に携わっているので後継者がいない。なにやら地方駅前商店街のシャッター通りで苦悩する高齢商店主にダブってしまう構図なのだが、ここでも良き日本の風景が消えようとしている。
福岡県警は、95年に道路での商売を禁止する道交法の原点に立ち返り、新しく開業しようとする屋台には道路使用を許可しない方針を打ち出した。また福岡市も2000年、歩道の確保やごみ処理の仕方など定めた指導要綱を策定し、屋台営業者が、営業に必要な道路を占有する許可権を他人に譲渡することを禁じている。配偶者や子供への譲渡は例外的に認めるが、新規参入の途を閉ざした。市の要綱が施行されて7年、承継された屋台は4軒だけで、約30軒が姿を消している。
長さ3m、幅2.5mの空間で湯気が立つおでんやラーメン、焼き鳥を頬張る屋台の客たちは皆いい表情をしている。それは地べたを踏み、暖簾で緩やかに夜気を遮断する移動式店舗のおおらかさにあるのではなかろうか。