地震デリバティブ

地震デリバティブというリスクヘッジ商品が人気を集めている。全国の地方銀行や信用金庫が、天候や地震、原油のデリバティブの注文を損保に仲介する業務に乗り出しているが、7月25日の日本経済新聞によると中部地方の地銀は、東海地震に備えることもあって特に地震デリバティブへの注目度が高く、東海地方では百五銀行がすでに4件成約したほか、三重銀行も7月から取り扱いを始めた。新潟県中越沖地震の発生以後は、地銀への地震デリバティブの問い合わせがさらに増えているそうだ。

地震デリバティブは、契約期間内にあらかじめ決めた観測地点で、一定の震度(またはマグニチュード)以上の地震が発生すると、補償金がもらえる仕組みになっている。保険との違いだが、地震保険は、建物などが破損するなどの実損害が証明されないと保険金が出ないが、地震デリバティブでは実損害額に関わりなく約定した金額が支払われる。そして保険の場合、損害の発生と地震との因果関係や、実損額の査定に時間がかかるが、地震デリバティブは、あらかじめ契約で定めた一定要件の適否の見極めが簡単なため、短期間で約定の金額が支払われる。定額であるため、実損額を補填できない場合もあるし、実損額を超えて支払われるケースもあることが注意点で、保険と地震デリバティブを組み合わせてリスク管理するのがベストといえる。

保険は、ランダムで予測困難な発生リスクに対し、同種リスクヘッジ希望者を数多く集め、母集団を大きくすることで、確率的な予測の当てはまりを上昇させるという大数の法則が保険会社の経営を支えている。しかし地震は発生確率が低く、地震が起きてしまうと甚大な被害が広範に発生するため、本来は保険商品化しにくい分野といわれている。例えば首都直下型地震が発生すると被害額は112兆円になるという予測がある。保険会社は、保険契約で引き受けたリスクの一部から全部を再保険市場にリスク移転しているらしいが、首都直下型地震のような甚大な被害が発生すると、発生以後は、再保険市場のキャパからみて保険料が高騰したり、保険加入審査を厳しくしたりするのではないだろうか。

一方、デリバティブは、金融派生商品であり、株や債券など金融商品を先物、オプション、、スワップなどの手法でリスクヘッジしてきたが、最近になって天候デリバティブなど金融工学を駆使して、経済活動や生活の広範な領域でさまざまなリスクヘッジの要求に応える商品を開発しており、リスクヘッジができない最後の資産といわれてた不動産の分野までデリバティブ商品が誕生しそうな勢いだ。しかしデリバティブは、仕組みが複雑で高倍率のレバレッジを利かせた運用が可能なため、金融商品の分野で巨大損失事故・事件を世界中で引起こしており、リスキーな商品という負のイメージもある。地震デリバティブは、デリバティブの本来の目的であるリスクヘッジ機能を生かすにはうってつけのツールとなり得るので、地震国日本では、定着していくのではないだろうか…

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