マンション価格バブルも崩壊の予兆が
首都圏を中心に新築、中古分譲マンションは、地価上昇、さらには昨年からの建築資材上昇を反映して、上昇し、なかにはバブルの再来を彷彿とさせる物件も見られた。しかし、堅調に推移してきた分譲マンションの価格も、いくつかの指標や、業界の体感温度から見ると潮目の変化を読む段階にきたようだ。
まず日経紙6月19日の記事は、
「マンション市場動向を示す代表指標である国交省の建築着工統計によると首都圏で最近、マンションの着工戸数は、高水準を維持しているのに、民間調査機関の発売戸数が低迷し、データのズレが鮮明になっている。」
“着工戸数-発売戸数=在庫”となるので、在庫が積みあがっているのではと普通は考えるのだが、実はこのズレは、投資ファンドへの1棟売りと先高感で業者が売り渋りしていることから発生しているというのが業界の常識だ。
まずファンドへの1棟売りでもたらされるズレだが、ファンドへの一括売却は、発売戸数にカウントされない。そしてファンドやリートがこれまで投資用に購入するマンションが、旺盛な投資意欲を反映してかなりの数に上っていた。しかし、ここにきてファンドは、レジデンシャルよりオフィス系へ運用重心を移している。なぜなら住居系は、オフィス系に比べ、賃料が期待ほど上昇しにくいからである。その理由として供給過剰感もあるが、景気が好況で企業は潤っても給料は上がらないとか、日本の借地借家法や裁判判例からみて事業系・商業系不動産に比べ、住居についてはドライな資本の論理を貫徹しづらいことなどに起因している。住居系投資不動産の苦戦は、リートのレジデンシャル系投資法人のこのところの冴えない値動きを見ても解るとおりだ。これらのことから、ファンドは、分譲マンションを買い控えだしたのである。
次にマンション業者の売り渋りである。業者は、先で売るほど販売価格の上昇メリットを享受できると皮算用してきたのだが、販売価格の上昇が行き着くところは一般サラリーマンの収入で買えないという限界点に至ることは、自明の理である。
日経紙6月9日の記事を引用すると
「マンションの平均販売価額は首都圏や近畿圏で上昇傾向にある。首都圏では2000年以降、年間平均4000万円で推移していたが、今年4月に4651万円に上昇。平均的サラリーマンが購入できる価格とされる4000万円前後を上回った。」
そしてマンションの契約率に注目すべき変化が出てきている。
「首都圏全体では契約率が昨夏以降、それまでの80%台から70%台へ低下。近畿圏は4月には3年3ヶ月ぶりの50%台となる58.1%に下がった。」
大手不動産の牙城である超高層マンションの初月契約率は、なお90%と販売好調を持続しており、大手総合不動産各社は、強気の構えを崩していない。現に三井、住友、三菱などは資金力や強力な情報パイプラインを背景に用地仕入れをこれまで優位に進めており、2007年の発売戸数を大幅に増やす予定だ。しかし需給関係の緩みと販売価格上昇にエンドユーザーがどのような反応をするのか、この業界も正念場を迎えようとしている。
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