GIS(地理情報システム)の概要と不動産鑑定評価への有用性

■GISとは

GIS(Geographic Information System)は、「地理情報システム」と呼ばれている。空間的な位置を緯度・経度、またはある基準点からの東西・南北方向の距離で明示的に表し、画像や地図とか統計・グラフや表などで表される知識をコンピュータ上で対話的に管理したり組織化する。GISは異なった機能をもったいくつもの構成要素から成っている。GISは、空間データをコンピュータで処理・分析し、その結果を基にして意思決定をするための支援システムだと言ってよい。

わが国では95年1月の阪神・淡路大震災以来、GISが危機管理の手段、さらに災害復興の支援に有用だと認識され、特に国、自治体にその重要性が認められた。今後、震災が発生した場合、被害予測、復旧計画をどのようにすべきかの対策・研究の重要性が震災に関するデータ整理、それに基づいて予測する道具としてGIS構築の緊急性を注目させた。阪神淡路大震災によって、地域的な情報が大変大事だということが見直されてきた中で、地理情報システムという言葉自体も一般的に浸透した。GISで使用される国土情報の基盤整備やGISそのものの導入が現在、欧米に遅れていると言われてきた国内でも急速に進んでいる。

最近は多様な分野でGISが利用されている。行政面では、施設管理、計画策定、支援、防災、環境影響評価、福祉等、また、民間ではマーケティング、顧客管理、さらには固定資産路線価など広範な分野で業務の効率化、高度化を実現している。建設省では、空間データ基盤の効率的な整備を推進し、GISの幅広い利用に資するため、空間データ基盤の整備方策を策定している。GISは、データの入力とデータベースの作成、空間情報の検索や解析、解析や検索結果の表示などの機能からなり、解析された結果を2次元、3次元の画像としてPC上に表示したり、各種統計資料などを作成する。その工程で基礎データ単独の解析だけでは顕在化してこない重要で新しい情報が得られたりする。これらの情報をさらに加工、統合化し、危機管理やマーケティングなど幅広い意思決定の支援ツールとして利用されている。

■GISの構成、機能

GISは、多様な空間データ、加工・分析・表示するエンジン部分のGISソフト並びにカスタマイズされたアプリケーションソフトから構成される。空間データは、地物位置を表す地図データと特性を表す文字や画像、写真などの属性データから構成され、地図から地物の特性や写真を参照し、条件入力して該当する地物の位置を表示させる。GISでは、各種空間データをレイヤー単位で記録、これらを共通ステージである「地図」で管理し、相互の位置関係の把握、任意のデータの検索と表示、データ間の関連性の分析等を行う。具体的には、すべてのデータの表示、必要なデータの抽出・表示、属性を地図上表示、施設や路線の検索及び地図上表示、特定圏内の施設の抽出・集計、地点間の最短経路の抽出、施設毎の色分け地図表示などがある。またGISは、「数値化されたデジタルの地図」であり、各データ(レイヤー)をデジタルで持つため、加工・分析・表示が可能である。具体的には、目的にあった地図の作成、地域情報の分析・評価、目的位置や情報の検索・入手、空間シミュレーション、共通のフィールドでの各種情報の管理と参照、などである。

GISは、空間データを扱う各種技術のコアとして存在し、データベース、GPS、リモートセンシング、CAD、CG、シミュレーションモデルなどとコンピュータ、通信技術との連携での高度利用を本来の目的とする。

■不動産鑑定、不動産コンサルタントにおける有用性

GISの有用性は、取引事例比較法で発揮される。

  • 対象地、公示地、取引事例などのデータを地図上で表示する
  • 上記の属性(所在、地積、価格等のデータベース)をウインドウ表示する
  • 上記の直接リンクした属性データのみでなく特定圏内の施設の抽出、地点間の最短経路の抽出、施設毎の色分け地図表示、人口密度などのデータの参照、相関分析可能
  • 比準表などの機能を搭載したアプリケーションソフトと連動させ上記各要因を自動計算し比準価格査定可能(査定価格の精度は構築されるデータベースの構築レベルとアプリケーションソフトのプログラムロジックに左右される)
  • 上記データをグラフ表示、地図作成など可能
  • 地図上の図形から情報を呼び出すことができる。たとえば、公示地をクリックすると、その属性を参照できたり、国土庁のホームページにジャンプすることも可能
  • 地図に埋め込まれた統計データから必要な集計や解析を行い、表やグラフとして表示可能
  • 地図の表示形式を任意に指定し、たとえば、市区町村の人口密度図のランキングや色を変更することが可能

収益還元法の場合、同様に収益事例不動産の位置、属性データ、収益価格の自動計算、地図作成可能。

不動産コンサルタントに於いて、従来流通コンサルタント、専門機関に限られていた商業地の物件の商圏分析、売上予測などをGISを使用したマッピングシステムの簡単な操作でクライアントに提案できる。

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