不動産投資信託

バブル期は、土地神話のため、多くの不動産会社は、銀行からの借入金によって土地を取得し、所有していた。しかし、バブル経済の崩壊によって、このような不動産事業を行っていた会社は不良資産を、また銀行は不良債権を、それぞれ抱え込むことになってしまった。

そこで、不良債権の担保になっている土地の流動化を促進する目的で、98年6月5日、国会で「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(以下「SPC法」という)が成立し、同年9月1日から施行された。

SPCには、特定の不動産のみを対象にする資産の入れ換えができないという欠点があった。この欠点を解決するために考え出されたのが、米国のREITに似た日本版リートである。 リートとは、REIT=リアル・エステート・インベストメント・トラストの略で、直訳では「不動産に投資することに特化した会社」となる。もともとはアメリカで発達してきた不動産投資信託のことで、つまり投資を中心とする不動産投資法人である。

REITはアメリカにおいて小口投資家に不動産投資への道を開くねらいで60年に導入された。従来、富裕層が保有していた不動産が一口1,000ドル程度から投資が可能となり「不動産の大衆化」とも言われ利回りが高いため人気が出てきた。積極的な不動産マネジメントのプロという印象が強く、通常の不動産会社との違いはREITは課税所得の95%以上を配当として投資家に分配する等の内国歳入法が定める一定基準を満たせば会社レベルでの法人税課税が免除される特典があり、毎年の配当と、売却時の売却益に関しては投資家のレベルで課税される。

わが国では、投資信託の対象が有価証券に限定されていたが、先の国会で証券投資法が改正され、投資信託や98年に解禁になった会社型投資信託の対象に不動産も含まれるようになり、わが国でもリートが可能になった。

リートでは、投資家が出資した資金は、不動産やSPCに投資され、投資家は配当を受け取ることになる。また、会社型投資信託の場合には、投資信託そのものも上場可能であるため、これを売却すれば、キャピタルゲインも得られることになる。

不動産投資信託の上場市場が、来春にも東京証券取引所に誕生する。現在上場基準などの規定を検討しているが、改正投資信託法の施行を待って具体的な内容を決めるものとみられる。

不動産投信市場が誕生すると、不動産から得られる収益を担保とした資産の流動化が図られ、これまでの資産保有者は不動産特有の高価格、換金性困難などの保有リスクを投資家へ分散可能となり、投資家にとっては大量満期を迎えた106兆円郵貯やゼロ金利にあえぐ受け皿商品として、リスクに見合った配当を期待できる投資商品の選択肢が増えることになる。

また上場市場が誕生することにより投資信託の流動性が高まり、市場の普及に追い風となると期待されている。不動産投資信託の誕生を控え、特に、優良物件の会社型投資信託では、投資資金が少なくても参入できるため、日本版リートの普及によって、不動産市況の回復につながることも考えられる。不動産会社など業界関係者は、新しいビジネスチャンスが創出として、さまざまな業態での参入を検討している。

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