不動産流通の再編、統合 / 究極の不動産電子市場予測
下記の内容はインターネットを不動産流通のベースとした試論で、個々の業者のサービスや専門知識などの総合的評価によりユーザーは成約する。中小業者でも大手業者を上回るサービスを提供できる数多くの業者が存在します。
インターネットは、急速に従来の流通の仕組みを根こそぎ激変させている。特に不動産流通をめぐる環境や構造はここ2~3年で大きく変わった。これまでは売り主と買主の中間に不動産物件やそれらに関連する諸情報を独占する中小、大手の業者が介在し、それぞれの専門分業、スミワケで不動産マーケットを構成してきた。マーケットがインターネットを中心に展開される電子市場は、主役がインターネットそのものになるため市場の形態はシンプルで透明になり、不動産情報を掲載するウェブサイトの情報量、機能の充実度で競争する市場に変貌した。
今、不動産流通に起こっているさまざまな変化は、「ウェブサイト」というキーワードですべて解明できる。インターネットは、中小業者を淘汰し大手業者間ではポータルサイトの主導権をめぐり再編が進む。
本コラムは不動産流通に起きている再編、統合の現状とインターネットがもたらす近未来の究極の不動産流通形態を予測してみる。
1、不動産流通電子市場の現状
①中小業者の淘汰進行と大手業者ポータルサイトに統合
当サイトで掲載した中小業者が大手ポータルサイトに統合されるシナリオを引用する。
不動産流通市場で、インターネットによる成約率が急速に増加しており、大手業者を中心に集客のためのウェブサイトが構築されている。従来は、不動産購入を考えているユーザーは、まず不動産業者の店頭を訪れ業者から出された資料を検討し案内を受ける、というのが不動産購入の常道であった。しかし現在は、家庭のパソコンの画面で各業者のウェブサイトを見ながら希望物件を探す。ポータルサイトは不動産購入時の税金、引越しサービス、その他不動産に関するさまざまな情報も豊富に掲載している。
インターネットによる希望不動産探しのパターンは今後の常時接続、高速通信の普及により爆発的に増える。ユーザーサイドに立って不動産情報をインターネットで探すという作業を考えるとまず物件量が多いサイトほどよく、先進的ECサイト構築業者に人間工学、認知工学を駆使して作らせた出来の良いサイトほど希望物件の検索などでストレスを感じさせない。つまりユーザーは、物件量が豊富で機能的で洗練された大手のサイトを選んで希望物件を探す。規模と効率のメリットが最優先する。
中小の不動産業者は殆んど物件検索機能を実装したECサイトを持っていない。見られるレベルのECサイト構築は数千万円のコストが必要だからだ。激変する不動産流通市場に乗り遅れないためにはECサイトの導入が急務だ。このような中小業者のニーズをうけて登場したのが不動産ASP業者である。不動産ASP業者は、機能にもよるが月数万円の使用料で、物件検索機能を実装したECサイトを不動産業者にレンタルする。ソフトやサーバーはASP業者が保有し、不動産業者はウェブが見れるクライアントパソコンだけあればよい。手軽にECサイトを活用できるため不動産ASPによる業者の電子市場参入は可能となる。この時点では、電子不動産市場では業者のECサイトの乱立が起きるが、先ほど触れた規模と効率の最優先利益によりユーザーが中小業者のサイトを淘汰してしまう。
電子市場で淘汰された中小業者に救いの手が差し伸べられる。大手業者のポータルサイトにビルトインされた形で大手業者によるASPサービスを有料で受けるという選択だ。実はいくつかの大手業者は不動産ASPのビジネスモデルをすでに構築、または構築中である。大手業者サイドでみると物件を広く集めさらに集客を高めるために中小業者を再編しビルトインするメリットがある。ユーザーにとって、効率的に希望物件が探せるシンプルな電子市場環境ができあがる。
今、レインズの60万ともいわれる物件公開の動向が注目されている。レインズの公開は中小業者を消滅するとしてレインズ会員に反対が多いが電子市場が大手業者⇔中小業者で再編、統合された環境になるとレインズの情報公開への移行は円滑に行われる。レインズの物件データベースの自サイトへの取り込みは大手業者はすでに視野に入れていると思われる。レインズと大手業者の物件がワンサイトでシームレスに検索できれば国内に巨大な不動産電子市場が誕生する。
②フリーマーケット(CtoC)の成長
インターネットの常時接続、ブロードバンド(広帯域)などの通信インフラ整備で、一般家庭に急速にEC(電子市場)が浸透している。インターネットの接続環境もパソコンからテレビやIモード携帯、Lモード固定電話接続と格段に操作が容易になってきている。不動産流通では売主と買主をインターネットを媒介にして中間排除で直結してしまうため、業者中抜きの個人間取引CtoCを増加させ不動産の個人間取引専用サイトも急増している。
不動産取引の場合、不動産個々の個別性が強いため価格の妥当性も検証し難く、不動産を取り巻く法律も民法、建築基準法、都市計画法など多岐にわたり税制、建築土木などの知識も広範に要求されるためこれまでは専門業者にまかせ売主、買主が個人間で直接取引することはまれであった。不十分な知識からもたらされる将来の紛争などを考えたときは当事者間のみの取引はリスクが多かったからだ。
しかしインターネットの普及で不動産の物件情報ならびに取引に必要なさまざまな情報がネット上に流れ、ネットオークションなどの進行で不動産についても個人が業者抜きで参加しやすい、もしくは業者に支払う高額の手数料を考えると直接取引きを進んで選択する環境となってきている。米国などでは直接取引は全不動産取引量の20%程度に達するといわれている。
直接取引を前提としたウェブサイトは売主による売り物件登録、買主の購入希望条件などを登録させマッチングにより双方がメールなどで交渉を進める。同じサイト内に業者もしくはサイト主宰者によるエスクローサービスとバイヤーズエージェントサービスの提供広告も出されており、売主、買主は必要に応じてこれらのサービス提供を通常の手数料より低額で受けられるシステムとなっている。
現時点でこれらのサイトは、まだ利用者も少なく物件量も僅かで、不動産流通周辺業務のサポートも充分でないが、手数料負担がないメリットの訴求力が大きくユーザーの支持を得て今後、急速に普及すると思われる。
2、究極の近未来不動産流通電子市場
インターネットの急速な普及は、不動産流通を電子市場に移行させウェブサイト間の熾烈な競争の結果、物件量が豊富で機能的で洗練された大手のポータルサイトが生き残る。電子市場の勝ち組み負け組みはユーザーのアクセス数で決まるからだ。中小業者はASPサービスの部品として大手のポータルサイトにビルトインされる。中小業者の電子市場における存在価値は地域限定的賃貸などを除き消失する。レインズのデータベースは大手ポータルサイトと繋がり、ユーザーはシームレスに巨大な統合電子市場で物件検索できる。
また業者抜きフリーマーケット(CtoC)もユーザーの支持を受け成長し、いくつかの個性的で機能的なポータルサイトに収斂する。BtoCの大手業者ポータルサイトとCtoCの業者抜きポータルサイトはやがて融合し、ユーザーは必要に応じて直接取引き、業者仲介取引を選択できる究極の電子市場環境となる。
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