不動産デューデリジェンス業務

建設省は、本年9月1日不動産投資顧問業の登録規定を大臣告示として公布、同日施行した。登録対象は2種類ある。投資についての助言業務のみを行う「一般不動産投資顧問業」と、投資一任業務及び助言業務を行う「総合不動産投資顧問業」となっている。

建設省は10月5日不動産投資顧問業の登録情報公表。総合不動産投資顧問業に登録したのは、住友信託、安田信託、住友不動産投資顧問、森トラストと大和證券SBが共同出資した森トラスト大和不動産投信の4社であるとした(日本経済新聞)。

さらに三菱商事が25日、欧州の有力金融機関であるUBSグループと不動産投資信託業務で提携すると明らかにした。年内にもUBS傘下の資産運用会社であるUBSアセットマネジメントと共同出資で投資顧問会社を設立、1,000億円規模の資金を集めて、ショッピングセンターなど商業施設を中心に投資・運用する。商業施設のテナント料や不動産の売却益で得られる収入を投資家に配当し、年率5~10%の配当を目指す。丸紅もすでに参入しており、「総合不動産投資顧問業」は、大手不動産、商社、信託などを中心に、積極的、迅速に多様な形態で参入している。

●不動産投資市場関連業務

不動産投資市場の基本的構造の各要素は、「資産運用型」の場合、投資家⇒資産運用者(アセットマネージャー)⇒資産管理者(プロパティマネージャー)⇒投資案件となる。この基本要素に各付機関、投資する前に投資物件を調査するデューデリジェンス業者、投資物件の価値、鑑定を行う鑑定業者、資産の保管を行う受託会社などが付加され、これらを総称して不動産投資市場関連業務と呼ぶ。

●不動産業者の基本構造内のビジネスモデル

不動産デューデリジェンス業務、不動産アセットマネジメント業務、不動産プロパティマネジメント業務に活動領域を占めることは勿論可能だが、不動産流通におけるバイヤーズ・エージェント制との関連で不動産デューデリジェンス業務を注目してみる。

●不動産デューデリジェンス業務

国内では当初、金融機関の不良債権のbulksale(一括処理売却)、担保融資対象物件の価格査定を対象として使用された用語であるが、本来は、投資対象物件の精密な調査、経験に基いた精度の高い調査を意味し、もともとは、証券発行時に発行者が提供する情報が証券法の開示基準に適合しているかどうか弁護士が確認する業務であり、M&Aに際しその対象企業を綿密に調査する公認会計士の業務が語源とも言われる。

米国では売買契約後も買主が物件調査を行う一定期間を認め、契約書に「デューデリジェンス期間(due diligence period)」を明記するケースが多い。つまり不動産取得の際に、取得する物件の将来の収支(キャッシュフロー)の正確な予測を行うことを目的とする調査であり、投資するにあたって、投資額に応じた適正なリターンが見込めるかどうかをチェックする作業である。所謂、DCF法の厳密な適用による収益価格の把握並びに案件に応じた膨大、詳細な調査項目があるが基本的調査項目に絞ると下記になる。

  • 登記関係調査
  • テナントや債権者等との権利関係、契約内容に関する調査
  • 建物及びその設備の状況調査
  • アスベスト等有害物質関係調査
  • 物件が周囲の環境に与える影響に関する調査
  • マーケット調査、周辺の開発動向

上記に加え地震大国である日本の場合、seismic report(耐震度報告)が地震保険の金額との関連で重要視される。

不動産業は、今後、物件のシビアな調査能力が要求される。バブル経済崩壊後地価が下落を続け、土地神話が崩壊した。従来はキャピタルゲインがすべてのリスクをカバーしたが、今後は地価下落により建物のウエイトが高まり、建物をはじめとする物的リスク、法的リスク、そしてマーケットの状況変動によるリスクを把握、予測する能力が必要となる。不動産取引で買主の要請により、買主の不動産取引から予測されるリスクを回避させるバイヤーズ・エージェント制度と同様な論理でデューデリジェンス業務に詳細で的確な調査能力、予測能力が求められる。地場密着型で専門性に特化した業者にはビジネスチャンスが増えるだろう。しかし業者単独での業務遂行は無理であり、会計士、弁護士、不動産鑑定士などとの連携、ネットワークが求められる。

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