不動産コラム
不動産仲介の効果的EC(電子商取引)活用法(2)
㈱日本システム評価研究所 不動産鑑定士・(社)不動産証券化協会認定マスター・司法書士
山田 毅 2001.03.16



◆掲載内容(3回連載予定)

1、ECサイトの現状(導入コスト、効果など)(前回掲載)
 ①不動産仲介業のECサービス提供の現状
   ○不動産仲介業者のWebサイトのレベル
○大手業者優位の現状
②ECサイト導入、運用の実状
2、導入パターン(今回掲載)
①自社でECサイト構築の場合
○最近のECサイト開発環境
○不動産ECサイト構築
②ASP業者の活用
  ○ASP業者とは
  ○不動産仲介ASP業者
3、集客力の高いWeb Site の作り方(次回掲載)
4、WebSiteの運用(高速化、セキュリテイなど)(次回掲載)
5、今後の不動産仲介ネットビジネス動向(次回掲載)


2、導入パターン

不動産仲介業者による新規のECサイト導入を想定すると、最初からECサイト構築支援業者に全てアウトソーシングし、システムインテグレータにアプリケーションの作りこみを任せると数千万円のコストになるのが常識だ。とりあえず低予算で構築運用し、その後の営業展開によつてシステムを変更、増強していくというスタンスが現実的である。
ECサイト構築パターンは、ASP業者が登場する前は、自社または専門業者でシステム全てを作るか、楽天などの電子モールに出店するかの選択が殆んどだつた。ECサイトのASPサービスの登場で多様なパターンを利用し導入することが可能な環境になつた。導入パターンをそれぞれ検討してみよう。

①自社でECサイト構築の場合
 ○最近のECサイト開発環境
最近のWebを使用したシステムの構成は、Webサーバーから直接CGIプログラムを呼び出して処理を行う従来のものからWebアプリケーションサーバーを利用してロジックの処理やDBMS(リレーショナル・データ-ベース管理システム)との連携を行う3階層型へ移行しており、ここ1、2年の特徴として構築・運用コストが低く、安定性も高いLinuxをサポートするアプリケーションサーバーの活用が目立つ。
アプリケーションサーバーの事実上の標準プログラミング言語としてJAVAの地位が確立しつつあり、この要因として企業向け規約J2EEを明確にすることで相互運用、互換性、プログラミング・モデルの共通化を実現してきたことがあげられる。マイクロソフトの提唱する次世代インターネット環境「ASP.NET」もC++、VBなどさまざまなプログラミング言語でWebアプリケーションを構築できるようになるためJAVAと次世代WindowsXPに実装されるASP.NETが今後のWebアプリケーションの標準開発プラットホームとして活用されるだろう。

  ○不動産ECサイト構築

  • 最初はなるべくコンパクトに、後からシステムを自由に拡張可能にする
    正直な話、ECサイトを開設してもアクセスがどのくらいあるのか?成約はどれ位見込めるか・・・やつてみなければ解らないため、最初はなるべくコンパクトな形でシステムを構築し、システムの初期投資にかかるコストを抑え事業の拡張にともなって、後からシステムを自由に拡張できるというのが理想的である。
  • また技術進化、社会経済情勢などの変化が速いため3ヶ月以内の短期間で構築する必要がある。
  • ページ構成とサイトの操作性を充分検討しサイトの差別化を図る。
  • ECサイト構築業者を選択する基準として過去に不動産ECサイト構築、サポートなどの実積がある業者に依頼する。Javaなど によりコンポーネント化された不動産仲介モデルのビジネス・ロジック を数多くストックし、さまざまな要求もこれらの部品を迅速に組み合わせることで効率的な開発が可能になり、費用面で低コストを実現できる。
  • 頻繁に発生する物件更新を簡単にユーザーサイドでできるシステムにしておく。

②ASP業者の活用
①の場合、Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバーにルーターなどのネットワーク機器、アプリケーションソフトの作りこみ、不正アクセス防御のファイアウオール等の諸費用で軽く1000万円は超える。将来が不透明な投資としては現実的でない。ECサイトのフロントエンド、バックエンド部分のいずれかをアウトソーシングし後は手作りでコスト削減というやりかたもあるが殆んどの仲介業者は、不慣れでスキルがないため薦められない。
低額な初期費用と月額使用料で自社でECサイ構築したのと同機能のサービスを提供するのが昨春頃から登場してきたASP業者である。まずASP業者を簡単に定義し、不動産仲介に特化したASP業者を紹介する。

  ○ASP業者とは
ASPとはASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と呼ばれる企業が提供するアプリケーション・ソフトの提供サービスで、インターネット技術を活用し、ネットワーク経由でソフトの機能だけを月額払いで顧客企業に提供。サーバーの運用や管理はすべてASPが対応し、ソフトがバージョンアップしてもほとんど追加費用を取らない。ソフトの機能だけを使い、経営環境が変化して別のソフトが必要な場合も、ハードの負担を考えずにすぐに切り替えることができるし、端末はWWWブラウザまたはエミュレータを動かす機能さえあればいいので低スペツクの古いマシンでよく,端末のライフサイクルが永くなる。顧客企業にサーバなどを管理する人員も不要だ。いわばIT資産の所有から利用という発想の転換、情報システムの「賃貸」と言えるサービスである。 

  ○不動産仲介ASP業者
不動産仲介ASP業者の生成過程としては、不動産仲介のECサイト構築を手がけてきたソフト開発業者がストックした構築ノウハウを汎用化し、ASPサービスの提供に乗り出したケースや、自社でECサイト構築運用した経験をもつ大手業者の担当スタッフが独立してASPの業態にしたもの、また大手業者がECサイト構築支援業者と共同でポータルサイトを構築し、当該サイトにビルトインした形態で他の仲介業者にASPサービスを提供するものなどがある。
サービス内容は初期費用、月額使用料に比例して多様となる。
ASPサービスを賃貸に限定して無料で提供している業者もいる。DOREAL NETは、同社のサイトでASPサービスを受ける業者の物件を公開、ユーザーは、パソコンの画面上で間取り、家賃、地域などの条件検索が可能で条件該当物件にヒットすればユーザーが担当業者(ASPサービスを受ける業者)とメールなどでやり取りできる。掲載物件数に制限がありホームページレイアウト、デザインが画一化されているが、活用すれば不動産仲介のeコマースを体験できる。
リアルジョブは、同社のサイト「すまいらんど」でASPサービスを受ける業者の物件を公開、ユーザーは条件検索が可能、希望物件にヒットすれば、担当業者(ASPサービスを受ける業者)へ内覧予約、問い合わせなどのボタンをクリックしメールなどでやり取りできる。さらに賃貸、売買とも契約、解約などの日常業務とメディア掲載の完全連動を実現。(タイプMを除く)
重要事項説明書、契約書の出力、毎月の賃料の出納業務、解約・退去の精算業務などにも対応。更新予定、未収金の状況など把握できる帳票類も備わっている。売買中心の業者にはタイプB、賃貸中心の業者にはタイプCなど、業務内容に合わせて6タイプのサービスが選べる。

2000年11月中旬に不動産情報を提供する Web サイトを開設した不動産インフォメディア株式会社は、三井不動産販売株式会社の 100% 出資による不動産情報を総合的に取り扱う会社であり、インテル㈱、二フティなど6社と提携し不動産流通のポータルサイトを構築した。同社のサイトによると「不動産情報提供サイトの開設は、物件情報にかかわる情報を可能な限り提供するとともに、検索・比較・営業マンや専門家とのネットコミュニケーションなどの住まい選びのプロセスをオールイン・ワンでパッケージすることで、不動産流通の透明性を上げるための機能を提供してまいります。」としている。
当該サイトは、担当営業マンとユーザーの各専用ページ上で双方向での物件の検討ができるなどの斬新な機能を有し、このポータルサイトにASPサービスを受ける業者の物件を公開するなどして一般の不動産流通事業者にアプリケーション機能をASP提供していく。現時点で同社のASP事業はまだ実施されてないため具体像は見えないが、先進的情報通信関連企業と大手不動産会社の提携により新たな不動産流通ビジネスモデルを展開するため不動産流通業界に与えるインパクトは大きい。

以上、不動産仲介ASP業者を紹介した。、ASPサービスは開始されたばかりでなので機能のカスタマイズが困難でユーザーのアクセスログを戦略的に解析する機能がないなど課題も多い。開発環境の進化、整備でこれらの課題も解決していくだろう。
今後、中小業者は、単独では資金、物件量で大手業者に対抗できないためASP業者によりECサービス提供を実現し、さらに有力なポータルサイトに収斂し、業界の再編、統合が進行していくと思われる。
この点については次回に掲載する。

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