中国の不動産市場

1、中国の住宅需要拡大

中国でマンションなど住宅市場が急拡大している。国有企業や政府による住宅の支給制度が00年までに全廃され、金融機関のローン制度を利用して住宅を購入する個人が急増しているためだ。アジア開発銀行中国事務所の湯敏・首席エコノミストは「商業銀行が不動産を担保とするローン制度を整え、積極的な融資に乗り出した影響が大きい」と指摘している。

北京市内の繁華街、東直門に地上27階建て超高級マンション「東方銀座」を建設中の香港系不動産会社北京京港物業発展、来年8月完成予定の同マンションの価格は1平米当り1万3千元(約21万円)。広さは1戸当り80~150平米。1平米だけで平均的な工場従業員の年収に相当するにも関わらず、3月半ばの販売開始からわずか1ヶ月余りで200戸(合計48億円相当)が成約した(日経5/6)。

さらに同誌によると北京市内は空前の住宅ブームに沸き、建設現場が数多くみられるという状況を呈している。上海も同様に住宅購入熱は高く、購入傾向は、ワンルームマンションや低層住宅に人気が集まっているが、国内向けの高級マンションも注目されている。外国人向けと国内向けの区分が廃止されたため、中国人向けの高級マンションの建設が相次いでいる。地元の富裕層をねらい国外からの投資が相次いでいる。

中国国家統計局のデータでは、00年現在、北京の普通商品住宅の平均価格は4,919元/㎡、上海は3,321元/㎡で上海が値ごろ感があるのに対し北京は高級路線が目立つ。中国の住宅の年間販売面積は91年の2,745万平米から01年には6倍強の1億8千4百99万平米へと急拡大。このうち個人による購入は全体の94%を占め、市場規模は4千億元に達した。

2、中国の不動産市場の特性と形成

中国では中国憲法第10条で都市部の土地の所有権は国家に人民公社に由来する農村や都市近郊部の土地所有権は集団所有に属する。1988年法改正で土地使用権を独立の権利として譲渡可能とし、1990年、94年、95年と条例整備、「都市不動産管理法」制定で土地使用権払下げ、転売、国有土地の有償使用制度の具体的規定、徹底が図られた。

土地使用権払下げの期間は、居住用70年、工業用50年、教育、科学技術など公益的用途の用地は50年、商業、レジャー、観光目的40年、その他総合目的50年である。土地使用権者は、利用条件の範囲内で土地使用権の転売、賃貸、抵当目的などは自由である。

「不動産鑑定」5月号、日本不動産研究所 宋杰氏の論文「中国の不動産投資動向と市場の現状」を引用すると、

1992年に、鄧小平氏の南巡談話が発表された後、全国は瞬く間に都市建設と不動産開発ブームに沸き不動産市場は急速な成長期に入った。1993年に過熱した不動産開発の沈静化と正常化を図るため中央政府が金融引締めの通達を出したことで翌年から不動産開発のアクセルも緩み、不動産価格と賃料の急上昇も次第に止まった。95年以降はそれまでのブームで建設された大量の住宅が一挙に放出され、さらに間もなく襲来したアジア金融危機による影響で内外需の低調が続き、不動産市場は低迷、調整期を迎えた。00年に入り政府の「西部大開発キャンペーン」、5輪招致、WTO加盟にむけて不動産市場は久々に活気を取り戻した。

3、日本企業など中国不動産市場参入

①住宅設備関連

昨年12月12日の日経産業、同月14日の日経新聞各紙は大和ハウス、松下電工、サンウエーブ工業、YKK、INAXなどの住宅関連企業の上海など中国進出を報じている。中国の上海は巨大な金融センターを作り、ハイテク企業が集積する。周辺にはその数はこの5~6年で2,000棟といわれる超高層ビルや住宅を林立させている。上海では空前の住宅ブームが沸騰、分譲マンションや連棟式住宅は構造躯体のみのスケルトン売りで内装材を含めたインテリア市場が拡大、99年度約1兆8千億円に達した中国の住宅内装市場はその後も成長を続けている。住宅購入者は室内部分を内装会社に発注する。上海には約16,000社の内装工事会社があるが零細企業が多く欠陥工事も目立つ。大和ハウスは市場の成長性に目をつけ中国・上海に合弁会社を設立し、マンションなど住宅の内装工事を始めた。03年度に約3億円の売上高を見込む。サンウェーブ工業は代理店の星明とショールームを上海に開店。中高級キッチンを売り込み中国の富裕層にブランドイメージの早期浸透に力を注ぐ。TOTOはすでに上海、大連で水栓金具を生産しているが04年までに新に上海に衛生陶器の新工場を完成する予定。年間50万個の衛生陶器を生産する。都市部を中心にトイレの水洗化が進んでいるからだ。

②森ビル、丸紅の進出

森ビルの中国プロジェクトは、鄧小平氏の南巡談話が発表され、改革開放路線が加速し海外投資の誘致に積極化し始めた第二次中国投資ブームが起こり始めた93年から着手された。まず大連市にフォレストオーバーシーズ(森ビルの100%子会社)が中核で進めている「森茂大厦」(中国大連市西崗市、地上24階地下2階、延床面積46,400平方メートル)が96年10月末に竣工、現在、銀行、商社、保険、商業、メーカー、エアライン等約100社のテナントが入居している。次いで上海市浦東新区にHSBCタワー(地上46階地下4階)を98年竣工、現在の入居率98%以上を達成している。人冶国家とよばれ地縁、血縁が優先され用地など有力情報は華僑資本が握るなか健闘している。

丸紅が上海で開発した中国人向けのタウンハウス「桜園」も第1期228戸、第2期284戸はほぼ完売。購入層は上海人・台湾人・香港人の事業経営者、外資系企業の高級管理職が中心だが日本人の購入者もいる。

③今後の動向

再び宋杰氏の論文「中国の不動産投資動向と市場の現状」を引用すると、

中国の不動産市場に参入した外資は、内資(国内、香港、マカオ、台湾を含む)との棲み分けが明確で、縁故のある華僑を除き殆んどの外資は自ら直接に開発プロジェクトを持たず主に仲介、投資顧問、金融サービス資産管理などサービス部門を担っている。不動産は個別性が強く、投資すると長期化しなかなか撤退できない、カントリーリスクや為替リスクを考えると開発事業に外資が携わるより不動産金融サービス、投資顧問などのサービス分野がビジネスの主なフィールドになると思われる。

中央政府と地方政府の利害調整、不動産評価制度の整備(特に事例の整備や評価のOA化など)などが外資の本格的事業展開の課題とされている。中低所得者層の住宅取得支援策が今後、促進され未成熟な中古市場が旺盛なマンション需要と関連して育成されれば巨大な住宅市場が出現する可能性を秘めている。

■関連記事
  胡新体制のもと中国進出とリスク
      

おすすめ記事