マーケットプレイス(巨大電子市場)の動向 / BtoB、電子政府誕生、公共事業発注システムの変換など

●巨大電子市場の胎動

インターネットの普及にともない世界中の企業や個人がインターネット網を介してリアルタイムで繋がり、さらにインターネットは、ビジネスの手段として活用領域が劇的に広がった。米国では90年代中期からその情報網を活用したモノやサービスの交換システムが稼動開始した。インターネットを介して行われる電子商取引ECはBtoC(企業対消費者)BtoB(企業対企業)に分類される。現時点で、BtoCに比べBtoBはあまり注目されてないが、その規模、経済的効果よりみてBtoBはBtoCを超える。電子商取引の市場規模の現状と将来予測については通産省とアンダーセン・コンサルティングによる市場規模推計調査がある。これによると日本のBtoC市場規模は99年の1,900億から03年には17倍の3.2兆円に、同様にBtoBは12兆円から6倍の68兆円へ拡大する予測である。この予測値はiモードのマーケットを入れてなくソフトウェアの生産額を加えてないので実際にはまだ巨大化するという見解がある。国内に於いてBtoBが本格的実用段階として立ち上がってきたのはここ1~2年のことであり、後述するがこれが霞ヶ関WANが進化した電子政府によるeガバメントと融合したときは、社会、経済システムを大変革するだろう

●マーケットプレイス(巨大電子市場)とは

マーケットプレイスとは、簡単に定義すると複数の「売り手と複数の買い手が集まり、インターネットを介して商品を売買する場である。」となる。2000年問題をクリアし、次は企業間取引を業務改善と目的設定した企業が増加し、インターネットを使い企業間(BtoB)の商取引をシステム化する動きがメーカー、流通、商社など多様な業種に広がっており、特にインターネットを介した調達、販売分野で推進されている。メーカーの場合、部材メーカーから部材を調達し、完成品を流通業者等に販売する。流通業者はメーカーから商品を調達し、小売店に販売する。企業間で売りたし、買いたし情報をインターネットによりシームレスに結合することにより、企業の仕組み自体を変革してしまうパワーを持つ。さらに買い手と売り手のマッチングの場の提供機能からVAS(Value Added Service)モデルへと進化している。VASモデルは、ネット取引機能にオークション機能、広告支援機能、eマーケットプレイスを効果的に利用するためのコンサルティング機能などの多様な機能を付加したものでeマーケットプレイスの求心力を高めている。

●マーケットプレイス構築メリット

部品調達をインターネットで行えば共同発注することで取引先を集約したり発注を大口化して調達価格を引き下げられるのみでなく商品照会、受発注、伝票処理などの手作業部分がシステム化され人件費削減になる。売り手も販売費用の低下をもたらし効率的在庫管理が可能となる。また運営企業は取引高の一定割合を手数料として受領し、ほかに広告料などの収入が見込める。

●マーケットプレイスの構築

システム構築前に参加する業界、複数の企業間で具体的業務を想定し仕様を充分検討して構築することが重要である。現実には複数の売り手、複数の買い手で共同構築するか、売買当事者以外の第三者ベンチャーが構築することが多い。複数の買い手主導の構築例としては大手上位ゼネコン5社による「コンストラクション・イーシー・ドットコム」などがある。異業種参入の第三者構築例としては、伊藤忠商事、三井物産、オリックス、東京海上によるマッチングサイト「いい在庫ドットコム」などがある。

システム構築は余剰在庫を販売したり、予定外の商品を調達するといったスポット的売買程度の機能であれば売主の売りたし情報、買主の買いたし情報を電子掲示板に掲載すれば済むがカタログデータベースを実装し、売買対象商品の交換後、価格交渉や受発注までサポートさせるには販売支援、調達支援の各機能を統合したパッケージソフトなどでシステム構築が必要となる。

調達機能は買いたし情報の登録から発注までの商談をサポートする。当該企業が調達する商品仕様、希望価格登録後、発注先決定には入札、逆オークションの2パターンがある。売り手向け販売支援機能も同様に売りたし情報に対する見積もり依頼や発注を受け取り、オークション開催機能を有する。

●XML製品

企業間で電子商取り引きをする場合、各企業で異なるシステムをどう繋ぐかが重要な課題となる。企業間取引で各企業のOSやアプリケーションの違いからくる異なる情報システムを連携させ繋ぎの役割をさせるためXML製品の使用が増加している。XMLベースのBtoBECシステムの基本機能は、

  • 社内の既存システムからデータを取り出しXML形式に変換して取引先に送信する
  • 取り行き先から受け取ったXMLデータを社内システム向けに変換して受け渡す

である。

●マーケットプレイスを支える機能

SCM、CRM、ERPの各機能が既にある環境が前提となり、さらにBtoBECは大容量のデータが流れるためIDC活用が必須となる。IDCの最大のメリットは、サーバを安全に運用するための環境や設備、運用などをアウトソースできる点にある。インターネットビジネスを展開するにはインターネットサーバを常に安定した状態で稼動させなければならない。またネット取引は、不特定多数の消費者や生産者を結びつける反面、取引相手と非対面であることからくる不安がある。このハードルを越えないと本格的な普及は期待できないため、システム整備を急務とされている機能として以下がある。

  • 仲裁機能
  • 非対面のリスクを補完するため契約不履行等が発生した場合の仲裁システムが必要

  • 与信決済機能
  • 電子商取引の最大課題は成約後の代金回収である。米国の場合、マーケットプレイス構築ベンチャーはこの課題をクリアできず市場参入者の不安を解消できず失敗しているケースが多い。前記の伊藤忠商事、三井物産、オリックス、東京海上によるマッチングサイト「いい在庫ドットコム」は、オリックスによる立替払いサービスの提供で解決している。

  • 格付け機能
  • 過去の支払い状況、不良品発生の有無などによる格付け

  • 保険機能

●公共事業発注システムの変換

現時点で建設業についてはWebで入札可能となっている。将来的には世界中の企業がインターネットで日本の公共事業に参入可能となることが予測されている。10年までに同システムを地方公共団体の公共工事にも導入する方針である。地方公共団体の公共工事も電子市場型(eマーケット型)の入札に変動していく。

●電子政府の誕生

電子政府の構築に向け霞ヶ関WANが最終的詰めの作業を現在進行させている。電子政府が誕生すると電子署名、暗号技術などのセキュリティを高め公文書のデジタル発行が可能となる。03年までには全国3,200の自冶体がネットワークで結ばれる予定。行政は大幅に効率化し行政、政治の意識改革が進行する。

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