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リート・ファンドバブルの行方?
㈱日本システム評価研究所 不動産鑑定士・司法書士 山田 毅 2007・03・12
都心商業地の過熱感が加速し、ついにキャップレート2%の取引まで出てきた。そういえば80年代後半のバブルのときも都心商業地は、キャップレート1~2%だったような・・・。あのときの悪夢がフラッシュバックしてきそうな過熱感が市場に漂い始めた。もちろん先のバブルの爪痕が人々の心から完全に消え去ったわけでない。「いまバブルではないのか?」と自問自答をしているのは他ならぬ市場の参加プレイヤーだというアンケート調査もあるそうだ。自問自答の結果、「先のバブルの時と比べリスクとリターンの最適化がMPT(モダンポートフォリオ理論)など金融工学で進んだし、リートをはじめ市場がある程度効率的になっており、なによりもグローバルスタンダードの収益還元という評価ツールで不動産価値が合理的に計量され取引されてるのでバブルは発生しようがないよ。。」という業界が用意した安心ロジックに落ち着くようだが、果たしてそうなのだろうか?
「バブル論争」の項で詳述するが、金融商品取引法の本年中の施行や金融庁による国際的なリスク管理規制「バーゼルⅡ」の金融機関への適用、また外資系信託2行に対する行政処分を契機に始まった信託銀行の受託基準の厳格化、さらにはファンド課税の見直し(プライベートファンドのエクイティ出資に欠かせない「匿名組合」のすべての源泉徴収等)などここにきて拡大を続けてきたリートやプライベートファンドの今後の懸念要因が垣間見えてきた。このような制度的問題に加え、いままで供給過剰が指摘されてきた住居系投資不動産の需給悪化が諸機関の調査で明らかになってきている。
本コラムでは「最近の不動産投資市場はバブルなのか?」の基本的検証とともに今後の不動産投資市場の行方を占ってみたい。
1、最近のリート、プライベートファンドの動向
不動産投資の対象となる収益不動産は70~80兆円の市場規模といわれているがその3分の1の約25兆円が証券化されていると推計されている。プライベートファンドとJーREITリートを合計した運用資産は06年12月末で11兆5千90億円、05年末より48%増えた。
拡大するファンド勢がもたらしたといってもいい東京都心部の地価高騰は、瞬く間に名古屋、大阪、福岡、札幌など全国政令都市に波及したが、その対象エリアはさらに地方拡散し、一部は人口30万人規模程度の地方中核都市の都心にまで及んでいる。東京都心部の地価高騰と利回り低下さらに優良物件の枯渇化を嫌気し、地方分散を進めているのが最近の動きだ。
住信基礎研究所の調査でもプライベートファンドの投資エリアは06年12月末時点で前回14%の都内が8%に縮小し、関西と地方都市の合計が全体の55%となり投資エリアの分散化が明確になってきている。
また投資対象もオフイスからレジデンシャル、さらに物流、ホテル、シニア住宅へと広範になっているのが最近のリート、プライベートファンドの傾向だが、これは優良物件の取得難を反映して単なるスペースの賃貸借から複雑な事業オペレーションを付加させた難アセットへの展開を進めているという事情もある。
それでは投資用不動産市場をオフイス系とレジデンシャル系に分けてマーケットの現状を見てみよう。
2、オフイス系不動産投資
オフイス系投資不動産を巡る市場環境は、エリアと物件により濃淡はあるが、好転してきている。業績回復などで採用増による幅広い業種の企業のオフイス拡張意欲が高まり、鉄鋼など製造業に続き銀行、証券会社なども昨春から1等地で増床し始めた。オフイスに対する企業意識が変化しており良好なオフイスを確保することが優秀な人材確保につながり、社員の生産性を高めるとして企業の重要戦略としての優先順位が高まっている。
反面、東京都内ではオフイスビルの供給が減少傾向にある。「森トラストの調査によれば2000-04の都内の年間平均供給量は124万㎡だったが05-09年では95万㎡と23%減になる。」(日経06.11.04)。また(財)日本不動産研究所と三鬼商事(株)との共同研究会である、オフィス市場動向研究会の調査でも今後、需給はタイトに推移するとみている。賃料もエリアと物件により濃淡はあるが上昇している。三鬼商事がまとめた2月末の東京都心5区のオフイス平均賃料は3.3㎡当たり19、935円で前年同月比で1897円(10.5%)上昇した。
需給改善が空室率を低下させ、2007年問題も吸収しかねない状況だが、このような地合を反映して特に大型ビルの賃料は新規、継続ともに上昇している。オフイスビル賃料の先高期待でリートやファンドの物件購入の際のキャップレートが低下し、さらに物件価格が高騰するという構図になってきている。(この構図の過剰な期待感と連動したキャップレート低下が「ミニバブル」と指摘されている所以だがこの点は「バブル論争」の項で詳述する。)
2000年3月導入された定借制度の市場効果も見逃せない。定借は、2年更新の従来契約に比べ5年更新が多く、中途解約のペナルティ条項の付加で優良テナントを引き止める効果も上がり、賃料減額排除と相俟ってビルの資産価値を表面上、上昇させている。日本経済新聞によるとすでに三菱地所は東京・丸の内で半数以上、森トラストも50%以上のテナントで活用しているが、定借導入はファンドやリートのキャッシュフローを安定させるのでさらに証券化を加速させている。
3、住居系不動産投資
分譲マンションは、用地仕入れ値、建築資材の高騰で先高感がでており、いまのところ分譲業者は、需要を計りながら売り惜しみするなど分譲マンション市況は概ね好調だが、賃貸マンション・アパートはオフイス系の回復基調に比べると芳しくない。これまでの供給過剰のツケが徐々に表面化しており、賃貸契約の成約率が低下しているほか、東京をはじめ全国的にみても賃料は横ばいからやや値下がり傾向がみられだした。
また分譲マンションとの競合が激化しており金利上昇局面とはいえまだ住宅ローン金利は低水準なため、消費税引き上げ前の駆け込み需要と相俟ってマンション購入希望者は依然として多く、賃貸離れの原因となっている。皮肉なことに低金利は賃貸住宅の供給過剰を再生産し、さらなる需給悪化を招いている。
不動産情報サービスのアットホームが公表した1月の賃貸物件市場動向によると、首都圏の居住用賃貸物件(マンション・アパート)の成約数は前年同月比10・5%減の8207件と4カ月連続で前年実績を割り込んだ。2006年の1~4月も連続で減少しており、このところさえない動きが続いており首都圏全体の減少傾向に歯止めがかからない。
MRDの平成19年2月の賃貸市場動向調査が首都圏、中京圏、近畿圏、福岡圏について会員不動産会社3000社を対象に実施された。少子化による学生数の減少や最近の貸家着工戸数の増加傾向を背景に市場の需給状態は供給過剰感の強い市況となっている。調査対象の4都市圏でも単身者用・ファミリー用ともに、物件の需給状態は「供給過多」の回答が多く、入居者側は豊富な物件から希望する条件で選択できるのに貸主側は、築年数や設備など周辺競合物件との関係によっては一部減額要求に応じるのが常態化しつつある。
住居系収益物件経営者も経営環境の先行きには悲観的だ。「首都圏で賃貸住宅経営者向け情報誌を発行するオーナーズ・スタイルが昨年暮れに行った賃貸経営者向けアンケートによると今後の経営について81%が『厳しくなる』との見通しを示した。『厳しくならない』『どちらかといえば厳しくならない』との回答は合計4%にとどまった。同社は家賃が減って収入が減る一方、地価が上がって固定資産税が増えると考えられ、賃貸住宅経営者の先行きの厳しさに結びついていると分析した。」(日経産業 07.03.13)
需給悪化が顕在化してきた賃貸住宅であるが、いまなお東京都をはじめ全国政令都市の事業集積地周辺部など利便性が高い立地で稼働中の賃貸マンション並びにその用地で投資ロットが大きいものはファンド等による争奪戦が繰り広げられている。また小ロットの賃貸マンション、アパートならびにこれらの用地も地場の収益物件供給業者などにより個人投資家等向け投資用不動産として設えられており、限定的なエリアではあるが価格上昇と利回り低下を続けている。
ファンド勢の組み入れ物件のなかでも都心部にあって市場細分化戦略で顧客を絞り込んだ高級賃貸マンション等は、競争力が高く、空室率も低い。つまり単純な都心1極集中モデルでは用地難や局所的供給過多を克服できないため、三井不動産のように大型複合開発に賃貸マンションを組み込んだり、サービスアパートメント事業のような高級化路線で差別化するか、都心の既存賃貸マンションストック等のリノベーション、コンバージョンによる付加価値付与後、再デビューといった手法が今後の方向性となるのではないだろうか。
一方、需要とミスマッチで家賃に割高感があるものは、利便性・設備等が劣る多くの賃貸住宅とともに空室率が高く、家賃が低下しており、いずれ淘汰されていくと思われる。
以上、不動産投資市場の現状を概観したので次は本コラムの本題に入る。
4、「いまバブル?」論争
バブル論争を展開する前に日本国内の現在の不動産投資環境を注意深く観察するとバブル崩壊から市場回復期にかけて登場したハゲタカと呼ばれた外資系ファンドによる短期運用のハイリスク・ハイリターン型から、国内市場の安定・熟成化に対応した内外プレイヤーによる中長期の安定運用型ファンドに様変わりしている。その結果、証券化が急速に普及し、証券投資などに駆使されるファイナンス理論が伝統的不動産投資手法に融合して不動産の金融商品化が進んだ。
また国内にリートという巨大な受け皿が構築され、国内投資家も中長期の安定利回りを期待する年金などの機関投資家が新たなプレイヤーとして参入し、日本の不動産投資市場も欧米並みのリーズナブルなリスクプレミアムを許容できる範囲に構造変化の途上であることが解る。
先のバブルとの比較で主な相違点を下表にまとめた。
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1980年代後半のバブル期 |
今回のミニバブル |
| マーケット特性 |
不動産価格=土地価格が主体。投機的要素を含んだ取引価格がマーケットを先導し、不動産の収益性を超えた土地価格が支配し、過熱した。
取引事例比較法が重視され、収益還元法は機能しなかった。 |
土地+建物の複合不動産価格で建物のバリューが重視される。投資物件のマーケット価格はキャッシュフロー、利回りを根拠とする収益価格(DCF法)で決定されている。収益用不動産は金融商品化し、金利やGDP、企業業績、勤労者所得などとリンクして価格決定されていく。
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| 参入プレイヤー |
合理的な根拠がない過熱で全国的な地価上昇が発生し、個人も法人もキャピタルゲイン狙いで土地を買い漁った。
投資理論や指標が機能しない、集団陶酔と熱狂で乗り遅れまいと企業、個人が多数参入した。
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地価上昇地点が全国的に見て限定され、投資適格物件も限定された一部のエリアに偏在している。
参入プレイヤーが個人投資家へ裾野が広がっているが、主体は、不動産&金融のプロである。
J-REITのようにかなりの程度情報開示するのでマーケットが成熟化していく。
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| 時代背景 |
高度経済成長神話、土地神話が支配的風潮 |
人口減少、少子高齢化社会の到来、低経済成長 |
| 筆者コラム 「不動産投資バブルの検証」(06.01.03)から引用 |
①バブルでないとする否定論
昨年1月のコラムでバブルでないとする否定論の論拠としてイールドギャップや不良債権処理の進展、国内の景気回復を反映した不動産基本利回りの低下さらにリスクプレミアムの国際的平準化傾向などを書いた。
>>>不動産投資バブルの検証
次回コラムで前回コラムと別の視点、例えばリート・ファンドのような不動産集合体としてポートフォリオ構築した場合のリスク分散効果(平均・分散アプローチ)を享受する価格と一般実物不動産取り引きの個体としての不動産価格との間には理論的に個別的リスクの低下分の余剰価値があって当然とする「バブルでない論」、など最近の諸論拠を紹介し、バブルであるとする肯定論まで言及予定。
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