郊外路線商業地(郊外ロードサイド)の地価研究(3) / ロードサイド店舗の業種と店舗展開
4、ガソリンスタンド
■業界特性・動向
1996年4月にガソリンの輸入が自由化、1998年にはセルフ給油解禁と相次ぐ規制緩和によりGS業界は過当競争になっている。ガソリンスタンドの数は、1994年に全国で6万超あったのをピークに転廃業が増加し、05年度末で47,600に減少した。
業界内では、「給油所の数は現在の半分が適正」という指摘もある。減少の要因として長期に亘る安値乱売のツケで採算が悪化し、倒産、廃業が増加したことが挙げられる。また老朽化した施設のGSは、採算からみて設備更新への意欲が乏しく転廃業するケースが増えている。
全国石油協会によるGSの経営実態調査によると約4割が赤字となっている。今後の経営環境は、少子高齢化、人口減少による乗用車保有台数の減少やハイブリッド車や軽コンパクトカーの販売好調に見られるように燃費の向上を各メーカーが至上命題にしているため、ガソリン需要量は鈍化していくものと予測され、厳しい。
近年、増加しているのがセルフ式GSで全体の1割に達し、ガソリンの平均販売量もフルサービス店より多い。フルサービスのGSは、約10名の従業員を必要とするが、セルフ式GSでは5~6名で済むため従業員対策とコスト削減を実現できるが、その経営環境は厳しい。粗利益が低いので人件費、諸経費を引くと利益がでず、タイヤ、バッテリー、洗車など油外収入がセルフは非対面ビジネスなので期待できないからだ。
ガソリンの販売は元売→特約店→GSという経路が多いが、元売系列に属さない安価なノーブランドガソリンのGSも参入、さらに多くの元売が子会社を経由しての販売拡大を狙っている。経営に行き詰ったGSや販売量が多いセルフ式を新設して盛んにエンド小売に参入している。その背景は一部特約店の安値販売の阻止にある。
■店舗立地戦略
1994年以降、GSの数は減少傾向にあるが、特に都心部のGSがマンションやオフィスビルに転用されその姿を急速に消している。一方、郊外ロードサイドのGSでも近年、ファミリーレストランやコンビ二などに転用されているケースも目立ち始めた。新規出店の多くは元売系列のセルフスタンドである。
セルフスタンドは郊外ロードサイドのなかでより好立地に進出し、大型なのが特徴だ。つまり商圏内顧客の吸引率を測る「ハフモデル分析(顧客の住所から近く、かつ敷地面積などの魅力度の大きな店舗ほど顧客を呼び寄せる力が大きい)」やGS敷地内への車のOUT/INの容易性からみて敷地規模が大きい大型スタンドほど競合での優位性は高くなるためである。またTG(トラフィック・ジェネレーター)となる郊外ショッピングセンターの敷地内もしくは近辺など車交通が大量に発生する場所ほど好立地となる。
郊外ロードサイドの大型GSの方向性として広大なパーキングエリアを活用し、コンビ二、ファーストフード、持ち帰り弁当店を併設したものから郊外SC内にビルトインされたものまで他業種との複合化が志向され始めている。
従来モデルのフルサービススタンドは、非対面のセルフスタンドにできないサービス、つまり商圏エリアの地域特性に応じた灯油の販売や洗車から車検や点検、修理など整備士の資格を持ったスタッフを置いて、きめ細かい油外販売に対応しなければ生き残れないが、その販売戦略としてポイントカードシステムの活用が進んでおり、給油のみの会員とメンテナンスも行う会員を区分し、優良顧客の囲い込みを目指している。
- 立地要件
郊外ロードサイド主体。TG付近でOUT/INが容易な好立地が望ましい。
- 施設規模・敷地規模
セルフ式の増加で大型化している。従来は敷地規模1,200~3,000㎡が中心だったがコンビ二併設など複合化した大型3,000㎡以上も増えている。
5、外食
■業界特性・動向
外食産業は、女性の社会進出、余暇の増大、経済成長といった時代変化により急成長を遂げた。特に昭和45年頃からファストフードやファミリーレストランが登場、チェーン形式を主体に展開し、業態の発展に寄与した。しかし長期に亘るデフレ不況による客単価の低下で既存店売上高の前年割れが続いたが、05年は、景気回復→個人消費回復を受けやや明るさが見えた年となった。
日経MJが実施した「飲食業調査」では、店舗売上高がプラスに転じる外食チェーンが増えるなど薄日がさしてきた。ファーストフード、ファミリーレストランなどの一部に客単価の回復が見られ、03年、04年の鶏インフルエンザなどの問題の一段落も回復要因となった。
06年の出店計画ではファミリーレストランが低調なのに比べ居酒屋、中食、宅配は拡大基調で、業界全体でもM&Aで事業拡大や新業態に進出する動きも活発になっている。だが企業収益環境は依然として厳しい。パートやアルバイトの時給が上昇し、人件費アップとともにパート・アルバイトの確保が困難になっており、原油高が物流や光熱費のコスト上昇となってきた。また店舗用の物件不足や賃料の上昇が都心と郊外ロードサイドで同時に起こっており、新規出店のネックとなってきている。
長期的に今後の外食業界を展望すると成長が減速すると見られている。市場規模は1996年をピークに減少し、緩やかな下降線を描いている。これは、晩婚化や少子化による「外食するファミリー層の崩壊」と食品スーパーやコンビニエンスストアなどで惣菜、弁当を買う中食人口が増加しているからだが、今後もこの傾向は続くと予測される。
■店舗立地戦略
郊外ロードサイドと都心部で並行して店舗展開してきた業態であるが、飲食業に対する日経MJ調査で「今後の重点的出店立地」を聞いたところ、駅前を挙げる企業が49.6%で最も多かった。大型SCの郊外出店規制強化と今後の人口の都心回帰で都心立地での店舗開発が各社の重点施策となっている。
一方、都心部での地価や家賃が上昇しているため、従来規模を小型化した小型店の開発を始めている。例えば「すかいらーくは店内席数を標準店の15~30%に抑えたSガストやSバーミアンを強化し、メニューも比較的手間のかからないものに絞っており、都心部で経費を抑えた効率的な店舗運営を模索する」(日経MJ)。
都心型のファミリーレストラン(FR)では従来の4人席主体、店舗面積300㎡程度だったものをカウンターを多くして50~100㎡に狭め、調理時間を短縮して顧客回転率を高め、メニューを絞り込むなど高家賃対策を進めている。しかし食品スーパーやコンビ二の都心出店で立地や物件規模が重なるため、出店が困難となってきている。
一方、郊外ロードサイドへの出店を加速する企業もある。ドトールコーヒーショップはセルフ式のガソリンスタンドに併設する形での出店が全店舗の10%、100店を超えた。席数は20~30で給油のついでを狙っている。スターバックコーヒーも07年3月期にドライブスルー併設店を3倍の30店に増やす。出店立地は郊外ロードサイドで出勤前や夜の眠気覚ましとしての利用客に加え、週末、おやつの時間は子供連れも多い。スターバックコーヒーがベーカリーチェーンのアンデルセングループと組んだファーストフード型店の店舗面積は平均的同社店舗の1.5倍の220㎡で出店投資額は6,000~7,000万円となっている。
- 出店戦略
郊外ロードサイドと都心集中(ビルイン型)が並存してきたが今後は都心での小型店が増加。
- 立地要件
好立地の郊外ロードサイドは物件取得が困難となっている。都心の繁華街や駅ビルのビルイン型を志向。
- 施設規模・敷地規模
業態により規模はばらつく。ファミリーレストランでは、郊外型で店舗面積300~500㎡、敷地規模1,000~1,700㎡。都心型は小型化、ビルインが主体。店舗面積50~100㎡
6、ホームセンター(HC)
■業界特性・動向
ホームセンターは、1970年代より郊外を中心に店舗展開を開始した業態である。総合スーパーでは不十分だった園芸、DIYなど生活関連商品に特化し、HC大手は木材などの建築資材、農機具、肥料も扱い、近年の日曜大工やリフォームブームに乗って急速に成長した。売り上げによる大手7社としてカインズ、コーナン商事、コメリ、ケーヨー、ナフコ、ホーマック、カーマがあるが、ドラッグストアや百円ショップの出店拡大で、異業種間競争が熾烈となっており、その対抗上、総花的品揃えでなく、原点回帰で工具や資材など専門的商品やDIY用品、ペット園芸用品などの構成比率を高めており、リフォーム事業には特に傾注し専門の相談員を増やしている。
■店舗立地戦略
HCの店舗展開は、郊外ロードサイドに集中している。取り扱い商品の性格上、車での来店が多いため、広い駐車場が必要だからだ。ワンフロアーの郊外店舗が主体で低コスト運営が可能になっている。改正まちづくり法により、大規模店の出店が困難になるため限られた面積で利益を上げられる売り場づくりを進めており、売り場面積1万㎡前後の食品スーパーと組み合わせたワンストップ型複合店「スーパーセンター」から1,000弱~2,000㎡程度の小型店舗でも出店し、大規模店舗間の小商圏を埋めていく戦略を取っている。
大手9社の06年度出店予定は計140店舗と05年度見込みに比べ10店舗ほど減少した。業界全体の店舗数も昨年、初めてマイナスに転じた。HCの出店減速の理由として郊外ロードサイドに出店してきた初期店舗が建替え時期を迎えており、老朽店舗の整理に追われて新規出店が減少しているのと、大型店はまとまった用地が改正まちづくり法の影響で減少しており都市部を狙った小型店の展開も賃料など高コストの壁で店舗展開が思うように進んでいない点がある。
- 出店戦略
郊外ロードサイドが主体。
- 立地要件
好立地の郊外ロードサイドは物件取得が困難となっている。小型店舗で小商圏もカバーしていく。
- 施設規模・敷地規模
売り場面積1,500~15,000㎡、敷地規模1万ー4万㎡程度。ワンストップ型複合店で売り場面積1万㎡前後。小型店舗1,000弱~2,000㎡。
7、ドラッグストア
■業界特性・動向
ドラッグストアは、個人経営の薬局や化粧品店、日用雑貨店に代わって医薬品や健康食品、化粧品を扱い、消費者の健康・美容志向と低価格志向の追い風で急成長を遂げてきた業態である。2010年には市場規模約3兆円と推計されており、02年の経済産業省調査の商業統計によるとドラッグストアは34.4%増の1万5千店舗と高い伸びを示している。その最大の成長要因は「健康と美」をキーワードに医薬品だけでなく、健康食品や化粧品、理美容品を豊富に品揃えしたことである。
しかし、ここにきて大手ドラッグストアの成長も減速し始めている。大手5社の既存店売り上げが伸び悩んでおり、2、3月とも前年実績を下回った。その要因は過剰出店で、日用品や化粧品を安売りして集客する手法が通用しなくなったからだ。今後は利幅の取れる健康食品やサプリメントを商品構成の軸にした店舗モデルを構築する。
日本チェーンドラッグストア協会によると04年度で全国のドラッグストアの売り上げに占める医薬品比率は約30%、日用品や家庭雑貨、一般食品などが約40%を占めるが、医薬品販売も薬事法改正による規制緩和でコンビ二が大衆薬品の取り扱いを始めると、同業間の競争に加え、コンビ二とも競合することになる。コンビ二と対抗するため薬剤師や栄養士を店舗に配置し、専門性を高めていく。
■店舗立地戦略
ドラッグストアの店舗は、郊外ロードサイドをはじめ、駅ビルのなか、小規模SCなどいろんなところに出店している。売り場面積200~1,000㎡以上が主力。最大手のマツモトキヨシ社長松本南海雄氏は「医療機関の処方箋をもとに薬局で調剤する医薬分業の比率は50%を超えた。その中心はまだ医療機関の近隣に店を構える門前薬局だが、今後は住宅街や駅前に立地し消費者に身近なドラッグストアでの調剤が増えるだろう」と語っているが、コンビ二と似た身近さが求められるので、先のコラムで書いたコンビ二の店舗立地戦略と同様の視点から出店が進むと思われる。
日本経済新聞によると大手10社の06年度(今年3月以降の決算期)の新規出店は直営店が490店で今年度を2割上回る見通し。FC店を加えると、出店総数は初めて600店を超える。しかし都市部では飽和感があり、今後の展開が注目される。
- 出店戦略
郊外並びに都心(駅ビル内等)
- 立地要件
- 店舗規模・敷地規模
郊外型:売り場面積300~1,500㎡、敷地規模1,500~3,000㎡程度/都心型:売り場面積150㎡
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