不動産コラム
無道路地の価格
不動産鑑定士・(社)不動産証券化協会認定マスター・司法書士
山田 毅

無道路地の評価については、相続税の財産評価基本通達、固定資産評価基準など税務上の評価手法があるが、その性格上、大量の画地数を短時間で処理しなければならないため、画一的で、無道路地評価に影響を与える近隣地域の土地利用状況や隣接地の規模、形状、既存建物配置などの状況、さらに隣接地と対象地との位置関係やその時系列的考察、対象地の個別要因などの諸要因を十分に反映しない価格評価となりがちである。
例えば相続税財産基本通達に基づき算定された無道路地評価額を、鑑定評価による鑑定価額がかなりの程度で下回るようなケースを多くの不動産鑑定士は経験しているのではなかろうか。
これらの税務上の価格は、あくまでも参考程度に止めるべきで、無道路地の価格は、我田引水になるが、個別的事情等を総合勘案した鑑定評価を基礎として求められるべきと思料する。

1、無道路地とは

「無道路地」とは、鑑定評価における画地要因であり、一般的には公路に全く接していない土地をいう。その土地を単独で利用することは不可能だが、公路まで通路を取り付けて利用が可能になるものである。無道路地と混同しやすいのが「袋地」であるが、袋地は下図のように路地状部分で道路に接道している。
民法上の「袋地」は「他の土地に囲繞されて公路に通じないもの」(民法210条)とされているので鑑定評価の「無道路地」に近い。鑑定評価でいう「袋地」でも路地状部分の幅が狭く2m未満の場合は、建築基準法43条1項の接道義務を充たさず、建築不可となるが、この場合の袋地は、「無道路地に準ずる袋地」として「無道路地等」として取り扱う。
公路とは、不特定多数が自由に通行できるものであれば私道でもよいが、反面、公法上の公道となっていても、相当程度の幅員があって安全自由に通行できる道路でなければ公路にならない。



公路に全く通じていない土地があっても、顕在化もしくは潜在化した民法210条の囲繞地通行権を有しているケースが多い。無道路地に準ずる袋地でも路地状部分の幅が極端に狭隘な場合は、現在の通説、判例は、土地の形状、面積、用途などを考慮してその土地に相応しい利用をするのに当該道路で不十分であれば、相対的に考え、囲繞地通行権により当該部分の拡幅を認める傾向にある。
囲繞地通行権が、まだ潜在の域にとどまる場合は、囲繞地通行権が認められるであろう位置や範囲を探索し、その実現性の程度を検討し、すでに囲繞地通行権を認められた通路の実態があり、具体的に顕在化している場合は、当該部分の利用状況や私法上の契約関係などを前提として鑑定評価することになる。したがって、無道路地の価値は、無道路地部分のみではなく囲繞地通行権を内在して検討されるべきものである。

■囲繞地通行権

無道路地は、民法上、囲繞地通行権を原則的に認められている。囲繞地通行権については無道路地の価格に影響を与える下記の要因についてそれぞれ考察しなければならない。

建築基準法令との関係 建築基準法43条1項では接道幅2m以上の確保を義務づけているが、過去判例は、囲繞地通行権で認められる通路幅を建築基準法令と整合させたものもあれば、建築基準法令と整合させることを否定したものもある。
肯定側の論理は「建築基準法令に適合しないと、袋地の建築用地としての効用がなくなり、初期の土地利用が不可能になる。現在、居住中の建物の大規模修繕、改築も行い得ず、朽廃、立ち退きを待つばかりで、人権問題とさえいえる」といったものである。
否定側の論理としては「囲繞地通行権は、通行が日常生活に支障がなく必要かつ十分と認められる限度で決定すべきで、通行権を防災上などの視点から統制される建築取り締まり上の規定から考慮されるべきでない。通行権と建築法令は別問題である。」となる。
つまり、鑑定評価に当たっては、囲繞地通行権が認められても建築基準法の接道幅を充たさず建築許可が下りないケースがあることに留意しなければならない。また接道幅を充たす囲繞地通行権が認められたとしても、それだけでは建築基準法の接道規定を建築確認でクリアできないことは後述する。
位置と範囲 囲繞地の通行は、囲繞地にとって最も損害の少ないところを選ばなければならないが、必要のあるときは通路を開設することもできる。(民法211条1項)
通路の位置と範囲は、無道路地にとって道路への最短距離など無道路地所有者にとって経済合理性を発揮できるルートという観点でなく、あくまでも囲繞地にとって「最も損害の少ないところ」という観点から選定されなければならない。付近の地理的状況、相隣者の利害得失など諸般の事情を斟酌して想定され、その範囲は、必ずしも建築基準法令に適合できる最低限度が認められるわけではないという点に留意を要する。
償金 通行権者は、原則として通行地の損害に対して1年ごとに償金を支払わなければならず、通路開設のための損害に対しては一時に支払わなければならない(同法212条)。
土地の分割によって袋地になったときは、袋地の所有者は、分割又は譲渡された他方の土地のみを通行することができ、その他の土地を通行することはできない。この場合、償金を支払う必要はない(同法213条)
償金の有無、支払額は、無道路地ならびにそ囲繞地の価格に影響を与えるため、当該無道路地が民法213条との絡みでどのような経緯で生じたか画地かを時系列で追求しなければならない。
通路開設・拡幅費用 通路の開設・拡幅が必要な場合、囲繞地所有者の承諾をまず得なければならず、得られない場合、訴訟を経て実現することになる。道路開設・拡幅費用は無道路者が負担するが、訴訟を必要とする場合は、訴訟費用、訴訟により実現できるまでの期間を鑑定評価額に反映させなければならない。(「特殊な画地と鑑定評価・第4章 鵜野和夫」)

■囲繞地通行権の確定と建築許可

囲繞地通行権の位置、範囲が当事者間で確認され、判決等で確定した場合でも、当該部分に具体的な権利設定がなされなければ、建築基準法令による接道要件をクリアできない。
通常、無道路地から公路に出るまでの土地を確保するには

  1. 通路部分を分筆して売買により所有権を取得する
  2. 地上権を設定する
  3. 通行地役権を設定する
  4. 賃借権を設定する
  5. 使用貸借で借りる

のようなケースが考えられる。
建築基準法令の接道要件でいうと通路部分を売買で所有権取得するか、私道位置指定を受けておくと問題がないが、上記の2~5のケースでは、建築基準法令の接道要件を充たすかについて地方公共団体ごとに所管役所担当課と慎重な打ち合わせを必要とする。
例えば、通行地役権では、地役権者が承役地の排他的に利用をしないで要役地と承役地所有者が、共同利用することができる。承役地所有者が、通行に支障がない範囲で自己建築できる可能性もある。所管役所が、承役地の通行地役権では要役地の建築を目的とする敷地には該当しないという見解を取ると接道要件を充たさず建築許可が下りない。

2、無道路地の鑑定評価

無道路地を鑑定評価する場合、当該地が位置する地域特性、例えば都市部の市街地か、郊外の住宅地域か、農村等の農家集落か、宅地以外の農地や林地または宅地見込地かなどにより、その減価の程度は異なる。つまり、中心市街地のように狭隘な敷地に過密に建築物が建ち並ぶのが一般的な地域では、囲繞地が通路等を提供することは、当該囲繞地が狭隘なので地上建物を取り壊さなければならなくなったり、囲繞地の既存建物が建蔽率や容積率を充たさなくなったりするなど、その実現性の困難度が高い。
また接道義務がない都市計画区域外か、接道義務がある都市計画区域内かによっても減価は異なる。宅地としての利用がなされる場合、建築基準法令で建物が建築不可となることは、致命的な欠陥となり、駐車場や資材置き場等としての利用しかできなくなるため、対象地もそれなりの経済価値となり減価が大きくなる。

■土地価格比準表による無道路地評価

国土交通省の「土地価格比準表」では、「無道路地については、無道路地が道路に接していないことにより宅地としての一般的な使用が現実に不可能ではあるが、道路開設により使用可能なものとなることに鑑み、宅地として利用するために最も適した道路に至る取付道路を想定して、袋地の評価方法に準じて評価額を求め、この額から当該取付道路用地の取得原価等の道路開設に要する費用の額を差し引いて無道路地としての価額を求め、これにより無道路地であることによる格差率を求めることとなる。」
と定めている。

土地価格比準表による無道路地評価設例

【設例内容】(単位千円)
標準画地の価格100,000円/㎡
路地状部分減価率:0.50
有効宅地部分の奥行減価率:0.85
取付道路の経済合理性に反する分割等を前提とし、通路開設によるB地の外溝等復旧補償工事などを考慮した買い進み率:1.80
取付道路買収の不確定要因補正率:0.10


①袋地(A+B)の価格
 A(路地状部分)
100,000×0.50×45=2,250
 B(有効宅地部分)
100×0.85×200=17,000
 A+B=19,250

②取付道路価格
100×1.80×45=8,100

③無道路地価格
(19,250-8,100)×(1-0.10)=10,035
対象地が道路に接面した価格
100×200=20,000
無道路地の価格割合
10,035÷20,000≒0.50
減価率
(1-0.50)=50%

土地価格比準表は、「宅地として利用するために最も適した道路に至る取付道路を想定して、、、」となっており、当事者の自由契約で通路部分が売買による所有権取得で開設された場合を想定しているようだが、囲繞地通行権を前提とするケースでは、「囲繞地にとって最も損害の少ないところ」という観点から通路の位置や範囲を想定することになる。
また設例のような評価は、都市の市街地などでは前述したように一般に敷地が狭隘で高度利用がなされ、権利関係も複雑化しているため、取付道路の買収実現のハードルが高く、現実性に欠ける。このように無道路地が位置する地域の状況や囲繞地の規模、形状、地上建物の配置状況等に加え、囲繞地所有者との人間関係で買収が困難なケースもあるため、当該手法を適用したとしても買収可能性の不確定要因による減価(上記設例の不確定要因補正率)をさらに考慮する必要がある場合があることに留意しなければならない。

■囲繞地通行権を前提とした無道路地評価

土地価格比準表は、通路取り付けについて当事者間の自由契約による通路部分買収等を想定しているのに比較し、囲繞地通行権による通路開設・拡幅は、その実現が不確実であり、実現したとしても位置・範囲の不透明度が高い。通路開設・拡幅に伴い囲繞地に支払う償金や当該工事費用、不確実性などを検証し、十分にこれらの諸要因を反映させて鑑定評価を行うことになる。
当該手法の算定式は、不動産鑑定士鵜野和夫氏「特殊な画地と鑑定評価・第4章」ならびに不動産鑑定士白井雅浩+谷圭三両氏「画地評価論・第5章」を参考にすると下記になる。

A:通路開設・拡幅実現時の無道路地価格
B:囲繞地に支払う通路買収価格(経済合理性に反する分割等を前提とした限定価格となる)または償金の額(必要に応じて訴訟費用等を考慮)
C:改良工事費用
n:通路開設・拡幅の実現までの期間(必要に応じて訴訟等の期間を考慮)
r:上記期間の土地期待利回り
k:不確実性補正率

 無道路地価格=[(A-B-C)×1/(1+r)^n]×k

*上記で通路開設・拡幅実現時の無道路地価格を査定するに当たっては

  1. 通路が所有権か、用益権か、用益権の場合、契約期間、登記と第三者対抗力の有無、契約解除リスク、使用対価の額
  2. 通路の位置、範囲が当該地の利用効率に及ぼす影響
  3. 建築基準法令の接道規定との関係

が価格に反映されなければならない。

■隣接地による併合使用や複数地の一体使用を前提とした無道路地の評価

無道路地は、上記のように取付道路を付加して使用されることよりも、隣接地が買収して併合使用したり、周辺の複数地を一体使用を目的として無道路地を含んで逐次取得されることが多い。このようなケースを前提とした無道路地の評価は、下記のようになる。

○隣接地が併合使用目的で無道路地を買収する場合

【設例内容】(単位千円)
路線商業地で奥行が短く、来客用の駐車スペースが十分に取れないため、利用効率が低い隣接A地が裏の無道路地B地を買収して沿路サービス業施設用地として併合使用する場合の限定価格を求める。
(併合後、一体使用地A+Bは、標準画地の単位価格まで価格上昇するものと想定)

①単独地としての価格
標準画地価格: 300
A地価格:300×0.85(奥行短小減価率)×300=76,500
B地価格:300×0.50(無道路地減価率)×600=90,000 
*無道路地減価率は諸要因を考慮して適正に査定されたとする。

②併合後一体地価格(A+B)
300×900=270,000
③増分価値 ②ー①=103,500
④増分価値の配分率

総額比で配分     90,000/(76,500+90,000)=0.54
購入限度比で配分  (270,000-76,500)/((270,000-76,500)+(270,000-90,000))=0.52
配分比を上記の平均で査定 0.53

B地限定価格 90,000+(103,500×0.53)=144,855 ㎡単価 241,425千円
B地の価格上昇率  144,855÷90,000=1.61 

○複数地の一体使用を前提に逐次取得する場合の無道路地価格

単独では非効率な利用しかなされていない複数の画地を高度利用を目的に逐次取得して一体利用する場合、個々の画地の集合価値を併合後の一体利用地の価値が上回ると、その結果、その構成部分の一部である無道路地の単独価値が市場価値を乖離し、限定価格に似た増分価値の配分が生じる。
隣接併合のような場合は、市場限定となるが、一体利用をメルクマールとする逐次取得は、当該条件化で第三者による市場参入も考えられるので正常価格の範疇とみる見解もある。(不動産鑑定1990.5 加藤弘之 「共同ビル建設にあたっての権利調整について」)

このようなケースでは、複数地を併合後の一体使用価値に基づき、その構成部分であるそれぞれの画地に個別格差に応じて、当該画地の全体に対する寄与度と当該画地への他の画地の寄与度を勘案の上、価格配分がなされるのだが、併合後に経済価格が増分した一体利用地を配分の基準とするため、各画地の個別格差は、単独地の場合のそれと比較して緩やかな差にならざるを得ない。無道路地についても同様に増分価値が配分されるため、単独地のそれと比較し、減価の程度が緩やかなものになるのが認められる。

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