中国本土へシフトする香港の不動産投資
香港では1997年のアジア通貨危機を契機に不動産バブルが崩壊。住宅価格の下落率は97年のピーク比約65%に達した。中国本土への返還ブームで投機的水準に急騰した反動が出た面が大きいが、不動産は香港の中核産業の一つだけに景気低迷の要因となっている。(日経産業2003.01.01)
不動産価格の下落で商業銀行の融資が縮小し、製造業などの設備投資を低迷させ、通貨制度による影響も加わり、国内にデフレが進行し、香港経済は危機的な状況となっている。香港の失業率は、今年3月で7.0%に達し、外国資本の国外流出も続いている。香港は英国の植民地であった過去の歴史経緯から香港政府は膨大な土地を保有している。政府はいままで公開入札を通じて数年間で市場の約20%に相当する量を市場に放出してきたが、これが不動産の需給関係を悪化させた。政府は公開入札を2003年末まで停止し、2004年以降開始した場合も、不動産業界の需給に注意し、実施すると発表した。しかし不動産市況が回復するにはかなりの時間がかかりそうだ。
コアパシフィック山一證券によると業界全体で約2万戸に上る完成在庫と、約3万戸の完成前売り出し案件を抱えている。在庫処分のための値引き販売が横行しており、市況の下落要因は強い。少なくとも当面、年率5~10%程度の下落は避けられないとする観測が多い(日経産業2003.01.01)
香港の不動産需要は中長期的に低迷するという予測が強いため、香港市民の間では隣接の広東省深センなどへの不動産投資が返還以降高まっている。長期的にいまの価格水準からみて値上がり期待が大きいという読みである。
松下電工の調べでは中国国内の住宅着工数は北京など主要7都市で分譲されたマンション、建売だけで279万戸に達し、1997年と比べ倍増した。特に不動産市況が盛り上がっているのが上海である。
WTO加盟、万博開催決定に沸く上海では、不動産バブルが沸き起こっている。2001年から2002年にかけての分譲マンション価格は、新築・中古ともに約1割値上がりし、特に都心では約4割値上がりした。投資しているのは主に台湾人や香港人と言われている。日本の森ビルは上海・浦東地区での超高層ビルの建設工事を再開した。2007年半ば完成予定で高さは492mと世界一の高層ビルになる。工事を中断した1998年当時は、アジア通貨危機の影響で対中投資が減少し、市内で大型オフィスビルも相次ぎ完工し供給過剰になっていたからだ。その後、市政府の不動産投資規制で需給が改善し、外資の投資も増えている。
総投資額1000億円をかけるこのプロジェクトについて森稔社長は「上海は中国の金融センター、東京はアジアの金融センターと住み分けていく、不動産バブルを心配する声もあるが、調べるとオフィスは不足気味だ。上海経済の先行きは2010年万博まで大丈夫と言う声をよく聞くが、もっと懐が深いと思う。居住人口がどんどん増えていき街全体が活気づいていくだろう。10年以上は成長が続くはずだ。」と語る。(日経産業2003.02.20)
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