地価の長期下落要因

少子化、産業空洞化、減損会計による企業の土地放出、リストラ、賃金低下などの生活不安等々いくつもの地価下落要因は、日本人にインプットされています(後述しますが、実はこれが問題)。

最近、不動産金融工学者・川口有一郎 、三菱総研・酒井博司 、さらにNステでお馴染みのエコノミスト・森永卓郎が地価下落に対して同趣旨の発言をしています。

まず川口氏は「日本の地価が下げ止まらない一つの理由は土地のリスクプレミアムの増大がある。リスクプレミアムが高まると投資家の要求収益が高くなり不動産価値は下がる。逆にリスクプレミアムが下がると不動産価格は上昇する。不動産価格の大部分はこのリスクプレミアムに支配されている。バブルの頃は不動産のリスクプレミアムはマイナスという異常事態だったが92年からプラスに転じた。いま都心の投資適格物件のなかにはリスクプレミアムが減少したものもある。」

さらに川口氏は「かつて不動産市場には8年サイクルで価格のピークが訪れていたがバブル崩壊後その周期は変化した。しかし2000年頃サイクルがずれた形でわずかなピークが見られる。もし8年サイクルが再現すれば2003年から2004年に底入れし、2008年頃ピークを迎えるとも想定される」(※DCF法で収益価格を求める場合、投資家は期待した利回りを必ず確保したいと考えるため予測された収益が予測値からぶれる可能性があればその可能性をリスクプレミアとして割引率に加算する。)

一部外資は、いま仕込み、5年後頃が出口という戦略ですが8年サイクル説の底とピークに重なります。

三菱総研・酒井博司氏は、理論地価という経済学的概念が有効としている。理論地価は、地価を将来地代の割引現在価値と考えるファンダメンタルズモデルより求める。全国レベルのマクロを見る場合は、実質GDPを実質地代の代理変数として用いる。割引現在価値を求める割引率を実質利子率として算定すると理論地価が求められる。バブル崩壊後の現在の地価水準はほぼ経済動向を反映したファンダメンタルズモデルによる理論地価水準となっているため今後は経済成長に連関した動向となるが、地価下落予想が強ければ、理論地価水準を下回る動きとなると予測している。90年代以降の経済低迷の要因は不良債権の隠蔽、先送りなどで発生したディスオーガニゼーションによる経済萎縮(不確実性、不安の連鎖による経済萎縮)に起因する。これが土地の期待収益率を低下させ地価下落を長期化させたとしている。

森永氏の見解は、地価は本来、名目GDPに相関して上がっていく。地価を名目GDPで割った割高曲線で見ると1995年にバブル発生前の水準に戻っている。バブルの清算は1995年に終了している。しかしそれ以降も下降が続いている。この現象は「逆バブル」が進んでいるから。90 年代後半以降も依然資産価格の下落に歯止めがかかつていない。資産デフレがフローのデフレに波及するなかで、バブル期とは逆にファンダメンタルズから乖離した過剰な値下がり期待が人々の間に生じているためと推測される。

以上、3氏の見解を求めると、日本人にインプットされた岩盤のような地価下落要因が心理面で過剰に作用し、「リスクプレミアム」、「デイスオーガニゼーションによる経済萎縮」「逆バブル」などをとおして不動産の実際価値よりさらに地価を下げている面があるという見方になります。

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