住宅価格の価格破壊
日本の住宅は欧米の住宅に比べ高いと言われている。
日本:米国=1.7:1、日本:英国=2:1
ただ欧米では建売住宅が主流で、ほとんどは総2階のシンプルな間取りになっており、注文住宅でも米国の場合、住宅設計プラン集が一般的でその中から気に入ったものを選びビルダーに注文するスタイルが通例である。日本に比べ敷地が広く、大概のプランは敷地に収まるからで日本のように狭小敷地に建築家が頭を悩ます光景はない。米国人は、収入や家族構成によって住み替えるという意識を持っており、あまり特殊性の強い家より一般的で市場性が高いものがベストだからだ。彼らは、ドアを変えたり、日曜大工でこまめに家の手入れをする。手を入れれば家の価値は上がるという風に思っている。ツーバイフォー住宅が主流で、部材の断面や寸法は標準化されており、釘打ちで施工する。工期は短く80日程度。住設機器や部材の流通もシンプル。
日本の家は、約70%を地元工務店が作るといわれ大手ハウスメーカーの建てるケースは2割程度となっている。大手ハウスメーカーは全国に展示場を持ち、テレビコマーシャルを流し、抱える営業マンも多いため建築コストの一部を構成する一般管理費が高くなる。反面、住設機器や部材などを一括大量発注できるため仕入れ値は下がる。地場工務店と大手ハウスメーカーの建築費を比較すると大抵は大手ハウスメーカーのほうが高い。
しかしこの常識を打ち破る商品が出た。昨年7月に1ヶ月限定で売り出したミサワの「LIMITED25」は坪25万円という低コストでひと月で3,278棟の売り上げを記録した。そしてエス・バイ・エルがペアガラスなどを標準装備にしてグレードを上げながら坪単価21万円とした「sum@i21」を発売した。
コスト削減の秘密
- プラン数を極力少なくし1階と2階の延べ面積が同じ総2階造りが中心。
- 資材の使用量を抑えるため、1部屋の面積を大きくとり、壁の総面積を約半分とした。
- ミサワ「LIMITED25」ではプランを8種類に限定し、部材費を3割減らした。
- 資材の規格化や設計の簡略化により工期を45日に短縮、労務費、現場経費などを削減。
- エス・バイ・エルはネット販売に限定し、販売費も抑えた。ミサワは通常の住宅販売につきもののモデルハウス展示をカット。
地場工務店も負けていない。テレビ東京放送「ガイヤの夜明け」で元大工社長アキュラホームの宮沢俊哉さん(40歳)が新築市場に殴り込みをかけた激安住宅の実力を放送した。日本中の工務店をネットワークで結んで、そのノウハウを共有しながら安くて良質な住宅を普及させていこうというのである。坪21万円という激安住宅を、自宅を実験住宅にしてまで激安住宅の開発に身も心も捧げ、ネットワークを開拓するために日本中を駆け回る宮沢社長の姿をテレビカメラが追った。
まさに住宅の価格破壊、デフレ化である。低価格化の秘密はネットワーク化による 各種共同開発や営業経費の大幅削減、さらに流通コストやマージンカットなどを実現し、IT技術の導入などにより業務効率を向上させ、一層のコスト削減を実現した。
以上の例は、プランが限定された自由度の低い住宅であるが、注文住宅でも建築費の低コスト化は従来の建設会社の一式建築請負方式から欧米流のCM(コンストラクション・マネジメント)を施主の代理人として介在させ、工務店の中間利益排除、各専門業者と直接施主が工事契約を結ぶことで可能となる。CMが予算制御、コストマネジメント、施工、品質管理までフィービジネスでやってくれるからだ。
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