産業空洞化と無縁 トヨタ・ホンダの凄さ
中国への国内製造業の海外移転は国内産業の空洞化をさらに深刻化しており、再三指摘されるが製造業流出の怒涛のような流れはいまのところ抑止できないのが国内の現実だ。中国に生産拠点を移転している電機業界は部品点数が比較的少なく、成熟製品の多いため、汎用化(ほかの者に真似される)が進み低コストの中国などアジア諸国に競争力で敵わなくなった。
現在のパソコンや、家電製品はスマイルカーブといわれる付加価値構造になっている。組み立て工程の付加価値が下がり、上流の部品・材料と下流の販売・サービスに付加価値がシフトしている。中略。付加価値の下がった組立工程は賃金コストの安い中国に移転したり、生産性を徹底的に追及したEMS企業に製造委託するのが常識となった。(日経コンピュータ7.29)
つまり付加価値が高いのは組立工程でなく内部の部品やサービス分野なのだ。
産業空洞化を阻止するには汎用化が進みにくい業界や企業に変わることが最重要課題と言える。
日本のトヨタ、ホンダの自動車業界は、欧米の自動車メーカーに比べ明らかに勝っている点がある。まず日本の自動車業界のIT投資は欧米のおおよそ売り上げの2%に対し1%以内である。次に新車の開発期間は欧米の30ヶ月に対し日本は20ヶ月である。(日経コンピュータ02.07.29)
国内企業がITの投資効果測定手法を殆ど確立してない中、驚異的なITの使いこなしノウハウを保有していると言える。特に金型産業の技術は世界一と評価されている。3次元CADを駆使し複数の金型の図面と組み合わせ各工程の関連性をシュミレーション可能だ。
自動車業界は、納期短縮とコスト削減を実現するために、航空機業界に次いで、最も早くからコンカレントエンジニアリングに取り組んでいる。自動車業界では、さらに一歩進んで、グローバルなコラボレーションが日常的に行われるようになっている。3次元CADを活用し、メーカーのテクニカルセンター、部品メーカー金型メーカーが高速インターネット網で結ばれているのだ。(日経コンピュータ02.07.29)
上流工程、組み立て、下流工程と中国などが容易に真似して汎用化できるレベルではない。空洞化が起こる要因が極めて少ないのである。
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