グローバル化で収斂していく地価
いままでは地価や賃金のような貿易できない生産要素価格が生産物が貿易されることにより国際価格に均等するという「要素価格均等化定理」は、非現実的と言われた経済学の1仮説であった(野口悠紀雄著「日本経済 企業からの革命」)。いまこの仮説が急速に現実化している。
中国の世界の生産拠点化で各国は中核部品の現地生産によるコストダウンで競争力を高めるため生産拠点や調達、市場の流動化をますます進める。国内の賃金も下がり、地価も影響が大きい。農業や繊維などの労働集約産業の日本への大量の低価格の輸入にとどまらず、ハイテクでも米大手は日本を飛び越え中国に攻勢をかけている。人口4億、沿海部のIT市場の急成長がターゲット。米インテルは設備投資拡大や中国企業との提携を決め、インテルのクレイグ・バレット(CEO)は2年以内に中国のITは日本を抜きアジア最大の市場となる予測している。IBM、マイクロソフトも投資拡大・戦略提携を進めている。
ITインフラでは韓国にも遅れ、工場から研究施設まで中国に吸引されている。つまり工場労働者のみならず、サラリーマン、中間所得層の所得がポテンシャルの高い国に吸引され収斂していく。国内産業空洞化は地価下落を急速に進める。さらに少子化、生産年齢の減少の影響はすでにバブルの清算は終えたという90年代後半からの地価下落にすでに織り込まれていると指摘されている。少子化は、消費をスパイラル的に縮小させ、低付加価値産業の余剰設備や人員を削減し、国内全体の経済を疲弊化させる。結果、能力ある企業や個人は、低成長国から出てゆく。
ITは熾烈な生き残りをかけた企業間競争を加速させる。今後の企業の部品調達などは系列や部内組織を超えBtoBなどITを媒介とするマーケットが構築される。日産のゴーンが進めた部品調達のコストダウンは、BtoBで従来の下請け、系列を超え世界的規模で供給マーケットがネットで構築され究極の低コストを実現する。
例えば企業のコールセンターは沖縄など人件費、地価の安い地域へ数多く設置されている。コールセンターは顧客の需要動向を分析するCRMのシステムの1要素であるが、いずれシステムの高度化が進めば、システムは自動化され働く殆どの人間はいらなくなる。
企業間の競争は、ITなど技術革新が早いため、システムで立ち遅れ、経営環境変化やスピードに対応できない大半の企業は消え、競争の激化の結果、少数の有力企業が生き残る寡占化の状態となる。企業最適規模、最適人員は限りなく縮小均衡していく。
さらに減損会計、不良債権処理による土地供給圧力、上記に起因する経済活動の需要と生産の縮小、企業の海外移転は、全国的に強弱はあるが地価下落を進める。首都東京も都市再生で都心部の都市基盤整備がすすみ不動産価値が相対的に上昇、少子化でも人口は減らないと安閑とできない。政府が不良債権処理と都市部での選挙の集票を狙った「都市再生」、政府や業界の思惑通りに地価を継続的に押し上げ上昇させるエネルギー(低賃金化、高所得層の少数化など不動産購入者の有効需要は急激に減少)は乏しい。全国レベルで低成長、低消費、低所得化が進めば、商品やサービスを全国的に供給し、販売する司令塔の東京の企業の売り上げやそこに働く人々の所得に無相関ではありえないからだ。
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