不動産取引の革命的に変えるPCの輪 / PtoPの可能性
売りたい買いたいという不動産情報は、インターネットのサイトを見たり物件検索をして得ることがかなり一般的になってきた。物件情報を掲載しているサイトは、Yahoo!などポータルサイトであったり不動産業者のサイトであるわけだが、近未来、不動産サイトというサーバー抜きで、売りたい人、買いたい人が自分のパソコンにPtoPソフトをインストールし、不動産情報を個々のPC上で交換するという革新的CtoC市場(業者抜きフリーマーケット)が誕生するかもしれない。
CtoC自体は、国内でも珍しくなく直接取引を前提としたWebサイトもいくつかある。売主による売り物件登録、買主の購入希望条件などを登録させマッチングにより双方がメールなどで交渉を進める。同じサイト内に業者もしくはサイト主宰者によるエスクローサービスとバイヤーズエージェントサービスの提供広告も出されており、売主、買主は必要に応じてこれらのサービス提供を通常の手数料より低額で受けられるシステムとなっている。現時点でこれらのサイトは、まだ利用者も少なく物件量も僅かである。サイトを媒介に不動産の個人間取引をすることは結構、煩わしい手間がかかる。物件も更新されないことが多いからだ。
PtoPと呼ばれるインターネット技術を活用すると不動産情報マッチングは、簡単に飛躍的成果が得られる。例えば当社が不動産情報マッチングネットワークのPtoPソフトを開発したとすると…
売り主と買い主は、まず自分のPCに当社のPtoPソフトをインストールし、売り主は物件を登録し、買い主の購入条件を登録すると条件に合う物件情報を保有するPCをJAVAプログラムのエージエントが自動的に探して回る。適合する物件があるとPC相互で通信、情報取得し、気に入れば、現地を見て契約するという流れになる。この間の通信データは暗号化されている。
「PtoP」は、米ナップスターが提供している音楽ファイルの共有サービスで一躍有名になった。ナップスターは、19歳の米人ショーン・ファニング氏が開発した音楽データ交換用ソフトで、音楽ファイルをやり取りする際に、ユーザーにサーバーからファイルをダウンロードする方法を採らず、ユーザー同士が1対1で通信し、あるユーザーのパソコンから別のユーザーのパソコンへ直接音楽データを転送する「PtoP」と呼ばれる技術を用いている。具体的には、ソフトの起動時に自分の持っているMP3などの音楽データのリストを自動的に構築・登録する。こうして、世界中のユーザーのデータリストがナップスター社に集められる。ナップスターは音楽のファイルを格納せずファイルのインデックスだけを持つ。サーバーに音楽ファイルを格納しない訳は、音楽ファイルを格納したサーバーにアクセスが集中してしまい、ユーザーが増加するに従って、システムが耐えきれなくなるためだ。そしてユーザーが欲しい曲を検索すると、あらゆるユーザーのリストから検索され、だれかが持っていればそのユーザーのパソコンから直接ダウンロードすることができる。
ナップスターは、音樂ファイルのインデックスを中央のサーバーに公開することで、個々のユーザーがサーバーを介すことなく1対1(PtoP)のやり取りで相互に交換できる画期的システムを創造した。一時ユーザー数が3800万人を超えるものとなったが同サイトが音楽著作権を侵害するという訴訟がおこり2001年7月にサービスを停止している。
ナップスター自体は、CDから違法コピーされた音楽ファイルがやりとりされているなどの問題を抱えているが、PtoPの仕組み自体は、米国のネット業界に新たな可能性を示し、PtoPを音楽以外の分野に適用しようとする試みが始まった。米インテル社は、PtoPテクノロジーをビジネスに活用するための協議会「PtoPワーキンググループ」を発足し、米IBMや米HP社など主要企業が参加し、2000年9月の初めての会合では、セキュリティやプロトコルの標準化を協議した。米サンマイクロシステムズ社は2001年4月JXTAというPtoPテクノロジーの開発環境を提供するテクノロジーを発表した。
PtoPを使った情報マッチングシステムはビジネス面でこれから普及していく。不動産分野で活用される日がくるのは近いのではないだろうか。
■関連記事
次世代インターネット基礎技術