長期地価下落を織り込んだ不動産周辺業界の事業再編
少子高齢化、国内産業の空洞化、減損会計導入などの構造的地価下落要因に加え政府の不良債権処理の実施、低迷する景気、デフレの進行は、短期長期にわたり地価下落が続くことを不動産周辺業界はすでに織り込んで各事業の再編を図っている。
不動産大手三井、三菱系2社は、不動産投信(J-REIT)を昨年9月上場した。不動産の証券化により有利子負債を圧縮でき、資産の分母が小さくなることでROAも改善される。不動産の証券化が進行することにより不動産会社はアセットマネジメント、プロパティマネジメントなどのノンアセットビジネスの可能性を広げ、従来のキャピタルゲイン狙いの事業モデルをほぼ一掃した。不動産投信が完成物件を投資家に売却し資金を早期に回収する「出口」戦略とすれば「入り口」の段階から投資家を呼び込む手法が「開発型証券化」である。三井不動産は旧防衛庁跡地再開発でこの手法を使う。
大手ゼネコン鹿島は野村證券と組み「開発型証券化」事業に乗り出した。不動産の証券化で建物の完成前に土地の購入代金や建設費用を投資家から調達する。従来のゼネコンは「造注」営業を展開し工事契約を競った。「造注」営業とは工事を受注するためゼネコンが施主に代わって土地を先行取得し、工事完成後に土地建物を一括して買い取らせる営業方式で、これによりゼネコンのバランスシートは急激に膨張し過大な不良債権を抱え込んでしまった。「開発型証券化」では鹿島と野村が物件開発のSPCを設立、SPCが開発資金を調達する仕組みなので鹿島は有利子負債が増えるリスクを回避できる。ゼネコンは技術外販や建物デューデリジェンス、土壌調査などソフト面にも力を入れている。
少子化により新築戸数が将来、縮小すると懸念する 住宅関連大手が相次ぎリフォーム事業に乗り出した。ミサワは戸建増築用の離れ部屋「離れ」を昨年11月に販売しリフォーム事業に本格的に参入した。住友不動産は完全定額制で増改築を請け負う「新築そっくりさん」の受注を拡大する。定額制は採算割れになることもあるが施工件数の拡大で補う。積水化学工業はリフォーム事業拡大のため新築部門から配転させ営業を今年3月には昨春の2倍の1,700人体制とする。
リフォーム急成長を支える媒体としてネットを使ったリフォームサービスの利用者が増加している。ネット自体の利用層と住宅購入層が重なる30代の人が多い。ただ、住宅購入から間もない30代のユーザーは、リフォームの発注も細かな内容が多い。本格的なリフォームを検討するのは、築20年前後の家に住んでいる40~50代が圧倒的に多いため、中高齢者層をいち早く取り込んでいくことが今後の重要な企業戦略となる。
不動産流通業界にとっては新築住宅市場の縮小により中古住宅流通が質量で充実することが課題である。インターネットを活用した営業戦略の比重が高まっており、今後、レインズの一般ユーザー公開の行方が注目されるが、国土交通省総合政策局不動産業課不動産市場整備室による米国の不動産情報化状況調査、米国における不動産物件情報提供サイトNAR(全米リアルター協会)が主体のリアルター・ドット・コムの状況などが日本国内の不動産流通の今後の参考になると思われる。
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