老舗や中小企業を潰す構造改革

地方の地価下落は、奈落に沈み続け底が見えない。東京など大都市は都市再生などの政策カードもあるが、地方は切り捨てられたと言っても過言ではない状況だ。均衡ある国土の発展というスローガンで手当てされてきた公共工事が削減され、道路特定財源、地方交付税の見直しは財源配分の効率化=投資効率の劣る地方の切り捨てとなる。これからは経済効率最優先でヒト。モノ、カネが動くため投資効率が高い大都市優先の官民の投資スタンスが加速するだろう。地方の地価下落は国内産業空洞化も加わり一層、深刻化する。

農林業、製造業はグローバリゼーションの波に襲われ、産業の空洞化の代名詞のような存在と化し、縮小が続く。駅前等の旧来の中心市街地は閉店、廃業でシャッターが閉じられ、さながらゴーストタウンの様相を呈している地域も少なくない。郊外の大型店も有利子負債と競争に絶えられず、スクラップされ巨大な構築物が2月の寒波にさらされている。大手の工場をはじめ数多くの工場からリストラされ人影も少なくなり、町全体が寂れていく。

地域金融機関は破綻や再編で融資先を厳しく選別し、地域経済を支えてきた建設業が公共工事削減の小泉改革で逆風下にある。地域経済で建設業者の占める割合は総じて高いため地方にとって打撃は計り知れない。

昨秋から地方名門企業の倒産廃業が急増している。地方都市の目抜き通りなど昔は不動産価値が高かった不動産担保を提供していた企業ほど借入金の重圧で過剰事業規模になり、金融庁の厳しい指導で審査が厳しくなり資金が回らなくなっている。地元経済界でそれなりの役割を果たしてきた老舗企業にはいままでは金融機関もドライに引導を渡すことはしなかったのだが、いまは金融機関自身が金融庁の厳格な検査を受ける立場となっているため非情な決断が早々と下される。

小泉総理の唱える構造改革は低生産、低収益分野から高生産、高収益分野へ人、モノ、金などの経済資源を移動し、グローバリゼーションの世界的競争に生き残れる経済構造に変革しようと言うことでその必要性が日本国内に高いことは理解できるが、地方経済の疲弊と深刻な失業の現実を見るたび地方切り捨て、グランドデザインに欠けた偏った改革の推進に見えてしまう。

竹中平蔵氏は、大量に発生する失業問題についてセーフティネットを充分にしてと言うが、職業訓練1つにしても建設業をリストラされた中高年者にIT講習でワードやエクセルを修得させてもどこまで効果があるか疑問である。淘汰後の勝ち組み企業が求めているレベルは単なるアプリケーションの操作ができるかでなくIT的思考回路、センスではなかろうか…人材の移動がスムーズにいくのか…3年後、政府の構造改革の船はどこに行き着くのだろうか…

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