中国の世界工場化と日本の地価との関係
塩爺ももう少し経済を勉強してもらわないと…あのお年では言うのが酷か…
テレビ朝日の「サンデープロジェクト」で国内産業空洞化を「日本企業が東南アジアや台湾へ生産拠点移転をするせいだ。」と言っていた。現在の経済認識で正確に言うと”中国に移転”である。日本企業は東南アジアの生産拠点を規模縮小している。また中国の人件費は台湾の10分の1であり、台湾企業の中国移転が進み台湾国内も日本と同様の産業の空洞化現象をきたしている。米IBMは最近、台湾企業に委託しているデスクトップ型パソコンの基板生産を中国に移転するよう指示した。台湾最大の食品流通グループ「統一企業集団」は1992年から対中投資を始め3億1700万米ドルを投資した。台湾ではヒト、モノ、カネが強力な磁石のように吸い込まれていく中国経済を畏怖して「磁性」と呼んでいる。中国の「磁性」により台湾経済は深刻な空洞化が進んでいる。台湾の李登輝前総統は9月末も台湾華僑大会で「台湾に必要なのは投資だ」と強調した。
TBSテレビ「ニュース23」でこの中国の経済脅威を特集していた。映像には上海浦東地区の日米欧のハイテクメーカー7,000社の集積地や、華紅NECの無人ロボットにより完全自動化された世界最先端電子工場が紹介されていた。携帯の独シーメンスは本国と上海しか工場を持たない。上海シーメンスは昨年850万台の携帯を販売しこれは前年の2.5倍になるという。シーメンスの経営者は電子産業の一大集積地になった中国に進出することはいまや世界の企業の常識だと言っていた。華紅NECの社長は「人材レベルが高い」、「自己アピール、自己トレーニングの意識が徹底している、日本人は負けるのでは…」と答えていた。同番組のゲスト、元大蔵省のミスター円こと榊原慶大教授は「中国は日本など及びもつかない大構造改革をすでに断行した。WTO加盟は国民の説得材料にすぎない。加盟後は中国首脳の力が増す。中国は世界の工場として発展する。中国のプレゼンスは高まり、米欧は日本より中国を相手にするようになる。日本の貿易黒字は2~3年で消える。」と発言した。
技術大国日本、モノつくりにかけて誇り高い日本は過去のものとなりつつある。人件費では競争が不可能で品質も日本は追いつかれたからだ。日本がこの先、中国との競争で生き抜くには技術、情報を主体とした日本独自のモノつくりや効率的生産システム、付加価値の高い情報を創造していかなければならない。
しかし国内の構造改革は遅々として進まない。マーケットは小泉内閣に失望し「小泉NATO」とネーミングした。”NO ANSWER TALKING ONLY”「言うだけで何もしない」という意味だ。経済音痴の財務大臣に、近頃、使う言葉もボキャブラリーが枯渇し陳腐化した小泉総理、日本の未来は暗い。
国内製造業の現状は中国へ一極集中して雪崩のように生産拠点移転をしなければ国際競争に勝てない。国内産業の空洞化はここ1~2年で急速に進んでいる。日本各地の工場は閉鎖や縮小に追い込まれている。しかし事態はもっと深刻だ。中国企業の技術力の飛躍的向上で日本国内の製造業は国内で作るモノがなくなり、工場はおろか本社ごと中国に移転しなければ存続できないところまで追い込まれている。
IT分野でも中国は進化している。高度なソフト開発の人材をNECソフトは中国の大学から9名採用した。システム構築の担当者として育てる予定だ。日本の新卒者は入社してソフト開発言語を修得するのに1~2年かかるが彼等は大学ですでに修得している即戦力なのだ。
このような産業の空洞化は国内の地価下落をより加速させる。工場地の価格が下がるだけではすまない。賃金低下など中国による国内淘汰は雇用を不安定にし、賃金水準を下方シフトさせるため住宅地の有効需要にも影響をもたらす。さらにWTO加盟後は13億人の人口を背景にした巨大消費市場をターゲットにした外資の活発な進出が中国へ加速する。日本国内のサービス、情報へ与える影響は雇用不安、賃金低下と相俟って商業地の競争力低下に波及する。特に地方では地価下落への影響が深刻になるだろう。製造業の国際的競合は下請け企業をはじめ地場産業の不振を招き、さらに構造改革による公共工事削減と重なり地方の地価下落を深刻に加速させる。過剰債務を抱え競争力が低下した国内企業が安価な輸入品の攻勢にさらされ経営が悪化し地銀、第2地銀のレベルで不良債権が増加している。その結果、不良債権処理がRCC(整理回収機構)の機能拡充などで果断に実行されたとしても、世界経済の分業化による競合と国内の構造的要因が重層し解決されないため地価下落は止まらない。
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