次なる世界サイバーテロの恐怖

9月11日米国で同時多発テロがおきた。世界貿易センターのツインタワーに民間航空機が特攻、CG画面でみる非現実世界のように世界経済の象徴が崩落した。テロリストにより多数の犠牲者をだした。直後、ブッシュ大統領は自由世界に対する戦争だと宣言、報復による軍事行動を進めている。

21世紀は多様、多重な過去の人類歴史により幾重にも積み重ねられた民族、宗教、精神社会や貧富の格差という混迷と憎悪の巨大なブラックホールに吸引されていく。今回のテロは自爆という物理的損壊、殺傷に手段が特定しているためいわば眼に見えるわかりやすいテロ(戦争)である。しかしいま、世界で進行しているテロはコンピュータネットワークという電子的領域で繰り返されるサイバー戦争という眼に見えない闇の死闘である。

テロリストが相手国に効果的にテロを行うには飛行機を特攻自爆(視覚的、象徴的ではあるが)するよりは航空システムや鉄道システム、変電システムを落とすほうが、簡単で痕跡も残さない。特に金融システムを落とし、機能麻痺させるとその国や関係国に与える被害は計り知れない。サイバーテロは単純に社会を破壊するより精神的な崩壊も引き起こす。敵国に与えるダメージは想像を絶するものになる。

史上初のサイバー戦争とよばれたのは北大西洋条約機構(NATO)とユーゴ、アルバニア系住民がそれぞれインターネットを使って展開した情報戦である。インターネット上でハッキングとネットワーク破壊攻撃が熾烈に行われた。米中軍用機接触事故のとき中国からの米国サイトへの攻撃が急増した。米国の政府関連組織のサイトに,さまざまな反米メッセージが書かれた。イスラエルとパレスチナ間の中東紛争では昨年後半から双方のサイバー攻撃が頻発している。相手国のネットワークに侵入し偽情報を流したりシステムを破壊している。米国内ではヤフーやイーベイなどの代表的サイトが分散型DoS攻撃でサービス停止においこまれた。ハッカーによるペンタゴンなどへの攻撃は公式見解で一日60~80件にのぼる状況だ。

最近はウイルスの感染源も国際化している。ラブウイルスはフィリピン、コードレッドは中国、ニムダは韓国が発信元といわれ強力な感染力で各国で大規模な被害をだした。

ハッカーを軍事目的で組織的に養成訓練し相手国に対しハッキングおよびウイルス侵入などを遂行する世界サイパー戦争がすでに始まっていると言われている。米国防総省関係者は、今後、米国もしくは同盟国に対する敵国によるサイバー攻撃は避けられないものだと委員会で証言した。米国はロシアや中国などの国が、米国の国威の象徴となっている民間コンピューター・ネットワークへの攻撃ツールを開発しているという不安を抱いている。

米英など英語圏5ケ国が参加する国際諜報システム「エシュロン」の存在が欧州議会が特別委員会を設置して調査に乗り出したことにより注目を集めている(米国NSAは公式にその存在を認めていない)。「エシュロン」の実態は依然、謎に包まれたままであるが常時120個の衛星を機能させFAX、携帯電話、電子メール、インターネットからのダウンロード、衛星通信などを傍受し、人工知能実装スーパーコンピュータで自動的、目的別に情報を選り分けるという。エシュロンはインターネット上を行き交う通信の90%ほどを消化し20億の私的通信が傍受されていると言われている。東西冷戦の終了で「エシュロン」の存在意義も米国内外で問われ始めたが、今回の多発テロでその認知度が高まりテロリストの暗号活用との闇の戦争が激化するだろう。最近、「エシュロン」が米国内の産業利用に使用されているのではという疑いがもたれているため日本企業でも「エシュロン」の脅威が浸透しはじめ機密文書はFAX、電子メールの使用を控えたり暗号技術導入を検討している。

先進的な世界各国はすでにサイバー戦争とサイバーテロに対応可能な組織を多くの人材と予算を投入して構築している。米政府は昨年初めクリントン大統領が包括的サイバーテロ対策を発表、年間20億ドルの予算措置を表明した。ネットワークへの依存度が高まるにつれその不備は致命的な国内事態を招くからだ。IT音痴の日本政府は相変わらず対応が遅い。警察庁はサイバーテロの特殊技術部隊「サイバーフォース」を今年4月設置し、内閣府は官民連携によるサイバーテロ対策にようやく乗り出した。

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