参議院選挙から総理の電撃靖国参拝まで
参議院選挙は予想通り自民党の大勝に終わった。小泉旋風が吹いた。小泉総理の外交、経済面での具体策は選挙期間中、明確にはならなかった。注目のタレント議員も誕生した。選挙後、田島陽子先生が「不良債権問題は男社会のせいで男は見栄を張り気前良く見せるから不良債権ができた」と例の男系中心社会の弊害の持論を天真爛漫に展開していた。舛添先生は取った160万票で族議員の抵抗を封じ込めると力説し、日銀はインフレターゲットを定め量的緩和を進めなければデフレ下の緊縮財政政策は失敗すると提言した(マネーサプライはバブル期以上だぶついているのに設備投資など企業の資金需要がない。通貨を量的に増やしても金融市場に留まり企業や家計に回らない。不良債権処理や構造改革がまず優先でいま、量的緩和を進めても効果がないと元日銀マンの塩谷議員はテレビ「サンデープロジェクト」で反論した)。舛添先生の提言する社会保障によるセーフティネット構築は説得力があった。
選挙後、田中真紀子外相は群馬県まで候補の落選のお詫び行脚をさせられた。不毛の選挙システムとマスコミの視聴率至上主義低次元、無責任報道はこの国を腐食させている。選挙のプロセスも結果もなにも従来と変わらないしらけたものだった。各党のメディアによるイメージ戦略は進み、候補者の政策情報は乏しく中味は空洞化する。テレビの不勉強なコメンテーターの発言で世論は左右されている。
8月13日小泉総理は靖国を電撃参拝した。最終決断はYKKと総理官邸で調整され田中外務大臣は蚊帳の外だった。同時に出された総理談話の先の戦争に関しての歴史認識は村山談話を踏襲し筑紫哲也は自民党の総裁としては踏み込んだものだという趣旨の見解を述べた。自由主義史観の歴史学者による歴史教科書の戦争解釈と距離を置いた。小泉総理は総裁戦時、党内の支持基盤が弱いため保守のコアとなる国粋勢力と提携したが心情的ナショナリストの側面を持つものの所謂、確信的「右」ではないようだ。党内参拝推進派、中西輝政京大教授や産経新聞は8月15日の参拝を実現しなかったのは国民への公約違反だと指摘した。反面、参拝反対派は歴史的形成から見て靖国は平和を祈願する施設でないと批判した。
この議論も中途半端なまま今年も終わった。景気悪化のなかで小泉総理の構造改革は今秋本格化する。ナローパス(狭い道)で改革のカリスマ、先導者小泉総理の真価が問われる。熟慮に熟慮を重ね妥協案を探った靖国参拝前倒しの手法はもう国民に通用しないだろう。
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