離陸直前、不動産証券化・JREITの課題
日経新聞報道によると本年4月いよいよ東証に不動産投資信託が市場開設される。業界の見方では実際の市場開設は夏場近くになるという観測もあるがいずれにしても不動産市場の流動化、活性化の起爆剤になるという熱い願いを担っての登場である。米国のここにきての景気急減速、森総理辞任ドタバタ劇など政局の混迷、不良債権問題の重石などに影響を受けた国内景気の失速で地価下落がさらに拍車がかる懸念が深まっただけによけいにその登場が期待されている。
昨年11月30日法改正による投信法の整備、東証による「不動産投資信託証券に関する有価証券上場規定の特例」の3月1日施行、3月16日投資信託協会がJ-REITの自主規制ルールを理事会で承認するなどJ-REITを巡る市場開設環境は整った。しかし現時点でメインプレイヤーたる不動産大手各社のJ-REITに対する温度差が明確になっている。三菱地所、三井不動産の各社は、積極的な反面、森トラスト、東急不動産、野村不動産はクールな様子見で市場立ち上がり当初には参入を控えるようだ。J-REITは、三菱地所が1,000億円で第一号上場、三井不動産がやや遅れて市場参入するシナリオが日経新聞報道などで明らかになっているのだが不動産市場は、イマイチ盛り上がらない。J-REITに当初のような成長のシナリオが描ける環境ではいまのところないからだ。
J-REITの課題として各投資ファンドによる優良オフィスビルの取得競争で取得価額の高騰を招き利回りの低下が懸念されている。さらに2001年にはいって外資系企業、NTT系列を中心とする国内IT関連企業のオフィス需要に一服感が見られ、さらに2003年の都心部オフィスビルの大量供給などで先行きの賃料動向に不透明感がでてきた。不動産市場の長期低迷も投資ファンドのキャピタルゲインに陰を落としている。地価の二極分化で都心部の地価が底打ちをしたという見方がある反面、金融機関の不良債権問題など構造改革がハードランニングした場合、国内景気と連動し土地価格全体がさらに下落する可能性がある。
J-REITに当初から指摘されていた金利上昇時の商品魅力劣化のリスクや、投資家が安心して投資できる賃料詳細情報などの情報開示は依然不透明であり、REITへ譲渡した場合の収益について課税繰り延べができず、譲渡時の登録税も免税されないなど米国のREITのような不動産保有者に対する税制のサポートもない。
各投資ファンドは、当初は、リスクの高い不動産開発物件は取り扱い外として東京都心部のオフィスビル、地方中核都市のオフィスビルを中心に組成し、賃料収益の安定した物件に絞ってポートフォリオを組むため成長性は期待できない反面、株価のキャピタルゲインの変動は比較的少ないと思われる。しかし不動産市場がより不透明化する現状にあって中途半端な枠組みでスタートしたという感があるのは否めず、J-REITの銘柄数も少ないため、当初はプロの機関投資家の買いがはいるだろうが一般投資家に幅広く利用される市場の醸成には、ある程度の時間がかかるのではないだろうか…
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