先端技術と不動産鑑定評価

21世紀を迎えた今、人は100年単位でモノを考える時間を持つ。日頃は目先の仕事や生活に追われ短視眼的生活を余儀なくされているが、21世紀初めての正月、特別な感慨を抱くのは作者だけでないだろう。作者の経済的残存耐用年数からみて20~30年先位を想像するのが現実的であるが、正直な話、自分の仕事に限定しても10年先を読むのは難しい。

このコラムで「不動産鑑定は足でする」とコンピュータ技術で置換されない不動産鑑定評価の原点を発信した。人間の脳は対象不動産を視覚、聴覚、嗅覚、触覚などで直感処理し、その後、補助的情報で正確に把握する。この情報処理メカニズムには、現在の人工知能、認知工学その他の先端的コンピュータ技術を駆使しても敵わない。例えば人間の場合、視覚で2階建木造住宅と難なく脳に情報伝達できるがコンピュータが対象を2階建木造住宅と認識するには膨大なデータベースがあって始めて可能となるからだ。

21世紀、人間の聖域ともいうべき脳の情報処理メカニズムは人工知能の研究で相当部分解明される。不動産鑑定評価で近未来に登場するのは、人工知能的GIS(地理情報システム)と予測される。現在のGISによる地図上での単なるデータ処理から進化して時間と立体空間次元が付加された4次元GISによりVR(バーチャルリアリテイ)で価格形成要因の将来予測があるレベルまで可能となるだろう。コア部分の開発技術者と提携したインテグレーターとして鑑定士は機能する資質が要求されるだろう。

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